デロイトトーマツ「HRテクノロジー実態調査2025」によると、国内企業の人事・給与システムのクラウド化率は2025年時点で約45%に達し、前年比8ポイント増で推移している。しかし、依然として55%の企業がオンプレミスやExcelベースの旧システムを使い続けており、法改正対応やリモートワークへの対応に課題を抱えている。

本記事では、人事・給与システムの費用をSaaS利用・クラウド移行・カスタム開発の3パターン別に整理し、主要SaaS製品の比較、レガシーシステムからの移行戦略、社保・マイナンバー対応のポイントまで解説する。


目次

  1. 導入パターン別の費用相場
  2. 主要SaaS製品の比較
  3. 機能別の開発コスト
  4. レガシーシステムからの移行戦略
  5. 法令対応・マイナンバー管理のポイント
  6. 開発会社の選び方
  7. よくある質問(FAQ)

1. 導入パターン別の費用相場

人事・給与システムの導入方法を3パターンに分けて費用を整理する。

導入パターン別比較表

導入パターン初期費用月額費用導入期間カスタマイズ性
SaaS利用0〜50万円300〜1,500円/人/月2週間〜2ヶ月低〜中
クラウド移行(既存→クラウド)100〜500万円移行先に依存2〜6ヶ月
カスタム開発(人事DB)100〜300万円3〜10万円2〜4ヶ月
カスタム開発(給与計算)200〜600万円5〜15万円3〜8ヶ月
カスタム開発(統合HRシステム)500〜2,000万円10〜40万円6〜18ヶ月最高

各パターンの詳細

SaaS利用(月額300〜1,500円/人)

SmartHR、freee人事労務、ジョブカンなどのクラウドサービスを利用するパターン。従業員50名以下の中小企業であれば、月額数万円で人事・給与・勤怠の基本機能が利用できる。初期費用はほぼ無料で、法改正への自動対応がSaaSの最大のメリットだ。

クラウド移行(100〜500万円)

オンプレミスの旧システム(給与奉行、PCA給与など)からクラウド版への移行、またはSaaSへのリプレースを行うパターン。データ移行、マスタ設定、並行運用期間が必要で、移行費用は100〜500万円が目安だ。

カスタム開発・人事DB(100〜300万円)

従業員情報の一元管理データベースをカスタム開発するパターン。組織図管理、人材配置、スキル管理、評価管理など、SaaSでは対応しきれない独自の人材マネジメント機能が必要な場合に選ばれる。

カスタム開発・給与計算(200〜600万円)

自社固有の給与体系(複雑な手当計算、業界特有の賃金テーブル、海外駐在員の給与計算など)に対応するカスタム給与計算システム。社会保険料の自動計算、年末調整、マイナンバー管理を含む。

カスタム開発・統合HRシステム(500〜2,000万円)

人事DB、給与計算、勤怠管理、評価管理、採用管理、研修管理を統合した大規模システム。従業員500名以上の中堅〜大企業で、既存の基幹システム(ERP)との連携が必要な場合に選択される。

セクションまとめ:従業員50名以下はSaaS、50〜300名はSaaS+部分カスタム、300名以上は統合HRシステムの検討が目安。クラウド移行は100〜500万円で、データ移行と並行運用期間がコストの変動要因だ。

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2. 主要SaaS製品の比較

人事・給与のSaaS市場は競争が激しく、多数の製品が存在する。主要製品を比較する。

主要SaaS比較表

製品名月額費用(目安)主な機能特徴向いている企業
SmartHR要問合せ(従業員数課金)労務手続・年末調整・人事DB・タレントマネジメント労務手続きの電子化に強み。UI/UXが秀逸従業員50〜1,000名
freee人事労務月額400円〜/人給与計算・勤怠・年末調整・マイナンバーfreee会計との連携が強み従業員10〜300名
ジョブカン月額400円〜/人勤怠・給与・労務・採用・経費機能モジュール型。必要な機能だけ選べる従業員10〜500名
KING OF TIME月額300円/人勤怠管理に特化打刻方法が豊富(ICカード、顔認証等)勤怠管理のみ必要
カオナビ要問合せタレントマネジメント・評価・配置人材データの可視化・分析に強み従業員100〜5,000名
マネーフォワード クラウド給与月額300円〜/人給与計算・年末調整・社保手続きMFクラウドシリーズとの連携従業員10〜300名

