SaaS市場は2026年も拡大を続けており、富士キメラ総研の調査では国内SaaS市場規模は約2兆円に達しています。「自社のノウハウをSaaSプロダクトにしたい」「業界特化型SaaSで起業したい」——しかし最大のハードルは「開発にいくらかかるのか」が見えないことです。
SaaS開発の費用は、MVP(最小実用製品)なら300万円から始められますが、本番リリースまで含めると1,000〜3,000万円が相場です。本記事では、フェーズ別のコスト・期間、技術選定の影響、資金調達とのバランスまで、SaaS開発を検討する方が知っておくべき費用のすべてを解説します。
目次
- SaaS開発のフェーズ別費用相場
- 技術スタック選定とコスト影響
- SaaSに必須の機能と開発コスト
- マルチテナンシー設計のコスト
- 資金調達と開発予算の計画
- SaaS開発会社の選び方
- よくある質問(FAQ)
1. SaaS開発のフェーズ別費用相場
SaaS開発は一度に全てを作るのではなく、段階的に投資する「フェーズ開発」が基本です。
フェーズ別の費用・期間一覧
| フェーズ | 費用相場 | 期間 | 主な成果物 |
|---|---|---|---|
| 企画・要件定義 | 50〜100万円 | 2〜4週間 | ペルソナ、ユーザーストーリー、機能一覧、ワイヤーフレーム |
| MVP開発 | 300〜800万円 | 1〜3ヶ月 | コア機能のみの動くプロダクト。10〜30社に提供しPMF検証 |
| β版開発 | 500〜1,500万円 | 2〜6ヶ月 | 課金機能・管理画面・セキュリティ対応を追加。100社規模テスト |
| 本番リリース | 1,000〜3,000万円 | 3〜9ヶ月 | スケーラブルなインフラ、本番運用体制、SLA対応 |
| 運用・改善 | 月額50〜200万円 | 継続 | バグ修正、機能追加、カスタマーサクセス対応 |
費用の内訳構成(本番リリースまでの総額)
| 費用項目 | 構成比 | 1,500万円の場合 |
|---|---|---|
| 要件定義・UI/UXデザイン | 10〜15% | 150〜225万円 |
| フロントエンド開発 | 20〜25% | 300〜375万円 |
| バックエンド・API開発 | 25〜35% | 375〜525万円 |
| インフラ構築 | 10〜15% | 150〜225万円 |
| テスト・QA | 10〜15% | 150〜225万円 |
| PM・ディレクション | 5〜10% | 75〜150万円 |
セクションまとめ:SaaS開発は「MVP300万円→β版500万円→本番1,000万円」が最もリスクの低い投資パターンです。MVPでPMF(Product-Market Fit)を検証してから本格投資に進みましょう。
SaaS開発の費用感を確認したい方へ
GXO株式会社は、SaaSのMVP開発(300万円〜)から本番環境構築まで一貫対応。「アイデアはあるが技術的に実現可能か分からない」という段階からのご相談も歓迎です。
2. 技術スタック選定とコスト影響
技術スタックの選択は、初期開発費用だけでなく、長期的な保守コストやエンジニア採用のしやすさにも影響します。
主要スタック別の費用比較
| スタック構成 | 初期開発費用 | エンジニア単価(月額) | 採用のしやすさ | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| Next.js + Node.js + PostgreSQL | 標準 | 70〜110万円 | 高 | 一般的なBtoB SaaS |
| React + Laravel + MySQL | 標準 | 65〜100万円 | 高 | 管理画面中心のSaaS |
| Vue.js + Rails + PostgreSQL | 標準 | 65〜100万円 | 中 | スタートアップ向け |
| React + Django + PostgreSQL | やや高 | 70〜110万円 | 中 | AI/データ系SaaS |
| React Native + Firebase | やや低 | 60〜90万円 | 高 | モバイルファーストSaaS |
クラウドインフラの月額費用目安
| 規模 | AWS | GCP | Azure |
|---|---|---|---|
| MVP(〜100ユーザー) | 1〜3万円 | 1〜3万円 | 1〜3万円 |
| β版(〜1,000ユーザー) | 3〜10万円 | 3〜8万円 | 3〜10万円 |
| 本番(〜10,000ユーザー) | 10〜30万円 | 8〜25万円 | 10〜30万円 |
| スケール(10,000+) | 30〜100万円+ | 25〜80万円+ | 30〜100万円+ |
技術選定でよくある失敗
