物流倉庫の安全管理・コンプライアンスで押さえるべきポイントは、①労働時間の適正管理、②安全衛生教育の実施と記録、③派遣法の遵守の3点です。これらを怠ると、労働基準監督署からの是正勧告、労災事故発生時の責任追及、さらには行政処分につながるリスクがあります。
本記事では、物流倉庫の現場責任者・管理者が「明日から何をすればいいか」を具体的に解説します。
なぜ今、安全管理・コンプライアンスが重要なのか

物流倉庫を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。
働き方改革関連法の施行により、労働時間の上限規制が強化されました。物流業界では2024年問題として話題になりましたが、倉庫内作業においても同様に、時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されています。
また、人手不足を背景に派遣スタッフや契約社員の比率が高まる中、派遣法や労働契約法への対応も欠かせません。さらに、フォークリフトやコンベヤなど重機・設備を扱う現場では、一瞬の油断が重大事故につながります。
コンプライアンス違反が発覚した場合、是正勧告だけでなく、企業名の公表や取引停止といった事業継続に関わるリスクも生じます。
押さえるべき3つのポイント

ポイント①:労働時間管理
働き方改革により、労働時間の上限規制が厳格化されています。物流倉庫で特に注意すべき点は以下の通りです。
36協定の締結と届出
時間外労働を行わせるには、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。届出なしに時間外労働をさせた場合、労働基準法違反となります。
時間外労働の上限
原則として月45時間・年360時間が上限です。繁忙期などの特別条項を設ける場合でも、年720時間、複数月平均80時間、単月100時間未満という上限があります。
労働時間の正確な記録
タイムカード、ICカード、勤怠管理システムなど客観的な方法で記録することが求められています。手書きの出勤簿のみでは、記録の信頼性が問われる場合があります。
物流倉庫でよくある問題
繁忙期の残業時間超過、休憩時間の未取得、早出・居残りの未記録などが指摘されやすいポイントです。特に、派遣スタッフと自社社員で記録方法が異なると、管理が煩雑になりミスが発生しやすくなります。
ポイント②:安全衛生
物流倉庫は、フォークリフト、コンベヤ、高所棚など、危険を伴う設備が多い職場です。労働安全衛生法に基づく対策が必要です。
資格管理の徹底
フォークリフトの運転には技能講習修了証が必要です。無資格者による運転は法令違反であり、事故が発生した場合には事業者の責任が問われます。資格の有効期限はありませんが、社内で定期的に技能確認を行うことが推奨されます。
安全教育の実施と記録
雇入れ時の安全衛生教育は法定義務です。また、作業内容の変更時にも教育が必要です。実施した教育の内容、日時、受講者を記録し、3年間保管することが求められています。
危険予知活動(KY活動)の実施
作業前に「どのような危険があるか」を確認するKY活動は、労災防止に効果的です。毎日の朝礼や作業開始前のミーティングで実施し、記録を残しておきましょう。
ヒヤリハット報告の仕組み化
「事故には至らなかったが危険だった」事例を収集・分析することで、重大事故を未然に防げます。報告しやすい雰囲気づくりと、報告内容を改善に活かす仕組みが重要です。
ポイント③:派遣法の遵守
派遣スタッフを受け入れている物流倉庫では、労働者派遣法への対応が必要です。
派遣先責任者の選任
派遣スタッフを受け入れる事業所には、派遣先責任者を選任する義務があります。派遣スタッフ100人につき1人以上の選任が必要です。
抵触日の管理
同一の組織単位で派遣スタッフを受け入れられる期間は原則3年です。この期限(抵触日)を過ぎて受け入れを続けると、派遣法違反となります。派遣元から通知される抵触日を確実に管理しましょう。
派遣先管理台帳の作成・保管
派遣スタッフごとに、氏名、派遣元、業務内容、就業日・就業時間などを記載した管理台帳を作成し、契約終了後3年間保管する義務があります。
二重派遣の禁止
派遣スタッフを、さらに別の事業所に派遣することは禁止されています。グループ会社間での人員融通などで、意図せず二重派遣に該当してしまうケースがあるため注意が必要です。
記録管理の実践方法
コンプライアンスを守るためには、「適切な記録」が基本です。何かあった時に「説明できる状態」を維持することが、リスク管理の第一歩です。
記録すべき項目と保管期間
記録項目 | 保管期間 | 備考 |
|---|---|---|
労働時間(タイムカード等) | 5年間(当分の間3年間) | 客観的記録が必要 |
賃金台帳 | 5年間(当分の間3年間) | 各人別に作成 |
安全衛生教育の記録 | 3年間 | 実施日・内容・受講者 |
健康診断結果 | 5年間 | 個人票として保管 |
派遣先管理台帳 | 契約終了後3年間 | 派遣スタッフごとに作成 |
36協定届 | 届出後3年間 | 有効期間の管理も必要 |
Excel管理の限界
多くの現場では、労働時間や資格情報をExcelで管理しています。しかし、以下のような課題が生じやすくなります。
派遣会社ごとに異なるフォーマットで情報が届き、統合に手間がかかる
資格の有効期限切れを見落とす
複数人で編集する際にデータが破損する
監査時に必要な情報をすぐに取り出せない
これらの課題を解決するために、人員管理に特化したクラウドサービスを導入する倉庫が増えています。
よくある違反事例とリスク
物流倉庫で発生しやすい違反事例を把握しておくことで、自社のリスクを点検できます。
労働時間管理の違反
ある物流センターでは、繁忙期に36協定の上限を超える残業が常態化していました。労働基準監督署の調査で是正勧告を受け、未払い残業代の支払いと再発防止策の報告を求められました。
安全教育の未実施
新人作業員への安全教育を省略していた倉庫で、入社2週目の作業員がフォークリフトとの接触事故で負傷。教育記録がなかったため、事業者の安全配慮義務違反が認定されました。
派遣法違反
抵触日の管理を怠り、3年を超えて同一の派遣スタッフを受け入れていたケース。労働局の調査で指導を受け、直接雇用への切り替えを求められました。
自己点検チェックリスト
自社の現状を確認するためのチェックリストです。「いいえ」がある項目は、優先的に改善を検討しましょう。
36協定を締結・届出し、有効期間内である
労働時間を客観的な方法(タイムカード、勤怠システム等)で記録している
時間外労働が月45時間・年360時間の上限を超えていない
雇入れ時の安全衛生教育を実施し、記録を保管している
フォークリフト運転者の資格証を確認・管理している
派遣先責任者を選任している
派遣スタッフの抵触日を把握・管理している
派遣先管理台帳を作成・保管している
KY活動やヒヤリハット報告の仕組みがある
各種記録の保管期間を把握し、適切に保管している
まとめ
物流倉庫の安全管理・コンプライアンスは、「記録」が基本です。労働時間、安全教育、資格、派遣管理、いずれも「実施した」だけでなく「記録として残っている」ことが重要です。
何かあった時に説明できる状態を維持することが、現場を守り、会社を守ることにつながります。まずは上記のチェックリストで自社の現状を確認し、不足している部分から対応を進めていきましょう。
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