デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)2026の第1次締切分では、通常枠の採択率が50.72%にとどまった(中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026 交付決定事業者一覧」および申請受付状況(2026年6月公表)に基づく採択率)。つまり、申請した企業の約半数が不採択になっている。1次で不採択になった企業にとって、2次公募は同一年度内の再チャレンジの場だ。しかし、1次と同じ内容で再申請しても結果は変わらない。本記事では、1次の採択率データを分析し、2次公募で採択率を上げるための具体策を解説する。
目次
- 1次公募の採択率データ(枠別・類型別)
- 2次公募で変わるポイント
- 不採択の主な理由TOP5
- 再申請で採択率を上げる5つの具体策
- 加点項目の活用法
- 他の補助金への切り替え戦略
- まとめ
- FAQ
- 参考資料
1. 1次公募の採択率データ(枠別・類型別)
まず、2026年度1次締切分の採択率を確認する。各枠・類型ごとに採択率が異なるため、自社が申請した枠の採択率を把握しておくことが重要だ。
枠別採択率(2026年度1次締切分)
| 枠・類型 | 申請件数(推計) | 採択件数(推計) | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 約18,000件 | 約9,100件 | 約50.7% |
| デジタル化基盤導入類型 | 約12,000件 | 約7,800件 | 約65.0% |
| セキュリティ対策推進枠 | 約3,500件 | 約2,800件 | 約80.0% |
| AI導入枠(新設) | 約2,000件 | 約1,200件 | 約60.0% |
過年度との比較
| 年度 | 通常枠採択率 | デジタル化基盤導入類型採択率 |
|---|---|---|
| 2024年度(IT導入補助金2024) | 約47% | 約62% |
| 2025年度(IT導入補助金2025) | 約52% | 約67% |
| 2026年度1次(デジタル化・AI導入補助金2026) | 約50.7% | 約65.0% |
セクションまとめ:通常枠の採択率は約50%で「2人に1人は不採択」。デジタル化基盤導入類型は約65%と高め。枠の選択が採択率に大きく影響する。
2. 2次公募で変わるポイント
2次公募は1次と同じ制度だが、いくつかのポイントが変わる。
予算残額の影響
1次で予算の一部が消化されるため、2次で採択できる件数が減る可能性がある。ただし、1次の不採択が多い場合や辞退者が出た場合は、2次の枠が広がることもある。
申請者の質の変化
2次には以下の2種類の申請者が混在する。
- 1次で不採択になり再申請する企業:申請経験があるため、書類の完成度が上がっている可能性がある
- 1次に間に合わず2次で初申請する企業:準備不足のまま申請するケースもあり、採択率にばらつきが出る
スケジュールの違い
2次公募は1次よりも申請準備期間が短いことが多い。公募開始から締切までの期間を確認し、逆算して準備スケジュールを立てる必要がある。
2次特有のチャンス
2次公募では、1次の採択結果を踏まえて事務局が「重点分野」を明示することがある。たとえば「AI活用」「サイバーセキュリティ」「インボイス対応」など、政策的に推進したい分野の申請が優遇される可能性がある。公募要領の変更点を細かくチェックすることが重要だ。
セクションまとめ:2次は予算残額・申請者の質・スケジュール・重点分野が1次と異なる。公募要領の変更点を必ず確認する。
3. 不採択の主な理由TOP5
IT導入補助金の不採択理由は公式には開示されないが、IT導入支援事業者や認定支援機関の実務経験から、以下の5つが主な不採択理由として知られている。
理由1:事業計画の具体性が不足している
「業務を効率化したい」「コストを削減したい」といった抽象的な記述しかない申請書は採択されにくい。審査員は「どの業務が」「どれくらい非効率で」「導入後にどう変わるのか」を具体的な数字で確認したい。
不採択になる書き方:
受発注業務を効率化し、業務コストを削減する。
採択される書き方:
受発注業務に月間80時間を費やしており、FAXの転記ミスが月4件発生している。システム導入後は月間20時間に削減し、転記ミスをゼロにする。
理由2:ITツールの選定根拠が弱い
「なぜこのツールを選んだのか」が明確でない申請書は評価が低い。複数のツールを比較検討した上で、自社の課題に最も合致するツールを選んだという根拠が必要だ。
理由3:生産性向上の数値目標が非現実的
「売上200%増」「業務時間90%削減」のように、非現実的な目標を書いてしまうケースがある。審査員は実現可能性を重視するため、根拠のない大きな数字はマイナス評価になる。
理由4:加点項目を活用していない
賃上げ計画、くるみん・えるぼし認定、インボイス制度対応など、加点項目が公表されているにもかかわらず活用していない申請書は、ボーダーラインで不利になる。
理由5:書類の不備・記入ミス
住所の表記が登記簿と異なる、添付書類が不足している、金額の桁が間違っているなど、内容以前の不備で不採択になるケースが依然として多い。
申請書の書き方の具体的なポイントはIT導入補助金の申請書の書き方|採択率を上げる5つのポイントで詳しく解説している。
セクションまとめ:不採択理由のTOP5は、事業計画の抽象性、ツール選定根拠の弱さ、非現実的な目標、加点項目の未活用、書類不備。いずれも再申請前に改善可能。
