「うちにはIT担当がいないから、システムのことは詳しい社員に頼んでいる」――この状態が、実は最もリスクの高いIT運用だ。

IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査報告書」によると、従業員50人以下の企業の約45%が「IT専任担当者がいない」と回答し、そのうちの約7割が「社長または総務・経理担当がITも兼務している」状態にある(IPA、2025年3月)。一方、総務省「令和6年版 情報通信白書」では、サイバー攻撃の被害を受けた中小企業の約6割が「IT担当不在で初動対応が遅れた」と報告している(総務省、2024年7月)。

IT担当がいないこと自体は恥ずかしいことではない。日本の中小企業421万社のうち、専任IT担当を置けるのはごく一部だ。問題は「IT担当がいない」ことではなく、「IT担当がいない状態のまま、何も外注していない」ことにある。

本記事では、IT担当不在の中小企業が「何を」「どこに」「いくらで」外注すべきかを、優先順位をつけて解説する。


IT担当不在の企業が抱える5つのリスク

まず、IT担当がいないことで具体的にどんなリスクが発生しているかを整理する。「うちはまだ大丈夫」と感じている経営者ほど、以下のリスクを認識していないケースが多い。

リスク1:セキュリティ対策の放置

Windows Updateやソフトウェアのセキュリティパッチが未適用のまま放置されていないだろうか。IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025(組織編)」では、パッチ未適用の脆弱性を突くランサムウェア攻撃が9年連続で1位にランクインしている(IPA、2025年1月)。攻撃者は脆弱性情報の公開から24時間以内にエクスプロイトを作成するケースもあり、「月末にまとめてアップデート」では間に合わない。

リスク2:データバックアップの不備

「バックアップは外付けHDDに取っている」という企業は多いが、そのHDDが社内ネットワークに常時接続されていれば、ランサムウェアに感染した際にバックアップも暗号化される。JNSA「インシデント損害額調査レポート 第2版」では、バックアップからの復旧に失敗した企業の平均被害額は約1億2,000万円に達している(JNSA、2024年2月)。

リスク3:退職・異動時のアカウント管理漏れ

退職者のメールアカウントやクラウドサービスのアカウントが削除されず残っている企業は少なくない。これは不正アクセスの温床になるだけでなく、個人情報保護法上の管理義務違反にもなりうる。

リスク4:システム障害時の対応遅延

複合機が印刷できない、メールが送れない、VPNがつながらない――これらのトラブルが発生したとき、IT担当がいなければ復旧までの時間が大幅に長くなる。業務が止まっている間のコスト(機会損失)は、外注費用よりもはるかに高い。

リスク5:DX推進の機会損失

デジタル化・AI導入補助金2026などの公的支援を活用してシステムを刷新したくても、ITの知見がなければ「何を相談すればいいかすらわからない」状態に陥る。経済産業省「DXレポート2.2」では、DX未着手企業の約7割が「推進する人材がいない」を理由に挙げている(経済産業省、2024年7月)。


外注すべきIT業務の優先順位

「全部外注する予算はない」のが中小企業の現実だ。限られた予算で最大の効果を出すために、優先順位をつけて段階的に外注していく方法を提案する。

優先度別・外注すべき業務リスト

優先度業務カテゴリ具体的な業務内容放置リスク
最優先セキュリティ対策ファイアウォール管理、パッチ適用、EDR運用、ログ監視ランサムウェア被害、情報漏洩、法的責任
最優先データバックアップクラウドバックアップ設定、定期リストアテスト全データ消失、事業継続不可
ヘルプデスクPC・ネットワーク・SaaSの問い合わせ対応業務停止、社員の生産性低下
アカウント管理入退社時のアカウント作成・削除、権限管理不正アクセス、情報漏洩
ネットワーク管理Wi-Fi・VPN・ルーターの設定・障害対応通信障害、リモートワーク不可
サーバー・クラウド管理クラウドサービスの設定・監視・コスト最適化サービス停止、過剰課金
IT戦略・企画システム導入検討、ベンダー選定支援、DX推進計画競合との差拡大、補助金活用機会の逸失

まず何から始めるか

答えは明確だ。セキュリティ対策とバックアップの2つを最優先で外注する。この2つが整っていれば、最悪の事態(ランサムウェア被害、データ消失)を回避できる。それ以外の業務は、予算とリスクのバランスを見ながら段階的に追加していけばよい。

情シス1人体制からの外注判断については、情シス1人体制の限界サイン|外注すべき業務と費用の判断基準でさらに詳しく解説している。


IT外注の費用相場

外注サービスタイプ別の費用

サービスタイプ月額費用目安含まれる業務範囲向いている企業
IT保守サポート(月額定額型)5万〜15万円ヘルプデスク、障害対応、月次レポート従業員10〜30名、IT機器少なめ
情シス代行(フル外注型)15万〜40万円セキュリティ管理、アカウント管理、ヘルプデスク、IT戦略支援従業員30〜100名、IT担当ゼロ
セキュリティ運用(MSS)10万〜30万円EDR/UTM運用監視、インシデント対応、脆弱性管理セキュリティだけ強化したい企業
スポット対応(時間単価型)1万〜3万円/時必要なときだけ依頼(障害対応、設定変更等)月々の固定費を抑えたい企業
vCISO(仮想情報セキュリティ責任者)20万〜50万円セキュリティ戦略策定、規程整備、監査対応取引先からセキュリティ体制を求められている企業

