「DXに取り組みたいが、何から始めればいいかわからない」「ITベンダーに相談すると売り込みが始まる」——都内中小企業の経営者なら、一度はこう感じたことがあるだろう。令和8年度(2026年度)、東京都と(公財)東京都中小企業振興公社が新規事業として立ち上げた 「DX推進トータルサポート事業」 は、まさにこの課題を解決するための制度だ。専門アドバイザーの無料派遣によるDX戦略・AI活用計画の策定支援と、デジタル技術導入に伴う機器・システム経費の助成がセットになっている。本記事では、この事業の全体像と、中小企業が最大限に活用するための実務的なポイントを解説する。


DX推進トータルサポート事業とは

事業の全体像

東京都DX推進トータルサポート事業は、都内中小企業のDX推進を「計画策定」から「導入・実装」までワンストップで支援する事業だ。従来のように補助金だけ出して終わりではなく、専門家の伴走支援と経費助成を一体化 させた点が最大の特徴である。

項目内容
実施主体東京都 +(公財)東京都中小企業振興公社
事業区分令和8年度新規事業
対象都内に主たる事業所を持つ中小企業
支援内容① アドバイザー派遣(無料) ② 機器・システム等の経費助成
目的中小企業のDX推進・デジタル技術の活用促進

2つの支援メニュー

この事業は大きく2つのフェーズで構成されている。

フェーズ1:アドバイザー派遣(無料)

  • DX戦略の策定支援
  • AI活用計画の立案
  • 現状の業務プロセス分析
  • 最適なデジタルツール・システムの選定アドバイス

フェーズ2:経費助成(デジタル技術導入)

  • フェーズ1で策定した計画に基づく機器・システムの導入経費を助成
  • ハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービス利用料などが対象

ポイント: フェーズ1の無料アドバイザー派遣を受けたうえで、フェーズ2の助成金申請に進む流れが基本となる。つまり、「計画なき導入」を防ぐ設計になっている。


なぜこの事業が注目されるのか

従来の補助金との違い

従来の中小企業向けIT補助金は、「申請→採択→導入→報告」という流れが一般的だった。しかし、この流れには根本的な問題がある。

従来の補助金DX推進トータルサポート事業
申請書は自社で作成アドバイザーが計画策定を支援
ツール選定は自己責任専門家が最適なツールを助言
導入後は自力で運用伴走型で定着までフォロー
「何を入れるか」が先「何を解決するか」が先
経営者にとっての最大のメリットは、「失敗リスクの低減」だ。 専門家が入ることで、自社に合わないツールを導入してしまうリスクが大幅に下がる。

東京都が本事業を立ち上げた背景

東京都産業労働局の調査によると、都内中小企業のDX推進における最大の障壁は「何から始めればいいかわからない」(約45%)であり、「予算がない」(約30%)を上回っている。つまり、お金の問題ではなく、知見の問題 が最大のハードルだ。

この事業は、まさにこの「知見の壁」を突破するために設計されている。無料のアドバイザー派遣で戦略を固め、そのうえで必要な投資に助成金を充てる——この順序が重要だ。


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アドバイザー派遣(フェーズ1)の詳細

支援内容

アドバイザー派遣では、DXやAI活用の専門家が企業に訪問(またはオンライン対応)し、以下の支援を行う。

  1. 現状分析 — 業務フローの可視化、ボトルネックの特定
  2. DX戦略の策定 — 自社の課題に合ったデジタル化の優先順位を整理
  3. AI活用計画の立案 — AI-OCR、チャットボット、生成AIなど、具体的なAI技術の適用領域を特定
  4. ツール・システムの選定支援 — 複数の選択肢を比較し、自社の規模・予算・業務特性に最適なものを推薦
  5. 導入ロードマップの作成 — 3か月・6か月・1年のスケジュール感を設計

費用

無料。 アドバイザーの派遣費用は東京都が全額負担する。中小企業側の負担はゼロだ。

活用のコツ

アドバイザー派遣を最大限に活かすためのポイントは3つある。

1. 事前に「困りごとリスト」を用意する

アドバイザーに「何でもいいからDXしたい」と伝えるのは効率が悪い。事前に以下のような情報を整理しておくと、初回から具体的な議論に入れる。

  • 手作業が多い業務トップ3
  • Excelで管理しているが限界を感じている業務
  • 「これ、自動化できないのか?」と感じている作業
  • 従業員からの不満が多い業務プロセス

2. 経営者自身が同席する

アドバイザーとの面談には、必ず 経営者が同席する こと。DX戦略は経営判断そのものだ。現場担当者だけに任せると、「経営者の承認が取れない」という壁に後でぶつかる。

