「FAXの注文書が読めない」「電話で聞いた数量をExcelに転記するたびにヒヤッとする」——その業務、あと何年続けるつもりだろうか。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査(2025年公表)」によると、BtoB-ECの市場規模は465兆円を超え、EC化率は40.0%に達した。しかし、その大半は大企業間のEDI取引だ。卸売・製造業の中小企業に限れば、いまだにFAX・電話・メールが受発注の主役という現場は珍しくない。

問題は「オンライン化すべきかどうか」ではない。「いくらかかるのか」「自社の取引慣行に合うのか」「どこに頼めばいいのか」——この3つが分からないから踏み出せないのだ。

本記事では、BtoB EC(卸売・受発注)サイト構築の費用相場を3つの開発パターン別に解説し、機能ごとの内訳、投資回収の試算、開発会社を選ぶ際のチェックリスト、活用できる補助金まで、意思決定に必要な情報をすべて整理した。


目次

  1. FAX・電話受注の限界——BtoB ECが必要になる5つの兆候
  2. BtoB ECサイト構築の費用相場|3つの開発パターン
  3. 機能別の費用内訳と優先順位
  4. FAX受注→BtoB ECのROI試算
  5. 開発会社の選び方|失敗しない7つの判断基準
  6. 補助金を活用して初期費用を抑える
  7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. FAX・電話受注の限界——BtoB ECが必要になる5つの兆候

兆候1:FAXの文字が読めず、確認の電話が日常になっている

手書きのFAX注文書は「7」と「1」、「ロット」と「コット」を毎回目視で判別しなければならない。読み間違いで誤出荷が起きるたびに、現場の士気が下がる。確認の電話をかけ直す時間も積み重なれば膨大だ。

兆候2:営業時間外の注文を翌朝まとめて処理している

取引先が夕方に送ったFAXを翌朝まとめて入力する。その間、取引先は「注文が届いたか」を確認できない。BtoB ECなら24時間受注でき、取引先も注文状況を即座に確認できる。

兆候3:取引先ごとの単価・掛率を紙台帳で管理している

A社は定価の8掛け、B社は7.5掛け、C社は品目によって掛率が違う——こうした条件を担当者の頭と紙台帳に頼っている。担当者が異動したら単価が分からなくなる。

兆候4:在庫の「あるはず」と実数が合わない

FAX注文を受けてから在庫を確認し、足りなければ取引先に電話する。受注と在庫がつながっていないから、「受注したのに在庫がない」「在庫があるのに欠品扱い」が起きる。

兆候5:月末の請求書作成に丸1日かかる

受注データがExcelやFAXの紙に散在しているため、月末にすべてを集計して請求書を作る作業が毎月発生する。転記ミスのリスクを抱えたまま、担当者が深夜残業で対応しているケースも多い。

セクションまとめ:5つのうち3つ以上に該当するなら、FAX・電話受注は限界に近い。「まだ回っている」のは、特定の社員の献身で支えているだけだ。


2. BtoB ECサイト構築の費用相場|3つの開発パターン

BtoB ECの構築費用は、「どこまで作り込むか」で大きく変わる。以下の3パターンで整理した。

開発パターン別の費用一覧

開発パターン費用相場開発期間向いている企業
パッケージ型(既製品導入)100〜300万円1〜3ヶ月取引先50社以下。標準的な卸売取引
カスタム型(パッケージ+独自開発)500〜1,500万円3〜10ヶ月取引先ごとの掛率・帳票が複雑
フルスクラッチ型(完全新規開発)1,000〜3,000万円8〜18ヶ月基幹連携・物流連携が必須

パッケージ型(100〜300万円)

Bカート、楽楽B2B、アラジンECなどの既製品クラウドサービスを導入するパターン。初期費用に加えて月額利用料(3〜15万円/月)が発生する。標準機能で業務の8割をカバーできるなら最もコストパフォーマンスが高い。

向いている場合

  • 取引先数が50社以下で、単価条件がシンプル
  • 既存の基幹システムとの連携が不要、またはCSV連携で十分
  • まずは小さく始めて効果を確認したい

注意点

  • 自社の商慣行に合わせるのではなく、パッケージの仕様に業務を合わせる必要がある
  • 取引先が高齢層中心の場合、操作説明のサポートが重要

カスタム型(500〜1,500万円)

パッケージ製品をベースにしつつ、自社固有の機能を追加開発するパターン。「取引先別の掛率自動適用」「独自の出荷指示書フォーマット」「承認ワークフロー」など、標準機能では対応できない要件がある場合に選ばれる。

