総務省の「通信利用動向調査」によると、クラウドサービスを利用する企業の割合は2025年時点で約77%に達しています。一方で、オンプレミス環境を完全にクラウドへ移行できている企業はまだ少数派です。「クラウドに移行すべきかどうか判断がつかない」「費用がどのくらいかかるかわからない」という方のために、本記事ではクラウド移行の判断基準から費用、具体的な進め方までを解説します。


クラウド移行の判断基準|移行すべきケースとしない方が良いケース

クラウド移行が有効なケース

ケース理由
サーバーのハードウェア更新時期が近い新しいハードを購入するより、クラウドの方がTCO(総保有コスト)が安い場合が多い
トラフィックに季節変動があるクラウドなら需要に応じてリソースを柔軟にスケール可能
BCP(事業継続計画)を強化したいクラウドはマルチリージョン対応で災害対策が容易
リモートワークを推進したいクラウド上のシステムはどこからでもアクセス可能
IT人材が不足しているインフラ管理の負担をクラウドベンダーに委託できる
保守ベンダーの対応に不満があるクラウド移行を機にベンダーを変更できる

クラウド移行を慎重に検討すべきケース

ケース理由
超低レイテンシが要求される物理的な近接性が必要な場合はオンプレミスが有利
厳格なデータ保管要件がある業界によってはデータの所在地に制約がある
カスタムハードウェアを使用している特殊なハードウェアはクラウドで再現できない
現行システムが非常に安定している「動いているものに触るな」の原則
月間コストが大幅に増加する常時高負荷のシステムはオンプレミスの方が安い場合がある

クラウド移行の費用相場

移行規模別の費用目安

規模サーバー台数移行費用期間
小規模1〜5台100万〜300万円1〜3ヶ月
中規模5〜20台300万〜1,000万円3〜6ヶ月
大規模20〜100台1,000万〜5,000万円6〜12ヶ月
超大規模100台以上5,000万円〜12ヶ月以上
出典:各クラウドベンダーの移行支援事例を基にGXO作成

費用の内訳

費目費用割合内容
アセスメント・設計15〜20%現環境調査、移行計画策定
環境構築20〜30%クラウド環境のセットアップ
データ移行15〜25%データの移行作業、検証
アプリケーション改修10〜20%クラウド対応のための改修
テスト10〜15%動作確認、性能テスト
切り替え・運用移行5〜10%本番切り替え、運用引き継ぎ

オンプレミスとクラウドのTCO比較(5年間)

項目オンプレミスクラウド
サーバー購入費500万〜1,000万円0円
データセンター費用(5年)300万〜600万円0円
月額利用料(5年)0円600万〜1,800万円
保守費用(5年)300万〜600万円含む(マネージドサービス)
人件費(運用担当)600万〜1,200万円200万〜600万円
5年間のTCO1,700万〜3,400万円800万〜2,400万円
注:試算はサーバー5台規模の一般的なケース。実際の費用は利用状況により大きく異なります。

クラウド移行の費用比較についてさらに詳しくは、クラウド移行の費用・オンプレミス比較ガイドをご覧ください。


クラウド移行の4つのパターン(6R)

AWSが提唱する「6R」のうち、中小企業に関連する4つの移行パターンを解説します。

移行パターンの比較

パターン概要費用リスク効果
Rehost(リホスト)そのままクラウドに移す
Replatform(リプラットフォーム)一部をクラウドネイティブに変更中〜高
Refactor(リファクター)クラウド最適化のために再設計
Retire(リタイア)不要なシステムを廃止高(コスト削減)

パターン別の詳細

Rehost(リフト&シフト): 現行システムをほぼそのままクラウドのIaaS上に移行。最もシンプルで低リスクだが、クラウドのメリットを最大限活かせない。

Replatform: データベースをRDSに変更する、ストレージをS3に変更するなど、部分的にクラウドネイティブなサービスを活用。バランスの良い選択肢。

Refactor: アプリケーションをコンテナ化やサーバーレス化し、クラウドに最適化。コストと効果が最大化するが、開発工数も大きい。

Retire: 移行を機に、使われていない・重複しているシステムを廃止。意外と大きなコスト削減効果がある。


主要クラウドサービスの比較

AWS・Azure・GCPの比較

項目AWSAzureGCP
国内シェア約45%約25%約15%
サービス数200以上200以上100以上
東京リージョンありありあり
大阪リージョンありありあり
無料枠12ヶ月12ヶ月Always Free
日本語サポート充実充実やや少ない
強み圧倒的なサービス数とエコシステムMicrosoft製品との統合データ分析・AI/ML
出典:各クラウドベンダーの公開情報を基にGXO作成