SaaS選定のポイント

既存の会計ソフトとの連携が最重要だ。freee会計を使っているならfreee人事労務、マネーフォワードならMFクラウド給与との連携がスムーズだ。会計ソフトと人事給与が別ベンダーの場合、データ連携に追加工数が発生する。

必要な機能範囲:勤怠管理だけならKING OF TIME、労務手続きの効率化ならSmartHR、給与計算中心ならfreee人事労務、タレントマネジメントならカオナビと、主たるニーズで製品が異なる。

従業員規模:10名以下であれば無料プランのあるfreee人事労務で十分。1,000名以上はSmartHRのエンタープライズプランかカスタム開発を検討する。

セクションまとめ:既存の会計ソフトとの連携、必要な機能範囲、従業員規模の3軸でSaaS製品を選定する。月額300〜1,500円/人が相場で、従業員100名なら月額3〜15万円だ。


3. 機能別の開発コスト

SaaSでは対応できない要件がある場合のカスタム開発費用を機能別に整理する。

基本機能の費用目安

機能開発費用目安工数目安概要
従業員データベース50〜150万円1.5〜4人月基本情報・組織情報・異動履歴
給与計算エンジン100〜300万円3〜8人月基本給・手当・控除・社保料計算
勤怠管理50〜150万円1.5〜4人月打刻・残業計算・有休管理
年末調整80〜200万円2〜5人月申告書作成・源泉徴収票発行
給与明細電子化20〜60万円0.5〜1.5人月Web閲覧・PDF配信

高度機能の費用目安

機能開発費用目安工数目安概要
マイナンバー管理50〜150万円1.5〜4人月暗号化保管・アクセスログ・利用制限
人事評価80〜250万円2〜6人月MBO・コンピテンシー・360度評価
タレントマネジメント100〜300万円3〜8人月スキルマップ・後継者計画・人材配置
採用管理80〜200万円2〜5人月応募管理・選考フロー・内定者管理
研修管理50〜150万円1.5〜4人月研修申込・受講履歴・eラーニング連携
ERP連携80〜300万円2〜8人月SAP、Oracle等の基幹システム連携

給与計算エンジンの詳細

給与計算はカスタム開発で最も複雑な機能だ。以下の要素が費用を左右する。

要素内容追加費用目安
複雑な手当体系役職手当・資格手当・地域手当・家族手当等10種以上30〜80万円
変形労働時間制1ヶ月単位/1年単位の変形労働時間制の計算30〜80万円
海外駐在員対応在外勤務手当・為替換算・二重課税調整50〜150万円
退職金計算ポイント制・確定給付・確定拠出の計算30〜80万円

セクションまとめ:人事DB+給与計算+勤怠の基本3機能で200〜600万円、評価・タレントマネジメントを加えると500〜1,500万円。給与計算は手当体系の複雑さと変形労働時間制の対応で費用が大きく変動する。


4. レガシーシステムからの移行戦略

オンプレミスの旧システムからクラウドへの移行は、多くの企業にとって喫緊の課題だ。

移行パターンと費用

移行パターン費用目安期間リスク
一括移行(ビッグバン)100〜300万円2〜4ヶ月高(切替時の障害リスク)
段階移行150〜500万円4〜8ヶ月中(並行運用期間の負担)
並行運用後切替200〜600万円6〜12ヶ月低(最も安全だがコスト高)

移行時の注意点

データ移行の精度:給与データは1円の誤差も許されない。過去データの移行には、既存システムのデータ構造の分析、マッピング定義、検証テストの工程が必要で、データ量に応じて30〜150万円が追加費用となる。

並行運用期間:給与計算の場合、最低2〜3ヶ月は新旧システムの並行運用を推奨する。月次の給与計算結果を突合し、新システムの計算結果に問題がないことを確認してから完全移行する。

年度の区切り:年末調整、社会保険の算定基礎届(7月)、労働保険の年度更新(6〜7月)のタイミングを避けて移行するのが鉄則。最も安全なのは4月(年度始め)での切替だ。

システム移行の進め方はシステム開発外注ガイド、費用全般は中小企業のシステム開発費用ガイドも参考にされたい。

セクションまとめ:移行は段階移行または並行運用後切替が推奨。給与データの移行精度、2〜3ヶ月の並行運用、年度の区切りへの配慮が成功の鍵だ。


5. 法令対応・マイナンバー管理のポイント

人事・給与システムは法令遵守が不可欠だ。主要な対応事項を整理する。

主要な法令対応項目

対応項目内容システムへの影響
社会保険料計算健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の料率更新年1〜2回の料率マスタ更新
所得税計算税制改正に伴う税率・控除額の変更年1回の計算ロジック更新
年末調整申告書フォーマット・控除要件の変更年1回のフォーム・計算更新
マイナンバー管理番号法に基づく安全管理措置暗号化・アクセス制御・利用記録
電子帳簿保存法給与明細・源泉徴収票の電子保存タイムスタンプ・検索機能
育児介護休業法改正育休取得状況の公表義務拡大取得率算出・レポート機能