向いている場合

  • 取引先ごとに単価条件・支払条件・納品条件が異なる
  • 業界特有の帳票(送り状・納品書・検収書)が必要
  • 基幹システムとリアルタイムのデータ連携が必要

注意点

  • 要件定義の精度が費用を左右する。「あれもこれも」と盛り込むと1,500万円に近づく
  • パッケージ部分のバージョンアップとカスタム部分の整合性に注意が必要

フルスクラッチ型(1,000〜3,000万円)

ゼロから設計・開発するパターン。自社の業務フロー、取引慣行、基幹システム、物流倉庫との連携をすべて要件に含める場合に選択される。取引先数が数百社を超え、年間取引額が10億円以上の企業に多い。

向いている場合

  • 基幹システム(販売管理・在庫管理・会計)との双方向連携が不可欠
  • 物流倉庫のWMS(倉庫管理システム)と自動連携したい
  • 複数の事業部・拠点で異なる受発注フローを1つのシステムに統合したい

注意点

  • 費用だけでなく、保守運用(年間開発費の15〜20%)も長期コストとして計算が必要
  • 開発会社の技術力・業界知見が品質を大きく左右する

セクションまとめ:「まずはパッケージ型で始めて、足りない部分をカスタムで補う」が最もリスクの低い進め方だ。最初からフルスクラッチを選ぶ前に、パッケージで7〜8割カバーできないかを必ず検討してほしい。


3. 機能別の費用内訳と優先順位

BtoB ECサイトに必要な機能は、BtoC(消費者向け)とは大きく異なる。すべてを一度に実装するのではなく、段階的に導入することで初期費用を抑えられる。

機能別の費用テーブル

機能追加費用の目安優先度説明
取引先別ログイン・権限管理基本機能に含む必須取引先ごとに閲覧可能な商品・価格を制限
取引先別単価・掛率設定50〜150万円必須取引先ごとに異なる単価テーブルを自動適用
商品カタログ・在庫表示基本機能に含む必須商品画像・仕様・在庫数のオンライン表示
注文履歴・再注文機能30〜80万円過去の注文をワンクリックで再発注
帳票出力(納品書・請求書)50〜120万円自社フォーマットに合わせたPDF帳票生成
承認ワークフロー50〜150万円金額に応じた社内承認フロー
基幹システム連携(API)100〜400万円販売管理・在庫管理・会計とのデータ同期
物流倉庫連携(WMS)80〜250万円出荷指示の自動送信・配送状況の取り込み
掛売り・与信管理50〜150万円与信枠の設定・超過時の自動アラート
分析ダッシュボード80〜200万円受注推移・取引先別売上の可視化
多言語・多通貨対応100〜300万円海外取引先への対応

段階的な導入の考え方

第1段階(必須機能):費用目安 100〜300万円 取引先別ログイン + 単価設定 + 商品カタログ + 注文機能

FAX・電話の代替として最低限必要な機能。これだけでも「24時間注文可能」「単価の自動適用」「注文データの一元管理」が実現する。

第2段階(業務効率化):追加費用目安 150〜400万円 注文履歴・再注文 + 帳票出力 + 承認ワークフロー

取引先にとっての利便性が大幅に上がる。月末の請求書作成が自動化され、担当者の深夜残業がなくなる。

第3段階(基幹統合):追加費用目安 200〜600万円 基幹連携 + 物流連携 + 与信管理 + 分析

基幹システムとつなぐことで、「受注→出荷→売上計上→入金管理」の流れが一気通貫になる。ただし、基幹側の改修費用も考慮する必要がある。

セクションまとめ:第1段階だけならパッケージ型で100〜300万円。全部入りにする必要はない。「FAXをやめる」を最初のゴールに設定するのが、成功への最短ルートだ。


4. FAX受注→BtoB ECのROI試算

「費用は分かった。問題は元が取れるかだ」——経営判断に必要なのは、具体的な数字だ。

試算モデル:取引先80社・月間受注300件の卸売企業(従業員25名)

項目FAX・電話受注(現状)BtoB EC導入後
受注処理(FAX→Excel転記)月60時間(1.5名分)月10時間(▲83%)
単価確認・見積対応月25時間月3時間(▲88%)
在庫確認・欠品連絡月15時間月3時間(▲80%)
月末請求書作成月20時間(残業含む)月3時間(▲85%)
誤受注による返品・再出荷月12万円(平均)月2万円(▲83%)
月間コスト削減額約95万円(人件費72万円+ロス削減10万円+残業代13万円)

