結論:東京のランサムウェア被害は過去最多——全国では1万5千件超のサイバー犯罪を検挙

2026年4月9日、警察庁は2025年のサイバー犯罪に関する統計を公表した。都内のランサムウェア被害は68件で過去最多を記録。全国のサイバー犯罪検挙件数は15,108件に達した。

数字だけ見れば「大企業の話」に思えるかもしれない。しかし、被害企業の内訳を見れば、半数以上が中小企業だ。「うちは小さいから狙われない」は、もう通用しない。


警察庁発表データの全体像

都内のランサムウェア被害推移

都内被害件数前年比
2022年37件
2023年45件+21.6%
2024年54件+20.0%
2025年68件+25.9%
3年連続で20%以上の増加が続いている。歯止めがかかる兆候はない。

全国のサイバー犯罪検挙件数

項目2025年
サイバー犯罪検挙総数15,108件
うちランサムウェア関連230件超(前年比+30%)
不正アクセス禁止法違反3,200件超
フィッシング関連5,000件超

被害の内訳——誰が、どこから、どうやって攻撃されているのか

業種別被害

業種構成比
製造業約28%
卸売・小売業約18%
サービス業約15%
建設・不動産業約12%
医療・福祉約10%
その他約17%
製造業が最多だが、特定業種に偏っているわけではない。業種を問わずランサムウェアの標的になることがデータから明らかだ。

企業規模別被害

企業規模構成比
大企業(従業員300人以上)約34%
中小企業(従業員300人未満)約54%
団体・その他約12%
被害の過半数を中小企業が占める。大企業よりもセキュリティ対策が手薄なため、攻撃者にとっては「侵入コストの低い標的」だ。

感染経路別

感染経路構成比
VPN機器の脆弱性約63%
リモートデスクトップ(RDP)約18%
フィッシングメール約12%
その他(USBメモリ等)約7%
6割以上がVPN機器の脆弱性を突いた攻撃だ。つまり、VPN機器のファームウェアを最新に保つだけで、最大のリスク要因を潰せる。

身代金支払い額の推移——支払いは解決策ではない

平均要求額(推定)支払い率
2023年約2,000万円約20%
2024年約3,500万円約15%
2025年約5,000万円約12%
要求額は年々上昇する一方、支払い率は低下傾向にある。これは企業側の意識向上もあるが、支払っても復旧できるとは限らないことが広く認知されてきたためだ。警察庁も身代金の支払いを明確に非推奨としている。

「68件」の中に自社が入らないために、今できることがあります

ランサムウェア対策は、VPN機器の更新とバックアップの確認から。何から手をつけるべきか、優先順位を一緒に整理します。

無料セキュリティ相談を予約する

※ 営業電話はしません | オンライン対応可 | 相談だけでもOK


なぜ中小企業が狙われるのか——3つの構造的要因

要因1:セキュリティ投資の絶対的な不足

IPAの調査によれば、中小企業の約4割が「セキュリティ対策に予算を割いていない」と回答している。UTM(統合脅威管理)やEDRの導入はおろか、ウイルス対策ソフトの更新すら滞っている企業がある。

要因2:VPN機器のファームウェアが更新されていない

ランサムウェアの最大の侵入経路であるVPN機器。中小企業では「購入時のまま」で運用しているケースが多い。FortiGate、Pulse Secure(現Ivanti)、SonicWallなど、既知の脆弱性を放置したままの機器がインターネットに接続されている。

要因3:バックアップがオンラインのまま

バックアップを取っていても、ネットワーク上の共有フォルダに保管していれば、ランサムウェアに一緒に暗号化される。オフラインバックアップ(物理的にネットワークから切り離した保管)を実施していない中小企業が大多数だ。


今日からできる7つの対策

対策1:VPN機器のファームウェアを今すぐ更新する

最も即効性が高い対策だ。自社のVPN機器のメーカー・型番を確認し、メーカーサイトで最新ファームウェアを確認・適用する。FortiGate、Ivanti Connect Secure、SonicWallは特に注意が必要だ。

対策2:バックアップの「3-2-1ルール」を実践する

  • 3つのコピーを保持
  • 2種類の異なるメディアに保管
  • 1つはオフサイト(またはオフライン)で保管

最低でも、週1回のオフラインバックアップを実施してほしい。

対策3:RDP(リモートデスクトップ)を制限する

RDPをインターネットに公開している場合は即座に閉じる。どうしてもリモートアクセスが必要な場合は、VPN経由でのみアクセスを許可し、多要素認証を必須にする。

対策4:EDRを全端末に導入する

従来のウイルス対策ソフト(EPP)だけでは不十分だ。EDR(Endpoint Detection and Response)は、ランサムウェアの暗号化行動を検知して自動的にプロセスを停止できる。中小企業向けのマネージドEDRサービスは月額500〜1,500円/端末から利用可能だ。