費用対効果の考え方

「月額15万円は高い」と感じるかもしれない。しかし、正社員のIT担当者を採用すれば年収400万〜600万円(月額33万〜50万円+社会保険料)がかかる。経済産業省「IT人材需給に関する調査」では、2030年にIT人材が最大約79万人不足すると推計されており、採用自体が困難な状態が続いている(経済産業省、2019年3月)。

外注のメリットは、コスト面だけではない。

  • 複数の専門家チームが対応:1人の社員より幅広い知見がある
  • 退職リスクがない:担当者が辞めても業務が止まらない
  • 最新の脅威情報を保有:セキュリティベンダーは常に最新の攻撃手法をモニタリングしている
  • スケーラブル:業務量に応じてプランを変更できる

失敗しない外注先の選び方

外注先を選ぶ5つのチェックポイント

IT外注で最も多い失敗は「安さだけで選んだ結果、対応品質が低かった」というケースだ。以下の5項目を必ず確認してほしい。

チェック1:対応範囲と対応時間

「平日9時〜17時のみ対応」なのか「24時間365日対応」なのかで、費用と安心感が大きく変わる。自社の業務時間帯をカバーしているかを必ず確認する。特にランサムウェア攻撃は深夜・休日に発生するケースが多いため、セキュリティ監視だけは24時間対応を推奨する。

チェック2:レスポンスタイム(SLA)

「障害発生時、何分以内に初動対応するか」をSLA(Service Level Agreement)として契約に明記しているかを確認する。「できるだけ早く対応します」は契約とは言えない。優良なIT外注先であれば、「緊急障害:30分以内に初動」「一般問い合わせ:4時間以内に回答」といった具体的な数字を提示する。

チェック3:担当者の固定性

毎回違う担当者が対応する外注先は、自社の環境を理解するまでに時間がかかり、対応品質が安定しない。「御社専任の担当者を配置します」と明言できる外注先を選ぶべきだ。

チェック4:セキュリティ資格・認証

外注先自体のセキュリティ体制も重要だ。ISO 27001(ISMS)認証やプライバシーマークを取得しているかを確認する。自社のIT環境を預ける以上、外注先のセキュリティレベルが低ければ本末転倒だ。

チェック5:報告・可視化の仕組み

月次レポートで「今月の対応件数」「検知した脅威」「改善提案」を報告してくれるかどうかは、外注の価値を実感できるかどうかを左右する。ブラックボックスにならない透明性のある外注先を選ぶことが、長期的な信頼関係の基盤になる。


外注成功事例:IT担当ゼロから安定運用を実現した企業

事例:製造業A社(従業員45名、東京都)

課題:社長がITも兼務していたが、ランサムウェア攻撃で工場の生産管理システムが暗号化された。バックアップは外付けHDDに取っていたが、ネットワーク接続状態だったためバックアップも暗号化されていた。復旧に2週間、被害額は約800万円。

対応:インシデント対応後、月額18万円の情シス代行サービスを導入。セキュリティ対策(EDR導入、クラウドバックアップ)、ヘルプデスク、アカウント管理を一括で外注した。

結果:導入から1年間でセキュリティインシデントはゼロ。社長がIT対応に費やしていた月40時間が解放され、営業活動に集中できるようになった。年間の外注費用216万円に対し、社長の時間価値換算で約480万円の効果を実現。

事例:会計事務所B社(従業員12名、福岡県)

課題:顧問先の税務データを扱うため高いセキュリティが求められるが、IT専任者がいない。顧問先から「セキュリティ体制を確認したい」と問われたが、回答できなかった。

対応:月額8万円のセキュリティ特化型外注を導入。UTM設置、メールセキュリティ、クラウドバックアップ、四半期ごとのセキュリティ診断を外注した。

結果:顧問先に対して「外部専門家によるセキュリティ運用体制」を説明できるようになり、信頼獲得につながった。新規顧問先の獲得にもプラスの効果があった。


まとめ

IT担当がいない中小企業にとって、IT外注は「贅沢品」ではなく「経営インフラ」だ。

  • 最優先で外注すべきはセキュリティ対策とバックアップ
  • 費用は月額5万〜40万円が相場。正社員採用の1/3〜1/2で、より幅広い専門知識を得られる
  • 外注先選びの鍵はSLA(対応時間の約束)と担当者の固定性

「IT担当を採用する余裕はないが、このままではリスクが高い」と感じているなら、まずは現状のリスク診断から始めることを推奨する。


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