3. フェーズ2(助成金)を見据えて相談する

アドバイザーには「助成金の申請も視野に入れている」と最初から伝える。そうすることで、助成金の対象経費に合わせた計画を策定してもらえる。


経費助成(フェーズ2)の詳細

助成対象となる経費

フェーズ1で策定したDX推進計画に基づき、以下の経費が助成対象となる。

経費区分具体例
ハードウェアタブレット端末、バーコードリーダー、IoTセンサー
ソフトウェア業務管理システム、CRM、ERPパッケージ
クラウドサービスSaaS利用料、クラウドストレージ、AI-OCRサービス
システム開発既存システムとの連携開発、API構築
導入支援ベンダーによるセットアップ、データ移行、初期設定

助成率と助成上限額

助成率や助成上限額の詳細は、令和8年度の募集要項で正式に公表される。過去の類似事業(中小企業デジタルツール導入促進助成事業など)を参考にすると、以下の水準が目安となる。

項目目安
助成率1/2〜2/3
助成上限額100万円〜300万円(事業規模による)
助成対象期間交付決定日〜最大1年間
注意: 正式な助成率・上限額は募集要項で必ず確認すること。年度や公募回によって変動する可能性がある。

申請の流れ(想定)

  1. フェーズ1完了 — アドバイザー派遣によるDX推進計画の策定
  2. 申請書類の準備 — DX推進計画書、見積書、事業計画書など
  3. 申請 — 東京都中小企業振興公社の専用ポータルから提出
  4. 審査・交付決定 — 書面審査(必要に応じてヒアリング)
  5. 導入・実施 — 交付決定後に契約・発注(事前着手は不可)
  6. 実績報告 — 導入完了後に報告書・証憑を提出
  7. 助成金支払い — 審査後、指定口座に振込

対象となる中小企業の要件

基本要件

以下のすべてを満たす中小企業が対象となる。

  • 所在地: 東京都内に主たる事業所を有すること
  • 企業規模: 中小企業基本法に定める中小企業であること
  • 業種制限: 一部の業種(風俗営業等)を除き、幅広い業種が対象
  • 税務要件: 都税の未納がないこと

中小企業の定義(参考)

業種資本金従業員数
製造業・建設業・運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
※ 資本金または従業員数のいずれかを満たせばよい。

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活用シナリオ:業種別の具体例

シナリオ1:製造業(従業員30名)

項目内容
課題紙の日報・作業指示書で生産管理。転記ミスが月10件以上
アドバイザー支援業務フロー分析 → タブレット+クラウド型生産管理システムを推奨
導入システムクラウド型生産管理SaaS(月額5万円)+タブレット10台
助成金活用初期導入費150万円のうち100万円を助成でカバー
効果転記ミスゼロ化、日報集計時間を月20時間削減

シナリオ2:卸売業(従業員15名)

項目内容
課題受発注がFAX中心。入力作業に毎日2時間
アドバイザー支援AI-OCR+受発注システム連携を提案
導入システムAI-OCRサービス+既存販売管理システムとのAPI連携
助成金活用開発・導入費200万円のうち130万円を助成でカバー
効果FAX入力工数を90%削減、受注ミスの大幅減少

シナリオ3:サービス業(従業員8名)

項目内容
課題予約管理がExcel+電話。ダブルブッキングが月2〜3件
アドバイザー支援クラウド予約管理+LINEミニアプリ連携を提案
導入システム予約管理SaaS+LINE連携+自動リマインド機能
助成金活用導入費80万円のうち50万円を助成でカバー
効果ダブルブッキングゼロ化、電話対応時間を月15時間削減

申請を成功させるための5つのポイント

1. 「目的」と「課題」を明確に書く

審査では、「なぜデジタル化が必要なのか」が最も重視される。「DXしたいから」ではなく、「月間○○時間の手作業を削減し、従業員の残業を○○%減らすため」 のように、具体的な数字で課題を記述する。

2. 導入効果を定量的に示す

「業務効率が上がる」ではなく、「月間40時間の工数削減(年間480万円相当)」 と書く。投資対効果が明確な申請書は採択率が高い。

3. フェーズ1のアドバイザー支援を最大限活用する

アドバイザーに策定してもらったDX推進計画書は、そのまま助成金申請の根拠資料になる。アドバイザーには「助成金申請に使える形で計画書をまとめてほしい」とリクエストすべきだ。