選定のポイント

  • Microsoft製品を多用している:Azure
  • 最も幅広い選択肢が欲しい:AWS
  • データ分析・AI活用が主目的:GCP
  • マルチクラウドを検討している:組み合わせ

クラウド移行の進め方|6ステップ

ステップ1:アセスメント(現環境調査)

現行のサーバー構成、使用リソース、パフォーマンス要件を調査し、移行の範囲と方針を決定します。

ステップ2:移行計画の策定

移行パターン、スケジュール、担当者、リスク対策を含む計画書を作成します。

ステップ3:PoC(概念実証)

小規模なシステムで先行移行を行い、パフォーマンスやコストを検証します。

ステップ4:環境構築とデータ移行

クラウド環境を構築し、データを移行します。テスト環境での十分な検証が不可欠です。

ステップ5:テストと最適化

移行後のシステムで動作テスト、性能テスト、セキュリティテストを実施します。

ステップ6:本番切り替え

十分なテストを経た後、計画に基づいて本番環境を切り替えます。ロールバック計画も必ず準備しておきます。


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GXO実務追記: レガシー刷新で発注前に確認すべきこと

この記事のテーマは、単なるトレンド紹介ではなく、現行調査、刷新範囲、段階移行、ROI、ベンダー切替リスクを決めるための検討材料です。検索で情報収集している段階でも、発注前に次の観点を整理しておくと、見積もりのブレ、手戻り、ベンダー依存を減らせます。

まず決めるべき3つの論点

論点確認する内容未整理のまま進めた場合のリスク
目的売上拡大、工数削減、リスク低減、顧客体験改善のどれを優先するか成果指標が曖昧になり、PoCや開発が終わっても投資判断できない
範囲対象部署、対象業務、対象データ、対象システムをどこまで含めるか見積もりが膨らむ、または重要な連携が後から漏れる
体制自社責任者、現場担当、ベンダー、保守運用者をどう置くか要件確認が遅れ、納期遅延や品質低下につながる

費用・期間・体制の目安

フェーズ期間目安主な成果物GXOが見るポイント
事前診断1〜2週間課題整理、現行確認、投資判断メモ目的と範囲が商談前に整理されているか
要件定義 / 設計3〜6週間要件一覧、RFP、概算見積、ロードマップ見積比較できる粒度になっているか
PoC / MVP1〜3ヶ月検証環境、効果測定、リスク評価本番化判断に必要な数値が取れるか
本番導入3〜6ヶ月本番環境、運用設計、教育、改善計画導入後の運用責任と改善サイクルがあるか

発注前チェックリスト

  • [ ] 現行システムの機能、利用部署、データ、外部連携を一覧化したか
  • [ ] 保守切れ、属人化、障害頻度、セキュリティリスクを金額換算したか
  • [ ] 全面刷新、段階移行、SaaS置換、リホストの比較表を作ったか
  • [ ] 移行中に止められない業務と、止めてもよい業務を分けたか
  • [ ] 既存ベンダー依存から抜けるためのドキュメント/コード引継ぎ条件を決めたか
  • [ ] 稟議で説明する投資回収、リスク低減、保守費削減の根拠を整理したか

参考にすべき一次情報・公的情報

上記の一次情報は、社内稟議やベンダー比較の根拠として使えます。一方で、公開情報だけでは自社の現行システム、業務フロー、データ状態、予算制約までは判断できません。記事で一般論を把握した後は、自社条件に落とした診断が必要です。

GXOに相談するタイミング

次のいずれかに当てはまる場合は、記事を読み進めるだけでなく、早めに相談した方が安全です。

  • 見積もり依頼前に、要件やRFPの粒度を整えたい
  • 既存ベンダーの提案が妥当か第三者視点で確認したい
  • 補助金、AI、セキュリティ、レガシー刷新が絡み、判断軸が複雑になっている
  • 社内稟議で費用対効果、リスク、ロードマップを説明する必要がある
  • PoCや診断で終わらせず、本番導入と運用改善まで進めたい

オンプレミスからクラウドへの移行相談ガイド|判断基準・費用・進め方を自社条件で診断したい方へ

GXOが、現状整理、RFP/要件定義、費用対効果、ベンダー比較、導入ロードマップまで実務目線で確認します。記事の一般論を、自社の投資判断に使える形へ落とし込みます。

レガシー刷新ROI診断を相談する

※ 初回相談では営業資料の説明よりも、現状・課題・判断材料の整理を優先します。