対策5:多要素認証(MFA)をすべてのリモートアクセスに導入する

VPN、メール、クラウドサービスへのログインに多要素認証を必須にする。パスワードだけの認証は、もはやセキュリティ対策として不十分だ。

対策6:従業員へのセキュリティ教育を定期実施する

フィッシングメールの見分け方、不審なUSBメモリの取り扱い、インシデント発生時の連絡先。最低でも年2回の研修と、四半期に1回のフィッシング訓練を実施する。

対策7:インシデント対応計画を策定する

「ランサムウェアに感染した」と分かった瞬間に何をすべきか。ネットワーク遮断の手順、関係者への連絡順、警察への届出、個人情報保護委員会への報告——事前に手順書を用意し、年1回は訓練を行う。


警察への被害届の出し方

ランサムウェア被害に遭った場合、以下の手順で速やかに届出を行う。

  1. 最寄りの警察署のサイバー犯罪相談窓口に連絡(#9110 でも可)
  2. 都道府県警のサイバー犯罪対策課に被害届を提出
  3. 必要に応じて警察庁サイバー特別捜査部に情報提供
  4. 並行して個人情報保護委員会への報告(個人情報漏洩が確認された場合は義務)

重要: 被害状況を示す証拠(ログ、スクリーンショット、身代金要求文)は上書き・削除しないこと。フォレンジック調査に不可欠な証拠となる。


まとめ

項目ポイント
都内ランサムウェア被害2025年に68件で過去最多
全国サイバー犯罪検挙15,108件
被害企業の過半数中小企業
最大の感染経路VPN機器の脆弱性(63%)
最優先の対策VPN更新 + オフラインバックアップ + EDR導入
数字は明確に「増加傾向」を示している。今年も68件を上回るペースで被害が発生する可能性は高い。対策を「いつかやる」から「今日やる」に変える——それだけで、自社が統計の一部になるリスクは大幅に下がる。

関連記事:ランサムウェア対策完全ガイド 関連記事:穴吹興産ランサムウェア被害の教訓 関連記事:中小企業のセキュリティコスト優先ガイド 関連記事:導入事例一覧


よくある質問(FAQ)

Q1. うちは従業員10人の小さな会社ですが、ランサムウェアの標的になりますか? A. はい。攻撃者は企業規模を選びません。むしろ、セキュリティ対策が手薄な小規模企業は「侵入しやすい標的」として狙われます。特に大企業のサプライチェーンに属している場合、大企業への足がかりとして攻撃されるケースが増えています。

Q2. セキュリティ対策にかけられる予算がほとんどありません。最低限何をすべきですか? A. 最優先は3つです。(1) VPN機器のファームウェア更新(無料)、(2) オフラインバックアップの実施(外付けHDDで可能)、(3) すべてのリモートアクセスへの多要素認証導入(Microsoft 365やGoogle Workspaceに標準搭載)。この3つだけで、主要な攻撃経路の大部分を塞ぐことができます。

Q3. サイバー保険は加入すべきですか? A. 検討する価値はあります。ランサムウェア被害の平均復旧コストは約5,000万円(フォレンジック調査、システム復旧、顧客対応等を含む)に達します。サイバー保険はこれらの費用を補填するだけでなく、インシデント対応の専門家を手配するサービスが付帯しているものもあります。年間保険料は企業規模により10万〜100万円程度です。

Q4. 被害に遭ったことを公表する義務はありますか? A. 個人情報の漏洩が確認された場合、個人情報保護法に基づき個人情報保護委員会への報告本人への通知が義務付けられています(2022年4月施行)。報告期限は速報が「概ね3〜5日以内」、確報が「30日以内(不正アクセスの場合は60日以内)」です。


参考情報

  • 警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年4月9日)
  • 警視庁サイバーセキュリティ対策本部「都内のサイバー犯罪発生状況」
  • IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
  • JPCERT/CC「ランサムウェア対策特設ページ」

「統計」を「自社の対策」に変える第一歩

VPN機器の脆弱性診断、バックアップ体制の見直し、EDR導入の検討——何から始めるべきか、セキュリティの専門チームが優先順位を一緒に整理します。

ランサムウェア対策の無料相談を予約する

※ 営業電話はしません | オンライン対応可 | 相談だけでもOK