4. 見積書は複数社から取得する

助成金の審査では、経費の妥当性が確認される。1社のみの見積りでは「適正価格かどうか」を判断できない。最低2社、できれば3社 から見積りを取得する。

5. スケジュールに余裕を持つ

助成金は「交付決定後」に発注・契約する必要がある。交付決定前に契約してしまうと助成対象外 になるケースが多い。申請から交付決定まで1〜2か月かかることを想定し、逆算してスケジュールを組む。


他の支援制度との併用・比較

IT導入補助金との比較

比較項目DX推進トータルサポート事業IT導入補助金(国)
実施主体東京都+振興公社経済産業省・中企庁
対象地域都内中小企業のみ全国の中小企業
専門家支援無料アドバイザー派遣ありなし(自力で計画策定)
対象経費機器・システム全般IT導入支援事業者のツール
特徴計画策定から伴走ツール導入費用の補助が中心
併用のポイント: 東京都の事業と国の補助金は、原則として同一経費への二重適用はできない。ただし、異なる経費区分であれば併用が可能な場合がある。詳細は募集要項で確認が必要だ。

東京都の他のDX関連支援制度

東京都および振興公社は、DX推進トータルサポート事業以外にも複数の支援制度を運営している。

  • 中小企業デジタルツール導入促進助成事業 — デジタルツール導入費用の助成
  • DXリスキリング助成金 — 従業員のDX研修費用の助成
  • サイバーセキュリティ対策促進助成金 — セキュリティ機器・サービスの導入費用の助成

自社の課題に応じて、最適な制度を組み合わせる ことで、DX投資の自己負担を最小化できる。


申請スケジュールと準備の進め方

想定スケジュール(令和8年度)

時期アクション
4〜5月募集要項の公表・事業説明会
5〜6月アドバイザー派遣の申込開始
6〜9月アドバイザーによるDX推進計画策定(フェーズ1)
9〜11月経費助成の申請受付(フェーズ2)
11〜12月交付決定・導入開始
翌年3月事業完了・実績報告
※ 上記は想定スケジュールであり、正式な日程は東京都中小企業振興公社の公式サイトで確認すること。

今すぐやるべき3つの準備

1. 自社の課題を棚卸しする

「何をデジタル化したいか」ではなく、「何に困っているか」を整理する。業務の非効率、ミスの多発、属人化——これらを具体的にリストアップする。

2. 現在のIT環境を整理する

既存のシステム、ソフトウェア、利用中のクラウドサービスを一覧にする。アドバイザーとの初回面談で必要になる情報だ。

3. 予算の概算を把握する

助成金を活用するとしても、自己負担分は発生する。年間のIT投資予算の目安を経営者として把握しておく。


よくある質問(FAQ)

Q. アドバイザー派遣だけの利用は可能か? A. 可能と想定される。フェーズ1(アドバイザー派遣)のみの利用でも問題ない。計画策定の結果、「今は導入のタイミングではない」という結論になることもある。

Q. 個人事業主も対象か? A. 中小企業基本法の中小企業に該当すれば、個人事業主も対象となる可能性がある。詳細は募集要項で確認すること。

Q. 申請から助成金の支払いまで、どのくらいかかるか? A. 類似事業の実績から、申請から支払いまで6〜10か月程度を見込んでおくのが現実的だ。助成金は後払い(精算払い)のため、一時的に自社で立て替える資金が必要になる。

Q. どのようなアドバイザーが派遣されるのか? A. ITコーディネータ、中小企業診断士、DXコンサルタントなど、中小企業のデジタル化支援の実績がある専門家が想定される。

Q. 過去に他の補助金を利用していても申請できるか? A. 同一経費への二重助成は不可だが、過去に別の補助金を利用していること自体は、申請の障害にはならないと想定される。


まとめ:補助金で攻めるなら「計画」が先

東京都DX推進トータルサポート事業は、「お金がないからDXできない」という言い訳を封じる制度だ。無料のアドバイザー派遣で計画を策定し、助成金で導入費用を抑える——この二段構えが、中小企業のDX推進を現実的なものにする。

ステップやることコスト
1自社の課題を整理する無料(自社作業)
2アドバイザー派遣を申し込む無料(東京都負担)
3DX推進計画を策定する無料(アドバイザー支援)
4経費助成を申請する無料(申請費用なし)
5デジタル技術を導入する自己負担1/3〜1/2(残りは助成)
「補助金で攻める」ためには、まず「計画で守る」ことが前提だ。 計画のないDX投資は、補助金が出ても失敗する。この事業のアドバイザー派遣を活用し、しっかりとした計画を立てたうえで、助成金を使って一気に導入する——これが、2026年度に都内中小企業が取るべきDX推進の最適戦略だ。

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