デジタル庁「行政手続のデジタル化に関する基本方針」(2024年6月公表)では、政府機関におけるFAX利用の原則廃止が明記されている。民間企業においても、インボイス制度の施行(2023年10月)と電子帳簿保存法の改正により、紙ベースの受発注・請求書の運用コストが上がっている。しかし、中小企業の現場では「取引先がFAXでしか注文してこない」「うちだけ変えても意味がない」という声が根強い。この記事では、FAX廃止の背景と必要性を整理し、代替となるシステム(クラウドFAX / Web受発注 / EDI)を費用で比較、段階的な移行方法を解説する。


目次

  1. FAX廃止の背景
  2. FAXを使い続けるコスト
  3. 代替システムの比較
  4. 費用シミュレーション
  5. 段階的導入の進め方
  6. 導入事例
  7. 補助金の活用
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

FAX廃止の背景

1. 政府方針:行政のFAX原則廃止

デジタル庁は2021年に霞が関のFAX廃止を打ち出し、現在は地方自治体にもデジタル化を推進している。民間企業に直接の義務はないが、行政との取引がある企業は対応を迫られる場面が増えている。

2. インボイス制度と電子帳簿保存法

2023年10月に開始されたインボイス制度では、適格請求書の保存が義務化された。また、電子帳簿保存法の改正(2024年1月完全義務化)により、電子的に受け取った書類を紙に印刷して保存することが原則不可になった。FAXで受け取った注文書を紙で保管するだけでは、法的要件を満たせないリスクがある。

3. 人手不足とコスト増

FAXの受信確認、紙の仕分け、手入力でのデータ化——これらはすべて人手に依存する作業だ。人件費が上がり続ける中、FAXに人手を割くことの機会コストは年々大きくなっている。

セクションまとめ: 政府方針、インボイス制度、人手不足の3つがFAX廃止を後押ししている。法的リスクの観点からも対応が必要。


FAXを使い続けるコスト

「FAXは安い」と思われがちだが、隠れたコストを計算すると実態は異なる。

コスト項目月間費用の目安(FAX100枚/月の場合)
FAX回線基本料2,000〜3,000円
通信料(送信)500〜1,500円
用紙・トナー1,000〜2,000円
FAX機リース料3,000〜8,000円
受信FAXの仕分け・確認作業約20時間/月 × 時給1,500円 = 30,000円
手入力でのデータ化約15時間/月 × 時給1,500円 = 22,500円
入力ミスによる手戻り約5時間/月 × 時給1,500円 = 7,500円
月間合計約67,000〜75,000円
年間合計約80万〜90万円
FAX100枚/月の規模で年間80万〜90万円のコストが発生している。これはFAXの「見える費用」(回線・用紙・リース)だけでなく、「見えない費用」(人件費)を含めた試算だ。FAXの枚数が多い企業では年間数百万円に達するケースもある。

セクションまとめ: FAXの真のコストは回線・用紙代ではなく、人件費。月100枚でも年間80万〜90万円のコストが発生している。


代替システムの比較

FAXの代替となる主要システムを3つのカテゴリで比較する。

比較項目クラウドFAXWeb受発注システムEDI(電子データ交換)
概要FAXをクラウド経由で電子化。FAX番号は維持Web画面から受注・発注を行う企業間のデータを自動的に送受信
初期費用0〜10万円30万〜200万円50万〜500万円
月額費用1,000〜10,000円5,000〜50,000円10,000〜100,000円
導入の手軽さ非常に容易やや容易要件定義が必要
取引先の対応FAX番号が変わらず取引先の対応不要取引先にWeb操作を依頼する必要あり取引先もEDI対応が必要
データ連携PDF化まで。手入力は残る受注データが自動でシステムに入る完全自動連携
向いている規模FAX件数が少ない、移行期中規模(月100〜500件)大規模(月500件以上)

クラウドFAX

FAX回線をクラウドサービスに切り替え、受信FAXをPDFで確認する。既存のFAX番号を維持できるため、取引先に変更を通知する必要がない。ただし、PDFを目視確認して手入力する作業は残るため、根本的なデジタル化にはならない。「FAX廃止への第一歩」として位置づけるのが適切だ。

Web受発注システム

取引先がWebブラウザから注文データを直接入力する。受注データがそのままシステムに入るため、手入力が不要になる。ただし、取引先にWeb操作を覚えてもらう必要があるため、取引先の協力が不可欠だ。

EDI(電子データ交換)

企業間のデータを自動的に送受信する仕組み。受発注データだけでなく、納品通知、請求データも含めた一気通貫の電子化が可能。ただし、取引先もEDI対応が必要で、導入のハードルは最も高い。中小企業向けには「流通BMS」「全銀EDI」などの標準規格が整備されている。