投資回収シミュレーション

開発パターン初期投資月間削減額回収期間
パッケージ型200万円95万円約2ヶ月
カスタム型800万円95万円約9ヶ月
フルスクラッチ型2,000万円95万円約21ヶ月
※月額利用料(パッケージの場合8万円/月)や保守費用(カスタム・フルスクラッチの場合は開発費の15〜20%/年)は別途考慮が必要

数字に表れにくい効果

コスト削減だけがBtoB ECの価値ではない。以下の効果は数字に表れにくいが、経営への影響は大きい。

  • 取引先の満足度向上:24時間注文可能、注文状況をいつでも確認できる
  • 新規取引先の開拓:オンラインで商品カタログを公開し、全国から引き合いを獲得できる
  • 属人化の解消:担当者が不在でも受注業務が止まらない
  • 経営データの可視化:取引先別・商品別の売上推移をリアルタイムで把握
  • 内部統制の強化:承認フローの記録が残り、不正防止にもつながる

セクションまとめ:パッケージ型なら最短2ヶ月で投資回収。そして、BtoB ECは「コスト削減の道具」ではなく「売上を伸ばす仕組み」でもある。

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5. 開発会社の選び方|失敗しない7つの判断基準

BtoB ECの構築は、BtoCのECサイト制作とは求められる知見がまったく異なる。「ネットショップを作れます」という会社に頼んで失敗するケースは多い。以下の7つの基準で選定してほしい。

基準1:BtoB EC・卸売業務の開発実績があるか

BtoBは「取引先別の単価」「掛売り」「承認フロー」「帳票カスタマイズ」など、BtoCにはない要件が多い。BtoB ECの実績がない会社に依頼すると、要件定義の段階で認識のズレが生じ、手戻りが発生する。

基準2:業務ヒアリングの質が高いか

良い開発会社は、最初に「どんなシステムが欲しいですか」とは聞かない。「今のFAX受注の流れを教えてください」「取引先ごとの単価条件はどう管理していますか」「月末の請求書作成に何時間かかっていますか」と、現場の業務を徹底的に聞いてくる。

基準3:段階的な導入を提案してくれるか

「全機能を一括で作りましょう」と言う会社は要注意だ。初期費用が膨らむだけでなく、現場が使いこなせずに定着しないリスクがある。「まず第1段階で運用を回し、効果を確認してから第2段階に進む」と提案してくれる会社を選ぶべきだ。

基準4:保守・運用体制が明確か

ECサイトは作って終わりではない。取引先の追加、単価の改定、帳票の変更、法改正への対応——運用開始後にも継続的な対応が必要だ。保守契約の内容(月額費用、対応範囲、対応時間)を事前に確認すること。

基準5:基幹システムとの連携経験があるか

販売管理や在庫管理との連携が必要な場合、連携先のシステムに精通した開発会社を選ぶ。連携経験がないと、実装段階で想定外の工数が発生し、費用が当初見積もりを大幅に超えることがある。

基準6:補助金申請のサポートが可能か

補助金の申請書類は専門的な記述が求められる。「事業計画書の作成支援」「採択後の実績報告のサポート」まで対応できる会社であれば、申請の手間と不安が大幅に軽減される。

基準7:取引先への導入支援・教育まで考えてくれるか

BtoB ECは自社だけでなく、取引先にも使ってもらう必要がある。取引先の担当者がパソコンに不慣れな場合、操作マニュアルの整備や導入時の説明会が不可欠だ。この部分まで含めて提案できる会社は信頼できる。

開発会社の選定にお悩みの場合は、GXO株式会社の開発事例会社概要もあわせてご覧いただきたい。

セクションまとめ:最も重要なのは「BtoB ECの開発実績」と「業務ヒアリングの質」。見積もりの金額だけで決めると、運用開始後に「こんなはずではなかった」が起きる。


6. 補助金を活用して初期費用を抑える

BtoB ECサイトの構築には、国の補助金が活用できる。自己負担を半分以下に抑えられるケースもあるため、必ず検討してほしい。

活用可能な主な補助金(2026年度)

補助金名補助率補助上限額特徴
デジタル化・AI導入補助金最大2/3〜4/5最大450万円業務のデジタル化全般が対象
IT導入補助金1/2〜3/4最大450万円EC構築ツール・クラウドサービスの導入
ものづくり補助金1/2〜2/3最大1,250万円製造業の生産性向上に該当すれば利用可

