「この作業、何分で終わるべき?」
人によって言うことが違う。ベテランは「30分」、新人は「1時間」。基準がないから、効率が良いのか悪いのか判断できない。こうした悩みを抱える現場は少なくありません。
標準時間を設定することで、この問題を解決できます。
結論から言えば、標準時間は「基準」を作ることで、目標設定・異常検知・人員計画のすべてを可能にします。
目標ができる:「30分が標準」という基準があれば、達成感も改善意識も生まれる
異常に気づける:標準より大幅に時間がかかっていれば、問題を早期発見できる
人員計画が立てられる:処理量×標準時間で、必要人数を根拠をもって算出できる
この記事では、標準時間の基本から、決め方の3つの方法、現場での活用シーンまでを解説します。
標準時間とは
標準時間とは、「この作業を、標準的なスキルの人が、標準的な方法で行った場合にかかる時間」のことです。物流倉庫においては、ピッキング1行あたり30秒、検品1件あたり2分、梱包1件あたり3分といった形で設定されます。
標準時間があれば、「この作業は○分で終わるべき」という基準ができます。基準がなければ、作業が速いのか遅いのか、効率が良いのか悪いのかを判断する根拠がありません。標準時間は、現場改善のすべての出発点となる重要な指標です。
なぜ標準時間が必要か

標準時間を設定することで、現場管理の質が大きく変わります。ここでは、標準時間が必要な4つの理由を解説します。
理由①:目標ができる
標準時間があれば、作業者にとって明確な目標ができます。「この作業は30分が標準。今日は25分で終わった」という形で、自分の作業を客観的に評価できるようになります。目標があれば達成感も生まれ、作業者のモチベーション向上にもつながります。
理由②:異常に気づける
標準時間より大幅に時間がかかっていれば、何か問題があるはずです。「標準30分の作業に1時間かかっている」という状況がデータで見えれば、原因を調査し、対策を打つことができます。異常を早期に発見できることは、品質管理の面でも重要です。
理由③:必要人数を計算できる
標準時間があれば、必要人数を根拠をもって計算できます。たとえば、今日の処理量が1,000件、標準時間が1件あたり3分であれば、総作業時間は3,000分(50時間)となり、8時間勤務で割ると約6人が必要という計算ができます。感覚ではなくデータに基づいた人員計画が可能になります。
理由④:見積もりができる
3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者の場合、荷主への見積もりに標準時間を使えます。「この作業は1件○分かかるので、○円です」という根拠のある見積もりができれば、価格交渉にも説得力が生まれます。
標準時間の決め方
標準時間の決め方は、大きく3つに分かれます。現場の状況やデータの有無に応じて、最適な方法を選択してください。
方法①:実測する
実際に作業を測定し、標準時間を決める方法です。標準的なスキルのスタッフを選び、作業を複数回測定して平均値を算出します。その際、休憩や疲労による効率低下を考慮した余裕率(通常10〜20%)を加味することがポイントです。
この方法のメリットは、実態に即した数値が得られることと、現場の納得感が高いことです。一方で、測定に時間がかかること、測定者によってバラつきが出る可能性があることがデメリットとして挙げられます。新しい作業を導入する際や、既存の標準時間を見直す際に有効な方法です。
方法②:実績データから算出する
過去の作業実績データから、標準時間を算出する方法です。過去の作業実績を集め、処理量と作業時間から1件あたりの時間を計算します。全体の平均ではなく、上位30%の実績を標準とするなど、目標値として適切な水準を設定することが重要です。
この方法のメリットは、データがあればすぐに算出できること、多くのサンプルから算出できることです。ただし、実績にムダが含まれている可能性があること、データの精度に依存することには注意が必要です。すでに作業実績を記録している現場であれば、この方法が効率的です。
方法③:業界標準を参考にする
業界の標準値を参考にする方法です。物流業界では、作業別の標準時間の目安が公開されている場合があり、他社との比較や参考値として活用できます。
ただし、自社の実態と合わない可能性があること、商材や作業環境の違いが反映されないことには注意が必要です。まずは業界標準を参考に仮の標準時間を設定し、その後実測や実績データで調整していくアプローチが現実的です。
標準時間設定のポイント

標準時間を設定する際には、いくつかの重要なポイントがあります。
ポイント①:余裕率を加味する
測定した時間をそのまま標準時間にすると、現場は常にフル稼働を求められることになり、現実的ではありません。疲労による効率低下、小休憩、準備・後片付けなどを考慮し、10〜20%の余裕率を加味することが一般的です。
ポイント②:定期的に見直す
標準時間は、一度決めたら終わりではありません。作業方法が変わった、商材が変わった、設備が更新されたなど、現場に変化があれば標準時間も見直す必要があります。少なくとも年に1回は、現状と標準時間に乖離がないかを確認しましょう。
ポイント③:現場と合意する
一方的に決めた標準時間は、現場の反発を招きます。「この標準時間、厳しすぎる」「実態と合っていない」という声が上がれば、せっかく設定した標準時間も形骸化してしまいます。現場と話し合い、納得感のある数値を設定することが、継続的な運用のカギです。
標準時間設定でよくある失敗パターン
標準時間の設定・運用でつまずきやすいポイントを確認しておきましょう。
1つ目は、ベテラン作業者の実績を標準にしてしまうケースです。熟練者の作業速度を基準にすると、多くの作業者が標準を達成できず、モチベーション低下につながります。標準的なスキルの作業者を基準にすることが重要です。
2つ目は、余裕率を加味しないケースです。理論上の最速時間を標準にすると、現場は常に追われる状態になり、品質低下やミスの増加を招きます。
3つ目は、一度決めたら放置してしまうケースです。現場の状況は変化するため、標準時間も定期的に見直す必要があります。
4つ目は、現場に説明せず一方的に導入するケースです。標準時間の目的や根拠を説明しないと、「上から押し付けられたノルマ」と受け取られ、反発を招きます。
5つ目は、標準時間を設定しただけで活用しないケースです。設定することが目的化してしまい、日報との比較や人員計画に活かさなければ、意味がありません。
標準時間の活用例
設定した標準時間は、以下のような場面で活用できます。
活用例①:日報との比較
日々の作業実績と標準時間を比較することで、作業の効率を可視化できます。たとえば、ピッキング100行の標準時間が50分のところ、実績が45分であれば効率的に作業できています。一方、検品50件の標準時間が100分のところ、実績が120分であれば、何か問題が起きている可能性があります。差異を可視化することで、改善すべきポイントが明確になります。
活用例②:人員計画
標準時間を使えば、必要人数を事前に計算できます。ピッキング500行(標準時間0.5分/行)で250分、検品200件(標準時間2分/件)で400分、梱包200件(標準時間3分/件)で600分、合計1,250分(約21人時)が必要という計算ができます。21人時を8時間勤務で割ると、約3人が必要という人員計画が立てられます。
ある物流センターでは、標準時間を活用した人員計画を導入した結果、過剰配置が解消され、月平均の残業時間が20時間から8時間に削減されました。根拠のある人員計画は、コスト削減にも直結します。
まとめ
標準時間があれば、「基準」ができます。基準があれば、良いのか悪いのか判断できる。基準があれば、目標が設定できる。基準があれば、異常に気づける。
まずは、主要な作業から標準時間を設定してみましょう。実測でも、実績データからの算出でも、まずは「仮の標準」を決めることが第一歩です。運用しながら調整していけば、現場に合った標準時間ができあがります。
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まずは15分、お気軽にご相談ください。
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