AI-OCRで受信FAXを自動データ化する方法はAI-OCR請求書自動化ガイドで詳しく解説している。

セクションまとめ: クラウドFAXは「手軽だが根本解決にならない」、Web受発注は「取引先の協力が必要だがデータ化が進む」、EDIは「完全自動化だが導入ハードルが高い」。


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費用シミュレーション

パターン1:クラウドFAX導入(まずは電子化から)

項目金額
クラウドFAXサービス初期設定0円
月額費用(年間)6万円
年間合計6万円
FAX人件費の削減効果(受信確認の効率化)約15万円/年

パターン2:Web受発注システム導入

項目金額
Web受発注システム(導入+設定)80万円
月額費用(年間)24万円
取引先への説明会・マニュアル作成10万円
初年度合計114万円
FAX人件費の削減効果約60万円/年
投資回収期間約2年

パターン3:Web受発注+AI-OCRのハイブリッド

項目金額
Web受発注システム80万円
AI-OCR(FAX受信分の自動データ化)30万円
月額費用(年間)36万円
初年度合計146万円
FAX人件費の削減効果約70万円/年
投資回収期間約2年
AI-OCRを併用することで、Web受発注に対応できない取引先からのFAX注文も自動データ化できる。

セクションまとめ: クラウドFAXは年間6万円で始められる。Web受発注は初年度114万円だが、2年で投資回収可能。


段階的導入の進め方

FAX廃止は一気に進めず、段階的に移行するのが現実的だ。

フェーズ1:クラウドFAX化(1〜2ヶ月)

FAX回線をクラウドFAXに切り替え、受信FAXをPDFで管理する。取引先への影響はゼロ。紙の管理が不要になり、検索も可能になる。

フェーズ2:主要取引先のWeb受発注移行(3〜6ヶ月)

FAX注文量の多い上位20%の取引先から、Web受発注への切り替えを依頼する。パレートの法則により、上位20%の取引先で全FAXの60〜80%をカバーできるケースが多い。

フェーズ3:残る取引先のAI-OCR対応(3〜6ヶ月)

Web受発注に切り替えが難しい取引先(小規模・高齢経営者など)には、FAXを継続してもらいつつ、AI-OCRで受信FAXを自動データ化する。

フェーズ4:FAX回線の廃止(判断)

Web受発注+AI-OCRで全取引先をカバーできた時点で、FAX回線の廃止を検討する。完全廃止が難しい場合でも、フェーズ1〜3の施策でFAX関連の人件費は大幅に削減できる。

セクションまとめ: クラウドFAX→主要取引先のWeb化→残りのAI-OCR対応の3段階で進める。上位20%の取引先から着手するのがポイント。


導入事例

事例:卸売業(福岡県・従業員30名)——FAX月300枚からの脱却

課題: 取引先50社からFAXで注文書を月300枚受信。FAXの仕分け・確認・手入力に2名のスタッフが合計60時間/月を費やしていた。入力ミスによる誤出荷が月3〜5件発生。

導入ツール: Web受発注システム(主要取引先30社向け)+AI-OCR(FAX継続の20社向け)

補助金: IT導入補助金(通常枠・補助率1/2)、導入費用160万円のうち80万円を補助

移行の流れ:

  1. フェーズ1(1ヶ月):クラウドFAXに切り替え、紙のFAXを廃止
  2. フェーズ2(3ヶ月):FAX注文量の多い上位30社にWeb受発注を案内。説明会2回実施
  3. フェーズ3(2ヶ月):残りの20社のFAX注文をAI-OCRで自動データ化

効果:

  • FAX関連の作業時間が60時間/月→10時間/月に削減
  • 入力ミスによる誤出荷が月5件→0件に
  • 年間の人件費削減効果:約180万円
  • スタッフ2名を出荷・配送業務にシフトし、配送リードタイムが短縮

セクションまとめ: FAX月300枚の卸売業が、Web受発注+AI-OCRで作業時間を83%削減、誤出荷ゼロを実現。


補助金の活用

FAX廃止のためのシステム導入にはIT導入補助金が活用できる。

補助金補助率補助上限対象
IT導入補助金(通常枠)1/2最大450万円Web受発注システム、クラウドFAX
IT導入補助金(インボイス枠)3/4〜4/5最大350万円受発注ソフト(インボイス対応)
インボイス対応の受発注システムを導入する場合、インボイス枠(補助率3/4〜4/5)が適用される可能性がある。通常枠よりも有利な条件だ。

補助金の全体像はIT補助金2026実務ガイド、申請スケジュールはIT補助金2026後期ガイドを参照されたい。

セクションまとめ: IT導入補助金を活用すればFAX廃止のシステム導入費用を半額以下に抑えられる。


まとめ

FAX廃止は「一気に全廃」ではなく、クラウドFAX→Web受発注→AI-OCRの段階的移行が現実的だ。FAXの真のコストは回線代ではなく人件費であり、月100枚規模でも年間80万〜90万円が発生している。代替システムの導入費用はIT導入補助金で半額以下に抑えられ、2年以内での投資回収が見込める。取引先との関係を維持しながら、段階的にデジタル化を進めることがFAX廃止成功の鍵だ。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 取引先がFAXでしか注文してこない場合、どうすればいいですか?