マイナンバー管理の技術要件

マイナンバーの管理には、番号法で定められた安全管理措置への対応が必須だ。

管理措置具体的な実装内容追加費用目安
組織的安全管理取扱者の権限設定・アクセスログ10〜30万円
物理的安全管理サーバーのセキュリティ設定クラウドサービスに依存
技術的安全管理AES-256暗号化・通信のTLS化20〜50万円
人的安全管理操作ログの記録・監査証跡10〜30万円
SaaSを利用する場合、これらの安全管理措置はサービス側で対応済みだ。カスタム開発の場合は50〜150万円の追加費用を見込む必要がある。

セクションまとめ:SaaSは法改正への自動対応がメリット。カスタム開発の場合、社保料率の更新、税制改正対応、マイナンバーの安全管理措置に年間50〜100万円の保守費用が発生する。


6. 開発会社の選び方

人事・給与システムは法令知識と計算精度が求められる。選定ポイントを整理する。

評価すべき5つの基準

基準1:労務・社保の法令知識 給与計算は社会保険料・所得税・住民税の計算ロジックが複雑で、法改正への追従が必要。労務に詳しい開発会社を選ぶべきだ。

基準2:計算精度の検証体制 給与計算は1円の誤差も許されない。テスト工程でのダブルチェック体制、過去データとの突合検証の方法を確認する。

基準3:セキュリティ対策 マイナンバーを含む個人情報を扱うため、ISMS認証やPマークの取得状況、セキュリティ監査の実施状況を確認する。

基準4:法改正への追従体制 毎年の税制改正、社保料率変更に迅速に対応できる保守体制があるかを確認する。年間保守契約に法改正対応が含まれているかが重要だ。

基準5:既存システムとの連携実績 会計ソフト、銀行の振込データ(全銀フォーマット)、社労士事務所とのデータ連携実績を確認する。

開発会社の選定基準はシステム開発会社の選定基準チェックリスト、福岡の開発会社は福岡のシステム開発会社おすすめを参照されたい。

セクションまとめ:法令知識、計算精度、セキュリティ対策、法改正追従体制、連携実績の5点で評価する。人事・給与は「安く作れる会社」ではなく「正しく計算できる会社」を選ぶべきだ。

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7. よくある質問(FAQ)

Q1. 従業員30名の会社でもカスタム開発は必要ですか? 30名規模であれば、SaaS(SmartHR、freee人事労務、ジョブカン等)で十分対応可能です。月額1〜5万円でほとんどの人事・給与業務をカバーできます。カスタム開発を検討するのは、従業員300名以上か、独自の給与体系・評価制度がある場合です。

Q2. SaaSからカスタム開発に移行できますか? 可能です。SaaSのデータをCSVでエクスポートし、カスタムシステムにインポートする方法が一般的です。ただし、SaaSのデータ構造は製品によって異なるため、データマッピングと移行テストに1〜2ヶ月かかります。

Q3. 給与計算のアウトソーシング(BPO)とシステム開発、どちらが良いですか? 従業員100名以下で専任の担当者がいない場合は、社労士事務所やBPOサービスへのアウトソーシングが合理的です(月額3〜10万円)。100名以上でコスト効率を重視する場合はシステム導入を検討してください。

Q4. 既存の勤怠管理システムと連携できますか? 主要な勤怠管理SaaS(KING OF TIME、ジョブカン、Touch On Time等)とのAPI連携やCSV連携に対応可能です。連携費用は30〜100万円が目安です。

Q5. 海外拠点の従業員も管理できますか? カスタム開発であれば対応可能です。多通貨対応、各国の税制・社会保険制度への対応、為替換算が必要で、追加費用は100〜500万円が目安です。海外拠点が少ない場合は現地のSaaSを利用し、日本のシステムとデータ連携する方法がコスト効率的です。


参考資料

  • デロイトトーマツ「HRテクノロジー実態調査2025」
  • 社会保険労務士連合会「給与計算実務の電子化に関する調査」
  • IPA「ソフトウェア開発分析データ集2024」