はじめに:サイバー攻撃は福岡の中小企業も標的にしている

「うちは小さな会社だから狙われない」——この認識は2026年現在、完全に誤りだ。IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威」では、サプライチェーン攻撃や標的型攻撃が中小企業を経由するケースが年々増加していると報告されている。

福岡の中小企業も例外ではない。取引先の大手メーカーからセキュリティ対策状況の報告を求められるケース、サイバー保険加入の前提としてセキュリティ診断を要求されるケースが増えている。

しかし、セキュリティ診断の費用は数十万〜数百万円と高額なイメージがあり、中小企業にとってはハードルが高い。本記事では、まず無料でできる自己診断から始め、段階的にセキュリティレベルを上げていくアプローチを解説する。


無料でできるセキュリティ自己診断

IPA「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」

IPAが提供する中小企業向けの自己診断ツール。25項目のチェックリストに回答するだけで、自社のセキュリティ対策状況をスコア化できる。

  • 費用: 無料
  • 所要時間: 5〜10分
  • 診断内容: 基本方針、物理的対策、技術的対策、人的対策、運用管理の5カテゴリ
  • アクセス: IPAのWebサイトからオンラインで利用可能
  • 活用法: 診断結果をPDFで出力し、経営者への報告資料として活用。「SECURITY ACTION」一つ星宣言の前提条件にもなる

IPA「情報セキュリティ対策ベンチマーク」

より詳細な自己診断を行いたい場合に利用する。27項目の診断項目に対して、同業種・同規模の企業との比較結果が表示される。

  • 費用: 無料
  • 所要時間: 30分〜1時間
  • 診断内容: 組織的対策、物理的対策、技術的対策、運用管理の各領域
  • 特徴: 業種・規模別の平均値と自社を比較できるため、「同業他社と比べてどの程度か」が客観的にわかる

SECURITY ACTIONの宣言

IPAが運営する中小企業向けのセキュリティ自己宣言制度。一つ星(自己診断実施)と二つ星(情報セキュリティ基本方針の策定)の2段階がある。

  • 費用: 無料
  • 一つ星の要件: 「5分でできる!自社診断」を実施し、対策を開始する
  • 二つ星の要件: 情報セキュリティ基本方針を策定し、外部に公開する
  • メリット: IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)の申請要件。取引先へのセキュリティ対策のアピールにもなる

有料のセキュリティ診断サービス

診断サービスの種類と費用

診断種別費用目安期間対象検出できるリスク
Webアプリ脆弱性診断30万〜150万円1〜2週間Webサイト・WebアプリSQLインジェクション、XSS、CSRF等
ネットワーク脆弱性診断20万〜100万円3日〜1週間社内ネットワーク不要なポート開放、パッチ未適用、設定不備
プラットフォーム診断30万〜200万円1〜2週間サーバー・OS・ミドルウェアOS脆弱性、ミドルウェアの設定不備
ペネトレーションテスト100万〜500万円2〜4週間システム全体攻撃者視点での侵入可能性の検証
クラウド設定診断20万〜100万円3日〜1週間AWS/Azure/GCP環境IAM設定不備、ストレージの公開設定ミス
メールセキュリティ診断10万〜50万円1〜3日メールシステムSPF/DKIM/DMARC設定、フィッシング耐性

中小企業が最初に受けるべき診断

すべての診断を一度に実施する必要はない。中小企業が優先すべき診断を、リスクの高さ順に整理する。

優先度1:Webサイトの脆弱性診断 自社のWebサイト(特にフォームやログイン機能があるサイト)は、外部から常に攻撃にさらされている。ECサイトや会員サイトを運営している場合は、最優先で診断を実施すべきだ。

優先度2:メールセキュリティ診断 フィッシングメールやビジネスメール詐欺(BEC)は、中小企業にとって最も身近な脅威だ。SPF・DKIM・DMARCの設定状況を確認するだけでもリスクを大幅に低減できる。

優先度3:ネットワーク脆弱性診断 リモートワークの普及でVPN機器を導入した企業は、VPNの脆弱性が狙われるケースが急増している。ネットワーク機器のファームウェア更新状況を含めた診断を推奨する。