A1. 2つのアプローチがあります。(1)取引先にWeb受発注への切り替えを案内する(操作が簡単であることを実演し、メリットを伝える)。(2)取引先はFAXのまま、自社側でAI-OCRを導入して受信FAXを自動データ化する。後者であれば取引先に負担をかけずにデジタル化を進められます。

Q2. FAX番号を変えずにクラウドFAXに移行できますか?

A2. 多くのクラウドFAXサービスで、既存のFAX番号をそのまま引き継ぐ「番号ポータビリティ」に対応しています。番号が変わらないため、取引先への通知は不要です。

Q3. 電子帳簿保存法への対応はどうなりますか?

A3. Web受発注システムであれば、電子取引データの保存要件(検索機能、改ざん防止措置等)を標準で満たしているケースが多いです。クラウドFAXの場合は、受信PDFを電子帳簿保存法の要件に沿って保存する運用ルールの整備が必要です。

Q4. FAX廃止にかかる期間はどのくらいですか?

A4. 段階的に進める場合、フェーズ1(クラウドFAX化)で1〜2ヶ月、フェーズ2(Web受発注移行)で3〜6ヶ月、フェーズ3(AI-OCR対応)で3〜6ヶ月が目安です。全体で6ヶ月〜1年程度を見込んでください。


参考資料

  • デジタル庁「行政手続のデジタル化に関する基本方針」(2024年6月公表) https://www.digital.go.jp/policies/digitization
  • 国税庁「電子帳簿保存法の概要」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
  • 中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/

追加の一次情報・確認観点

この記事の内容を社内で検討する場合は、一般論だけで判断せず、次の一次情報と自社データを照合してください。特に、稟議・RFP・ベンダー選定では「何を実装するか」よりも「どのリスクをどの水準まで下げるか」を先に決めると、見積もり比較のブレを抑えられます。

確認領域参照先自社で確認すること
デジタル調達デジタル庁要件定義、調達、プロジェクト管理の標準観点を確認する
Webアプリ品質OWASP ASVS認証、認可、入力検証、ログ、セッション管理を確認する
DX推進経済産業省 DXレガシー刷新、経営課題、IT投資判断の前提を確認する
DX推進IPA デジタル基盤センターDX推進指標、IT人材、デジタル基盤の観点で現状を確認する
個人情報個人情報保護委員会個人情報・委託先管理・利用目的・安全管理措置を確認する

稟議・RFPで使う数値設計

投資判断では、導入前後で測れる指標を3から5個に絞ります。下表のように、現状値・目標値・測定方法・責任者をセットにしておくと、PoC後に本番化するかどうかを判断しやすくなります。

指標現状確認目標の置き方失敗しやすい例
対象業務数現状の対象業務を棚卸し初期は1から3業務に限定対象を広げすぎて要件が固まらない
月間処理件数件数、担当者、例外率を確認上位20%の高頻度業務から改善件数が少ない業務を先に自動化する
例外対応率手戻り、確認待ち、属人判断を計測例外の分類と承認ルールを定義例外をAIやシステムだけで吸収しようとする
追加要件率過去案件の変更件数を確認要件凍結ラインを設定見積後に仕様が増え続ける
障害・手戻り件数問い合わせ、障害、改修履歴を確認受入基準とテスト観点を定義テストをベンダー任せにする

よくある失敗と回避策

失敗パターン起きる理由回避策
目的が曖昧なままツール選定に入る比較軸が価格や機能数に寄る経営課題、業務課題、測定KPIを先に固定する
現場確認が不足する例外処理や非公式運用が見落とされる担当者ヒアリングと実データ確認を必ず行う
運用責任者が決まっていない導入後の改善が止まる業務側とIT側の責任分界をRACIで定義する
RFPが抽象的で見積が比較できない業務フロー、データ、非機能要件が不足見積前に要件定義と受入条件を固める

GXOに相談する前に整理しておく情報

初回相談では、次の情報があると診断と提案の精度が上がります。すべて揃っていなくても問題ありませんが、分かる範囲で用意しておくと、概算費用・期間・体制の見立てを早く出せます。

  • 対象業務の現行フロー、利用中システム、Excel・紙・チャット運用の一覧
  • 月間件数、担当人数、手戻り件数、確認待ち時間などの概算
  • 個人情報、機密情報、外部委託、権限管理に関する制約
  • 希望開始時期、予算レンジ、社内承認者、決裁までの流れ
  • 既存システム構成、画面・帳票・データ項目、外部連携、現行ベンダー契約

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