- 最新技術に飛びつく:エンジニア採用が困難になり、保守コストが増大
- スケールを想定しない設計:ユーザー増加時にアーキテクチャ全体の作り直しが必要に
- フロント・バックの技術が乖離:コミュニケーションコストが増加
SaaSかスクラッチかの判断基準についてはSaaS vs スクラッチ開発の判断フレームワークも参考になります。
セクションまとめ:技術スタック選定は「エンジニアの採用しやすさ」と「長期的な保守コスト」を最優先で考えましょう。最新・最先端よりも、実績があり人材が豊富な技術を選ぶのが賢明です。
3. SaaSに必須の機能と開発コスト
どんなSaaSプロダクトにも共通して必要な「SaaS基盤機能」があります。これを最初から設計に組み込むことが重要です。
SaaS基盤機能の費用一覧
| 機能 | 費用目安 | 優先度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 認証・認可 | 30〜80万円 | 必須 | SSO/SAML対応はエンタープライズ向け |
| 課金・サブスクリプション管理 | 50〜150万円 | 必須 | Stripe連携が最もコスパ良好 |
| マルチテナント基盤 | 50〜200万円 | 必須 | アーキテクチャ設計が鍵 |
| ダッシュボード | 30〜100万円 | 必須 | 利用状況の可視化 |
| API(外部連携用) | 50〜150万円 | 高 | REST/GraphQL設計 |
| 管理者画面 | 50〜150万円 | 必須 | テナント管理・ユーザー管理 |
| 通知基盤 | 20〜60万円 | 高 | メール/Slack/Webhook |
| 監査ログ | 20〜50万円 | 中 | エンタープライズ要件で必須に |
| ヘルプ・オンボーディング | 20〜50万円 | 中 | ツアー/ガイド/FAQ |
MVP段階で入れるべき機能 vs 後回しにすべき機能
MVPに必須
- ユーザー認証(メール/パスワード)
- コア機能(プロダクトの価値を証明する最小限の機能)
- 基本的な課金機能(フリープラン+有料プラン1つ)
β版で追加
- SSO/SAML認証
- 料金プランの複数化
- API公開
- 高度な管理画面
本番で対応
- 監査ログ
- カスタムレポート
- SLA保証のためのインフラ冗長化
セクションまとめ:SaaS基盤機能だけで200〜500万円のコストが発生します。これを「プロダクト固有機能の費用」と分けて見積もることで、正確な総額が把握できます。
4. マルチテナンシー設計のコスト
SaaSにおいて「マルチテナンシー」(1つのシステムで複数企業にサービス提供する仕組み)の設計は、コスト・スケーラビリティ・セキュリティに直結する重要な意思決定です。
アーキテクチャ3パターンの比較
| パターン | 概要 | 初期コスト | 運用コスト | セキュリティ | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|
| 共有DB・共有スキーマ | 全テナントが同じテーブルを共有 | 低(50〜100万円) | 低 | 中 | スタートアップ・コスト重視 |
| 共有DB・個別スキーマ | DB共有だがスキーマはテナント別 | 中(100〜150万円) | 中 | 高 | BtoB SaaS標準 |
| 個別DB | テナントごとにDBを分離 | 高(150〜200万円) | 高 | 最高 | 金融・医療・大企業向け |
選定の判断基準
- テナント数が多い(1,000社+):共有DB・共有スキーマ
- データ量が多い(テナントあたりGB単位):共有DB・個別スキーマ
- 規制産業(金融・医療):個別DB
- 初期段階:共有DB・共有スキーマで始め、成長後に移行
セクションまとめ:マルチテナンシー設計は「最初に決めると後から変更が困難」なため、3年後のテナント数・データ量を見据えて選定しましょう。迷ったら「共有DB・個別スキーマ」が最もバランスが良いパターンです。
5. 資金調達と開発予算の計画
SaaS開発の費用をどのように調達し、どう配分するかは事業の成否に直結します。
資金調達ステージと開発予算
| ステージ | 調達額の目安 | 開発に配分できる額 | 作るべきもの |
|---|---|---|---|
| 自己資金・プレシード | 500〜1,000万円 | 300〜600万円 | MVP(コア機能のみ) |
| シード | 3,000〜8,000万円 | 1,000〜3,000万円 | β版〜本番リリース |
| シリーズA | 1〜5億円 | 3,000万〜1.5億円 | 機能拡充・チーム拡大 |
予算配分の目安(シード期)
| 項目 | 配分比 | 5,000万円調達の場合 |
|---|---|---|