4. 再申請で採択率を上げる5つの具体策
1次で不採択になった場合、以下の5つの改善を行うことで、2次での採択率を大幅に上げることができる。
具体策1:事業計画を数字で書き直す
最も効果が大きい改善策だ。以下のフレームワークで事業計画を書き直す。
| 項目 | 記載内容 | 例 |
|---|---|---|
| 現状の課題 | 何が、どれくらい問題か(定量) | 請求書作成に月間40時間。入力ミス月5件 |
| 導入するITツール | 何を導入するか(具体名) | クラウドCRM「○○」+会計連携モジュール |
| 導入後の目標 | どうなるか(定量) | 月間15時間に短縮。入力ミスゼロ |
| 投資対効果 | 何年で元が取れるか | 年間300時間の削減×人件費2,000円/時間=年60万円のコスト削減 |
具体策2:ITツールの選定プロセスを明記する
「複数のツールを比較検討した結果、このツールを選んだ」というプロセスを申請書に記載する。
記載例:
3社のCRMツール(A社、B社、C社)を比較検討した結果、当社の業種(建設業)での導入実績が最も多く、工事台帳との連携機能を持つC社を選定した。比較表は別紙のとおり。
具体策3:申請する枠・類型を見直す
1次で通常枠に申請して不採択になった場合、2次ではデジタル化基盤導入類型やAI導入枠への切り替えを検討する。前述のとおり、枠によって採択率が15〜30%ポイント異なる。
| 切り替え検討 | 条件 |
|---|---|
| 通常枠 → デジタル化基盤導入類型 | 受発注・会計・決済・ECのいずれかの機能を含むITツールを導入する場合 |
| 通常枠 → AI導入枠 | AIチャットボット、AI-OCR、AI予測分析などのAI機能を含む場合 |
| 通常枠 → セキュリティ対策推進枠 | サイバーセキュリティ対策を目的とする場合(採択率が最も高い) |
具体策4:IT導入支援事業者を変更する
1次でIT導入支援事業者のサポートが不十分だった場合、2次では別の事業者に切り替えることも有効だ。申請書の作成支援の質は、IT導入支援事業者によって大きく異なる。
具体策5:第三者にレビューしてもらう
完成した申請書を、商工会議所の相談窓口、認定支援機関(税理士・中小企業診断士など)、または補助金の実績があるIT導入支援事業者にレビューしてもらう。「審査員の目線」で読んでもらうことで、改善点が明確になる。
補助金の申請方法全般についてはデジタル化・AI導入補助金2026 申請ガイドで解説している。
セクションまとめ:再申請では「数字での書き直し」「ツール選定プロセスの明記」「枠の見直し」「IT導入支援事業者の変更」「第三者レビュー」の5策を実行する。
5. 加点項目の活用法
加点項目は採択のボーダーラインで合否を分ける重要な要素だ。2026年度の主な加点項目と活用法を整理する。
主な加点項目一覧
| 加点項目 | 内容 | 対応のしやすさ |
|---|---|---|
| 賃上げ計画の表明 | 事業計画期間中に給与を一定率以上引き上げる計画を表明 | ★★★(多くの企業が対応可能) |
| くるみん認定・えるぼし認定 | 厚生労働省の認定を取得している | ★☆☆(取得に時間がかかる) |
| インボイス制度への対応 | 適格請求書発行事業者に登録している | ★★★(登録すれば対応可能) |
| 地域経済への貢献 | 地方に拠点があり、地域の雇用や経済に貢献している | ★★☆(所在地による) |
| サイバーセキュリティお助け隊への加入 | IPAの「サイバーセキュリティお助け隊」サービスに加入 | ★★★(加入手続きのみ) |
| IT導入支援事業者の評価 | 過去の案件で高い評価を受けたIT導入支援事業者を選んでいる | ★★☆(事業者の選定次第) |
加点項目活用のポイント
賃上げ計画は最も活用しやすい加点項目だ。給与の引き上げ率(年平均成長率)1.5%以上の計画を表明するだけで加点される。ただし、加点を受けて採択された場合は、実際に賃上げを実行する義務が生じる。未達の場合は補助金の返還リスクがあるため、実現可能な範囲で計画する。
インボイス対応も対応しやすい。適格請求書発行事業者に登録していれば加点されるため、未登録の場合は2次申請前に登録手続きを進める。
サイバーセキュリティお助け隊への加入はIPAのサービスに加入するだけで加点される。加入費用は年額数万円程度で、加点の効果を考えればコストパフォーマンスが高い。
gBizIDの登録がまだの方はgBizIDプライム登録ガイド2026を参照されたい。
セクションまとめ:賃上げ計画・インボイス対応・セキュリティお助け隊の3つは対応しやすい加点項目。ボーダーラインの1点を争う場面で合否を分ける。
6. 他の補助金への切り替え戦略
2次公募でも不採択になった場合、または2次公募を待たずに別の補助金に切り替えた方が有利な場合がある。
切り替え先の候補
| 補助金制度 | 補助率 | 補助額上限 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金(デジタル枠) | 1/2〜2/3 | 750万〜1,250万円 | 大規模なシステム開発、製造業の生産管理 |
| 事業再構築補助金 | 1/2〜2/3 | 最大1,500万円 | 新規事業への転換を伴うIT投資 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 2/3 | 50万〜200万円 | 従業員20名以下の小規模な投資 |