補助金活用の試算例

カスタム型開発(800万円)の場合:

  • IT導入補助金(補助率3/4)を活用 → 補助額450万円(上限) → 自己負担350万円
  • ものづくり補助金(補助率2/3)を活用 → 補助額533万円 → 自己負担267万円
  • 月間削減額95万円で計算 → 自己負担350万円の場合、約4ヶ月で回収

申請時の注意点

  • 交付決定前の契約・発注は補助対象外。必ず交付決定を待ってから開発会社と契約すること
  • 公募期間は年度ごとに異なる。2026年度の公募開始時期を事前に確認しておく
  • 申請実績のある開発会社を選ぶと書類作成の負担が大幅に減る。GXOでも補助金申請のサポートを行っている

セクションまとめ:補助金を使えばカスタム型でも自己負担300万円前後に抑えられる可能性がある。「補助金を使うか使わないか」ではなく、「どの補助金が最も有利か」を比較検討すべきだ。


7. まとめ

BtoB EC(卸売・受発注)サイト構築の費用相場は、パッケージ型で100〜300万円、カスタム型で500〜1,500万円、フルスクラッチ型で1,000〜3,000万円だ。

しかし、本当に比較すべきは「構築費用の高さ」ではなく、「FAX・電話受注を続けるコスト」だ。毎月の転記作業、読み間違いの確認電話、誤出荷の対応、月末の深夜残業——これらの目に見えにくいコストは、BtoB ECの構築費用を確実に上回っている。

まずやるべきことは3つだ。

  1. 現状の受発注業務を棚卸しする(FAXの枚数、処理時間、ミス件数を計測する)
  2. パッケージ型で8割カバーできるかを検討する(カスタム・フルスクラッチは次の選択肢)
  3. 信頼できる開発会社に相談する(BtoB EC実績と業務ヒアリングの質で選ぶ)

BtoB ECは「IT投資」ではない。「FAXを読み間違えるリスク」「担当者が辞めたら業務が止まるリスク」「取引先に不便を強いているリスク」——これらを解消するための経営判断だ。

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8. よくある質問(FAQ)

Q1. BtoB ECサイトの構築費用はいくらが相場ですか?

パッケージ型で100〜300万円、カスタム型で500〜1,500万円、フルスクラッチ型で1,000〜3,000万円が2026年時点の相場です。取引先の数、単価条件の複雑さ、基幹システムとの連携要否によって大きく変わります。まずは3社以上から見積もりを取り、比較することを推奨します。

Q2. FAX・電話受注をすべてオンラインに切り替える必要がありますか?

一度にすべてを切り替える必要はありません。まず注文頻度の高い上位20社からオンライン受注に移行し、効果を確認してから順次拡大するのが現実的です。「FAXでも注文できるが、ECサイトからの注文を推奨する」という並行運用期間を設けることで、取引先の負担も軽減できます。

Q3. 取引先がパソコンに不慣れでも使えますか?

BtoB向けのパッケージ製品は、BtoCのECサイトよりも画面構成がシンプルに設計されています。過去に注文した商品をワンクリックで再発注できる機能があるため、日常的な発注作業はスマートフォンでも完了します。導入時に操作説明会を実施し、簡単な操作マニュアルを配布すれば、多くの取引先は1〜2週間で慣れます。

Q4. 補助金を使えば自己負担はいくらになりますか?

たとえばカスタム型開発(800万円)にIT導入補助金(補助率3/4、上限450万円)を活用した場合、自己負担は350万円です。ものづくり補助金(補助率2/3)なら自己負担は約267万円まで下がります。どの補助金が最適かは開発内容によって異なるため、申請経験のある開発会社に相談するのが確実です。

Q5. 構築後の運用コストはどのくらいかかりますか?

パッケージ型の場合、月額利用料3〜15万円が主な運用コストです。カスタム型・フルスクラッチ型の場合は、保守契約として年間開発費の15〜20%(カスタム型800万円なら年間120〜160万円)が目安になります。取引先の追加や単価改定など、日常的な運用作業は自社で行える管理画面を備えたシステムを選べば、ランニングコストを抑えられます。


参考資料

  • 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.html
  • 中小企業庁「2025年版中小企業白書」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
  • 経済産業省「デジタル化・AI導入補助金」 https://www.meti.go.jp/
  • IPA「IT導入補助金 公式サイト」 https://it-shien.smrj.go.jp/
  • 全国中小企業団体中央会「ものづくり補助金 公式サイト」 https://portal.monodukuri-hojo.jp/