| プロダクト開発 | 40〜50% | 2,000〜2,500万円 |
| 人件費(ビジネスサイド) | 20〜25% | 1,000〜1,250万円 |
| マーケティング・営業 | 15〜20% | 750〜1,000万円 |
| オフィス・管理費 | 5〜10% | 250〜500万円 |
| バッファ | 5〜10% | 250〜500万円 |
自社開発 vs 外注の使い分け
| 項目 | 自社チーム | 外注(開発会社) |
|---|---|---|
| 初期コスト | 高(採用+人件費) | 中(開発費用のみ) |
| スピード | 立ち上げに時間がかかる | 即座にチーム体制を構築可能 |
| ノウハウ蓄積 | 自社に残る | 外注先に依存 |
| 柔軟性 | 高 | 契約に縛られる |
| 推奨パターン | シリーズA以降 | MVP〜β版 |
セクションまとめ:調達額の40〜50%を開発に配分し、残りを12ヶ月以上のランウェイ(事業継続資金)として確保するのが鉄則です。MVPの段階では外注、PMF後に自社チーム構築がコスト効率の高い戦略です。
SaaS開発の予算計画にお悩みの方へ
GXO株式会社は、SaaSのMVP開発から本番リリース、運用保守まで一貫対応。技術スタック選定や予算計画のアドバイスも含めて、スタートアップから社内新規事業まで幅広くSaaS開発を支援します。
6. SaaS開発会社の選び方
選定基準1:SaaS開発の実績
過去にリリースしたSaaSプロダクトの実績があるか、マルチテナンシー設計や課金基盤の構築経験があるかを確認しましょう。
選定基準2:MVP開発のスピード
SaaS開発では「速くMVPを出して検証する」ことが最重要です。2〜3ヶ月でMVPをリリースできる体制があるかを確認してください。
選定基準3:スケーラブルな設計力
ユーザー数の増加に耐えるアーキテクチャ設計ができるか。初期段階からスケーラビリティを考慮した設計ができる会社を選びましょう。
選定基準4:リリース後の伴走体制
SaaSはリリース後の改善が事業成功の鍵です。開発して終わりではなく、データに基づく改善提案や機能追加に継続対応できる会社が理想です。
選定基準5:見積もりの段階的提示
一括見積もりではなく、MVP→β版→本番の段階的な見積もりを提示できるか。フェーズごとの投資判断が可能な提案をする会社を選びましょう。見積もりの読み方はシステム開発見積もり内訳ガイドも参考になります。
セクションまとめ:SaaS開発会社選定では「SaaS実績」「MVPスピード」「スケーラブル設計」「伴走体制」「段階的見積もり」の5点を重視しましょう。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS開発にどの程度の期間がかかりますか?
MVPなら1〜3ヶ月、β版まで3〜6ヶ月、本番リリースまで6〜12ヶ月が一般的です。ただし、要件の複雑さやチーム体制によって大きく変動します。
Q2. ノーコードツールでSaaSは作れますか?
BubbleなどのノーコードツールでプロトタイプやMVPレベルは構築可能です。ただし、本番運用に耐えるスケーラビリティやセキュリティを確保するには限界があります。ノーコードプラットフォームの比較はノーコード開発プラットフォーム比較をご覧ください。
Q3. 1人でSaaS開発は可能ですか?
技術力があれば可能ですが、MVP開発に6〜12ヶ月かかるのが一般的です。スピードを重視するなら、開発会社と協力してMVPを2〜3ヶ月でリリースし、PMF検証後に自社チームを構築する方が効率的です。
Q4. SaaS開発に補助金は使えますか?
IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠や、事業再構築補助金の対象になる可能性があります。補助率は1/2〜2/3で、最大数百万円の補助を受けられるケースもあります。詳細は補助金完全ガイドをご確認ください。
Q5. 既存の業務システムをSaaS化するにはいくらかかりますか?
既存システムの規模によりますが、中規模の業務システムをSaaS化する場合、マルチテナント対応・課金機能追加・セキュリティ強化を含めて500〜2,000万円が目安です。Webシステム開発の費用内訳はWebシステム開発費用の完全内訳で詳しく解説しています。
Q6. SaaS開発でAIを組み込む場合、追加でどのくらいかかりますか?
AI機能の複雑さによりますが、LLM API連携(チャット機能等)で50〜200万円、独自モデルの構築を含む場合は300〜1,000万円が追加で必要です。AI開発の費用についてはAIエージェント開発の費用相場も参照してください。
SaaS開発の無料相談・見積もりはこちら
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