| 各自治体のDX補助金 | 自治体による | 自治体による | 地域限定の独自制度を活用 |
切り替え判断のフローチャート
- 補助金額が450万円以下で十分か? → Yes → IT導入補助金の再申請を検討
- 450万円以上の投資が必要か? → Yes → ものづくり補助金を検討
- 新規事業の要素があるか? → Yes → 事業再構築補助金を検討
- 従業員20名以下の小規模事業者か? → Yes → 小規模事業者持続化補助金を検討
- 自治体独自の補助金はあるか? → 所在地の自治体サイトで確認
注意点
- 同一のシステム導入に対して、複数の補助金を重複して受給することはできない
- 補助金によって申請のタイミング、審査基準、必要書類が異なるため、切り替え先の公募要領をよく確認する
- 認定支援機関の確認書が必要な補助金もあるため、早めに相談する
補助金制度の横断的な比較は中小企業の補助金完全ガイド2026で行っている。IT導入補助金の最新情報はデジタル化・AI導入補助金2026後期ガイドを参照されたい。
セクションまとめ:IT導入補助金で2回不採択になった場合は、ものづくり補助金・事業再構築補助金・持続化補助金への切り替えを検討する。重複受給は不可。
不採択からの再チャレンジを全力でサポートします
GXOが1次の申請書をレビューし、2次公募での採択率を上げる改善プランをご提案します。他の補助金への切り替えも含めて最適な戦略を一緒に考えましょう。
まとめ
デジタル化・AI導入補助金の通常枠の採択率は約50%で、2人に1人は不採択になる。1次で不採択になった場合、2次公募では「数字で書き直す」「加点項目を活用する」「申請する枠を見直す」の3点が再申請の鍵になる。特に、賃上げ計画の表明とインボイス対応は対応しやすい加点項目だ。2次でも不採択の場合は、ものづくり補助金や事業再構築補助金への切り替えも選択肢に入れてほしい。補助金の採択は「申請書の完成度」で決まる。適切な準備と専門家のサポートで、採択率は確実に上げられる。GXO株式会社の会社概要はこちら。開発事例はこちら。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 1次で不採択になった場合、2次で同じ内容で再申請できますか?
A1. はい、再申請は可能です。ただし、同じ内容で再申請しても結果が変わる可能性は低いため、事業計画の具体性を高める、加点項目を追加する、申請する枠を見直すなど、何らかの改善を行った上で再申請することを強く推奨します。
Q2. 不採択の理由は教えてもらえますか?
A2. 残念ながら、不採択の具体的な理由は公式には開示されません。ただし、IT導入支援事業者や認定支援機関に相談すると、申請書の内容から「おそらくここが弱い」という推測をしてもらえることがあります。複数の専門家に見てもらうと、改善点が見えてきます。
Q3. 2次公募の採択率は1次より高いですか?低いですか?
A3. 年度によって異なりますが、一般的に2次の採択率は1次と同程度か、やや下がる傾向があります。予算残額の影響で採択枠が減る可能性がある一方、1次の不採択者が改善して再申請するため申請の質が上がる傾向もあります。「2次は楽になる」とは考えず、しっかり準備して臨んでください。
Q4. IT導入補助金とものづくり補助金は同時に申請できますか?
A4. 同時に申請すること自体は可能ですが、同一の投資対象(同じシステム)に対して両方の補助金を受給することはできません。たとえば、CRMシステムについてIT導入補助金を申請し、別の生産管理システムについてものづくり補助金を申請する、という使い分けは可能です。
Q5. 3次公募、4次公募はありますか?
A5. 年度によって異なりますが、IT導入補助金は例年3〜4回の公募回が設けられています。2026年度のスケジュールは中小機構の公式サイトで随時公表されます。後になるほど予算残額が少なくなるため、早めの回で申請する方が有利です。
参考資料
- 中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/
- 中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026 交付決定事業者一覧」(2026年6月公表) https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/vendorlist/
- 中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール」 https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
- 中小企業庁「2024年版 中小企業白書」(2024年4月公表) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/chusho.html
- 中小企業庁「ものづくり補助金総合サイト」 https://portal.monodukuri-hojo.jp/
- 中小企業庁「事業再構築補助金」公式サイト https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
- IPA「サイバーセキュリティお助け隊」サービスリスト https://www.ipa.go.jp/security/otasuketai-pr/