福岡で対応できるセキュリティ企業

企業選定の基準

福岡でセキュリティ診断を依頼する際は、以下の基準で企業を選定する。

1. 診断実績と資格 情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)やCISSP保持者が在籍しているか。診断実績の件数と業種を確認する。

2. 報告書の品質 診断結果を技術者向けの詳細レポートと、経営者向けのエグゼクティブサマリーの両方で提供してくれるか。

3. 改善支援の有無 診断で見つかった脆弱性の改善策を具体的に提案し、改善作業まで対応できるか。「診断して終わり」の企業は避ける。

4. 費用の透明性 診断対象のURL数・IPアドレス数に応じた明確な料金体系があるか。追加費用が発生する条件が事前に明示されているか。

福岡のセキュリティ対応企業の分類

企業タイプ特徴費用感向いている企業
セキュリティ専業企業診断・監視・インシデント対応に特化中〜高高いセキュリティレベルが求められる企業
IT企業(GXO等)開発+セキュリティ診断を一体提供システム開発と合わせてセキュリティも対応したい企業
MSP(マネージドサービス)インフラ運用+セキュリティ監視月額制IT管理全般を外部に任せたい企業
大手SIer九州拠点大規模システムのセキュリティ監査大規模システムを保有する中堅〜大手企業

セキュリティ対策のロードマップ

ステップ1:現状把握(費用ゼロ)

IPAの自己診断ツールで現状のセキュリティレベルを把握する。SECURITY ACTION一つ星を宣言する。

ステップ2:基本対策の実施(費用:低)

OS・ソフトウェアの更新、ウイルス対策ソフトの導入、パスワードポリシーの策定、バックアップの実施。これらは費用をほとんどかけずに実施できる。

ステップ3:外部診断の実施(費用:中)

Webサイトの脆弱性診断とメールセキュリティ診断を優先的に実施する。IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)の活用で費用を圧縮する。

ステップ4:継続的な監視体制の構築(費用:中〜高)

EDR(エンドポイント検出・対応)やSOC(セキュリティ運用センター)サービスの導入を検討する。IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は中小企業向けに低コストで提供されている。

ステップ5:セキュリティポリシーの策定と教育(費用:低〜中)

SECURITY ACTION二つ星の宣言に向けて、情報セキュリティ基本方針を策定する。従業員向けのセキュリティ研修を年1回以上実施する。


補助金を使ったセキュリティ対策

IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)

  • 補助額:5万〜100万円
  • 補助率:1/2
  • 対象:IPA認定「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用料(最大2年分)
  • 要件:SECURITY ACTION二つ星宣言

サイバーセキュリティお助け隊サービス

IPAが認定する中小企業向けのセキュリティ監視サービス。複数のベンダーが認定を受けており、月額1万円前後から利用可能なサービスもある。


FAQ

Q1. 無料の自己診断だけで十分ですか?

自己診断はあくまで「気づき」のためのツールであり、技術的な脆弱性を検出するものではない。Webサイトにフォームやログイン機能がある場合、ECサイトを運営している場合は、有料の脆弱性診断を受けることを強く推奨する。

Q2. セキュリティ診断はどのくらいの頻度で実施すべきですか?

最低でも年1回の実施を推奨する。Webサイトの大幅な改修や新規システムのリリース時には、その都度診断を実施すべきだ。継続的な監視サービスを導入すれば、リアルタイムで脆弱性を検出できる。

Q3. 診断で脆弱性が見つかった場合、修正は自社で行うべきですか?

脆弱性の種類と自社の技術力による。設定変更レベルの対策は自社で実施可能だが、コードの修正やアーキテクチャの変更が必要な場合は専門企業に依頼すべきだ。診断と改善を同じ企業に依頼すると、スムーズに進む。

Q4. 取引先からセキュリティチェックシートの提出を求められました。どう対応すべきですか?

まずチェックシートの内容を確認し、自社で対応できる項目とできない項目を整理する。対応できない項目については、対策のスケジュールを示すことが重要だ。SECURITY ACTIONの宣言やセキュリティ診断の実施証明書があれば、取引先の信頼を得やすい。


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