「AI導入を経営層に提案したいが、書き方が分からない」「稟議書を書いたが財務部門で差し戻された」——情シス担当者・事業部リーダーから多い相談です。
社内のAI導入を稟議で通すには、現場担当・情シス・財務・経営層 4 階層の関心事を1本の提案書に統合する必要があります。本記事では、すべての階層を通すAI導入提案書の 10章構成 と、各章の書き方を解説します。
目次
稟議で落ちる提案書の3つのパターン
パターン1:技術中心で経営目線がない
「最新LLMで業務を変革」が中心で、定量効果・ROIが弱い。経営層・財務にとって投資判断材料が不足。
パターン2:定量効果が楽観的すぎる
「業務時間90%削減」「売上3倍」など、根拠のない試算が記載され、財務で精査されると破綻。
パターン3:リスク・代替案がない
「AI導入してダメだったらどうするか」が書かれていない。経営層は損切り判断材料を求めます。
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稟議を通す提案書の10章構成
| 章 | タイトル | 主な読み手 | 推奨ページ |
|---|---|---|---|
| 1 | エグゼクティブサマリー | 経営層 | 1〜2 |
| 2 | 背景と課題 | 経営層・財務 | 2〜3 |
| 3 | 提案するAIソリューション | 情シス・事業部 | 3〜5 |
| 4 | 期待効果(定量) | 経営層・財務 | 2〜3 |
| 5 | 投資総額・回収計画 | 財務 | 1〜2 |
| 6 | 実装スケジュール | 情シス・事業部 | 1〜2 |
| 7 | リスクと対策 | 経営層・情シス | 2〜3 |
| 8 | 比較検討(他案・他ベンダー) | 財務・情シス | 1〜2 |
| 9 | 体制・関係者 | 情シス | 1 |
| 10 | 補助金・税制活用 | 財務 | 1 |
合計15〜25ページが目安です。
章別の書き方とサンプル
第1章:エグゼクティブサマリー
1.1 提案要旨(3行)
営業事務をAIエージェントで50%自動化。
投資総額1,500万円、補助金活用で実投資750万円、回収期間18ヶ月。
既存業務継続に支障なし、PoC成功後に本番展開。
1.2 主な効果(数値)
- 営業1人あたり月20時間の事務工数削減
- 商談時間20%増、年間売上影響:3億円
- ROI 200%以上(3年累計)
第2章:背景と課題
2.1 業界動向
経済産業省「AI導入ガイドブック」(2024年4月公表)等の公的資料を引用。
競合の AI 活用状況、業界の AI 化進捗を記載。
2.2 自社の課題
現状の業務工数を時間単位で。経営層が「現状は持続不可能」と認識できる粒度。
2.3 課題放置のリスク
AIを入れない場合の3年後の状態を試算。営業力低下・採用難・退職リスク等。
第3章:提案するAIソリューション
3.1 ソリューション概要
AIエージェントで何をするか、3〜5の主要機能を明示。
3.2 既存システム連携
CRM、ERP、メール等の既存システムとの連携構成図。
3.3 利用シーン
日次・週次・月次の利用シーンを図解。
第4章:期待効果(定量)
4.1 工数削減
業務A:月50時間 → 月20時間(30時間削減)
業務B:月30時間 → 月10時間(20時間削減)
合計:月50時間 × 単価4,000円 = 月20万円相当
4.2 売上拡大
営業活動時間20%増 × 既存成約率 = 月XX件の追加成約見込み
平均単価XX万円 × XX件 = 月XX万円の売上増
4.3 リスク削減
人為ミス削減によるリスク回避効果(事故損失○○万円相当)
第5章:投資総額・回収計画
5.1 投資内訳
- 初期開発費:800万円
- 1年目運用費:500万円
- 教育研修費:100万円
合計:1,500万円
5.2 補助金活用
IT導入補助金:補助額600万円
実投資額:900万円
5.3 回収計画
月効果:100万円
回収期間:9ヶ月
第6〜10章
スケジュール、リスク対策、比較検討、体制、補助金活用を簡潔に。
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定量効果の試算方法
定量効果は「楽観試算」「中央値試算」「保守試算」の3パターンで記載します。
| パターン | 工数削減率 | 売上効果 | 採用基準 |
|---|---|---|---|
| 楽観 | 60〜80% | +30% | 上限値 |
| 中央値 | 40〜60% | +15% | 通常採用 |
| 保守 | 20〜40% | +5% | リスク試算 |
財務部門の精査では「中央値試算」と「保守試算」で投資回収できることが求められます。
リスク・失敗事例の書き方
「AI導入のリスク」を3レベルで記載します。
| レベル | リスク | 対策 |
|---|---|---|
| 高 | 業務担当者が使わずシャドーIT化 | 経営トップ宣言+週次レビュー |
| 中 | 精度不足で再開発になる | PoC期間で精度検証、ダメなら撤退 |
| 低 | 短期障害発生 | バックアップ運用への切替手順 |
「PoC期間中の撤退判断基準」を明記することが重要です。
稟議承認のための事前根回し
提案書を出す前の事前根回しで、稟議成功率が大きく変わります。
| 順序 | 相手 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 1 | 直属上司 | 提案内容のフィードバック |
| 2 | 情シス部長 | 技術面の事前合意 |
| 3 | 財務担当 | 投資金額・補助金の事前検証 |
| 4 | 関係事業部長 | 利用想定部門の同意 |
| 5 | 経営企画 | 経営戦略との整合確認 |
| 6 | 役員(事前) | 大まかな方向性の事前承認 |
| 7 | 稟議書提出 | 正式な稟議プロセス |
よくある質問
Q1. 提案書を1人で書くのは大変です。コンサルに依頼できますか?
可能です。認定IT導入支援事業者・AI導入コンサルが提案書作成支援を行うケースが多いです。
Q2. 提案書のページ数は何ページが適切ですか?
15〜25ページが目安です。50ページを超えると経営層が読まない傾向があります。
Q3. PoC費用も提案書に含めるべきですか?
含めます。PoC+本開発の段階見積を記載し、PoC失敗時の撤退判断基準を明記します。
Q4. 補助金が採択されなかった場合の対応も書くべきですか?
書きます。「補助金不採択時は実投資額が増加するが、ROIは18ヶ月以内に達成可能」のように代替計画を示します。
Q5. 財務部門の精査で頻出する質問は?
「他社事例の根拠」「楽観試算でない試算根拠」「不確実性に対するバッファ」「撤退基準」の4点が頻出です。
参考資料
- 経済産業省「AI導入ガイドブック」(2024年4月公表) https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/AIguideline.html
- 独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2024」 https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2024.html
- 中小企業庁「IT導入補助金2026」公募要領 https://www.it-hojo.jp/
- 中小企業庁「中小企業白書2025」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
