SaaSかオンプレミスか——2026年の最適解を探る

この記事でわかること
迷ったら「機密性×カスタム要否×運用体制」で判断する
コストは初期費用ではなく5年間のTCOで比較する
セキュリティは責任分界点(権限・ログ・監査)の設計が鍵
現実解として「ハイブリッド運用」が有力な選択肢
「クラウドに移行すべきか、自社サーバーを維持すべきか」。この問いに悩む経営者やIT担当者は少なくありません。本記事では、SaaSとオンプレミスをコスト・セキュリティ・カスタマイズ性の3軸で比較し、2026年現在の選定基準をお伝えします。結論として、どちらか一方が正解ではなく、自社の業務特性に応じた「ハイブリッド運用」も有力な選択肢です。
総務省「令和6年版情報通信白書」によると、国内企業のクラウドサービス利用率は77.7%に達しました。一方で、基幹システムや機密データについてはオンプレミス環境を維持する企業も多く、「使い分け」の時代に入っています。
SaaSとオンプレミスの基本的な違い
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由でソフトウェアを利用し、月額や年額の料金を支払うサービス形態です。オンプレミス(On-Premise)とは、自社でサーバーやソフトウェアを保有し、自社施設内で運用する形態です。そしてハイブリッド運用とは、業務特性に応じてSaaSとオンプレミスを組み合わせて使い分ける構成を指します。
両者の違いは「所有」と「利用」という概念の違いに集約されます。オンプレミスは資産として所有するモデル、SaaSはサービスとして利用するモデルです。この違いが、コスト構造やセキュリティ対策、カスタマイズの自由度に影響を与えます。
コスト比較——TCOで見る5年間の総費用
コスト比較で重要なのはTCO(総所有コスト)の視点です。オンプレミスの場合、中堅企業が基幹システムを構築するには初期投資として1,000万円から3,000万円程度が必要です(ユーザー数や機能範囲により変動)。加えて、年間の運用保守費用として初期投資の15〜20%程度が毎年発生し、5年程度でサーバー機器の更新も求められます。
SaaSの場合、初期費用は数十万円から数百万円程度に収まりますが、月額利用料が継続的に発生します。中堅企業であれば年間600万円から2,400万円程度の費用が発生するケースもあります。なお、SaaSでは契約更新時の値上げ条項にも注意が必要です。
IDC Japan「国内クラウドインフラストラクチャサービス市場予測、2024年〜2028年」(2024年9月発表、JPJ52542024)によると、5年間のTCOで比較した場合、ユーザー数100名程度の企業ではSaaSのほうがコストメリットが出やすい傾向にあります。一方、500名を超える大規模利用や7年以上の長期運用ではオンプレミスが有利になるケースも報告されています。
セキュリティ比較——守るべきものは何か
「クラウドはセキュリティが不安」という認識は必ずしも正確ではありません。IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」によると、ランサムウェア攻撃やサプライチェーン攻撃が上位に挙げられており、これらはオンプレミス環境でも同様にリスクとなります。
SaaSの強みは、専門チームによる24時間365日の監視体制と、最新のセキュリティパッチの迅速な適用です。一方、オンプレミスの強みは、データの所在を完全にコントロールできる点です。法規制により特定のデータを国内に保管する義務がある業種や、監査対応で厳格なログ管理が求められる場合では、この点が決定的に重要になります。
セキュリティで重要なのは「責任分界点」の明確化です。SaaSでは、インフラのセキュリティはベンダーが責任を持ちますが、アカウント管理やアクセス権限の設定、ログの保管期間は利用企業の責任となります。SLA(サービスレベル契約)で稼働率や障害時の対応を確認することも欠かせません。
カスタマイズ性比較——業務に合わせるか、業務を合わせるか
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オンプレミスでは、自社の業務プロセスに合わせてシステムを自由にカスタマイズできます。ただし、カスタマイズが増えるほど開発コストは膨らみ、将来のバージョンアップ時に互換性の問題が発生するリスクも高まります。RFP(提案依頼書)作成時には、カスタマイズ範囲と保守コストの関係を明確にしておくことが重要です。
SaaSでは、ベンダーが提供する機能の範囲内での利用が基本となります。しかし、この制約は必ずしもデメリットではありません。SaaSには多くの企業の利用実績から生まれたベストプラクティスが組み込まれており、標準機能に業務を合わせることで業務改善につながるケースも少なくありません。
どちらを選ぶべきか——選定早見表
SaaSが向いているのは、初期投資を抑えたい企業、ユーザー数100名以下の企業、汎用的な業務(グループウェア、会計、顧客管理など)を対象とする場合、そしてIT専任者が少なく運用負荷を軽減したい企業です。
オンプレミスが向いているのは、長期運用(7年以上)を前提とする企業、ユーザー数500名以上の大規模利用、法規制によりデータの国内保管が必須の業種、そして独自の業務プロセスに合わせた高度なカスタマイズが必要な場合です。
どちらか一方に決めきれない場合は、汎用業務にSaaS、基幹システムにオンプレミスを組み合わせたハイブリッド運用が有効です。ただし、複数環境の管理負荷やデータ移行の設計には専門的な知見が求められます。BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)の観点からも、どちらの環境にどのデータを置くかを慎重に検討してください。
自社で今すぐ取り組める5つのステップ
御社でSaaSとオンプレミスの選定を進めるにあたり、今すぐ取り組めるアクションを整理します。
まず、現行システムの棚卸しとして、利用中のシステム一覧、役割、データの機密性レベル、運用コストを整理してください。成果物としてシステム棚卸し表を作成し、移行候補を可視化します。
次に、業務要件の優先順位を明確にします。コスト削減、セキュリティ、柔軟性のどれを最優先するか、経営層を含めて議論してください。成果物として要件優先度一覧を作成します。
三つ目として、5年間のTCO試算を行います。オンプレミス維持とSaaS移行のコストを、人件費・保守費・更新費・データ移行費・SaaS値上げリスクも含めて比較してください。成果物としてTCO試算表を作成します。
四つ目に、セキュリティ要件の整理です。取り扱うデータの種類、適用される法規制、取引先からの要求事項、監査対応の必要性を確認します。成果物としてセキュリティ要件チェックリストを作成します。
最後に、段階的な移行計画の策定として、リスクの低いシステムから順に移行することで、知見を蓄積しながら進めることができます。成果物として移行計画書(スケジュール・体制・リスク対応)を作成します。
最適なシステム構成の実現に向けて
SaaSとオンプレミスの選定は、経営戦略に関わる重要な意思決定です。GXOでは、180社以上の企業様のシステム構築・クラウド移行を支援してきた実績があります。現状分析から要件定義、最適な構成の提案、導入後の運用支援まで一気通貫でサポートいたします。
まとめ
SaaSは初期投資を抑えられ、運用負荷も軽減できますが、長期運用ではオンプレミスが有利になるケースもあります。セキュリティ面では、専門家による運用という点でSaaSに強みがありますが、データの所在をコントロールしたい場合はオンプレミスが適しています。自社の優先順位を明確にし、必要に応じてハイブリッド運用も視野に入れた最適解を見つけてください。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaSとオンプレミス、どちらがセキュリティ的に安全ですか? A. 一概には言えません。SaaSは専門チームによる24時間監視が強みですが、オンプレミスはデータの所在を完全にコントロールできます。重要なのは、どちらを選んでも「責任分界点」を明確にし、自社の責任範囲を適切に管理することです。
Q. SaaSに移行すると、コストは本当に下がりますか? A. ユーザー数100名以下の企業では、5年間のTCOでSaaSが有利になる傾向があります。ただし、500名以上の大規模利用や7年以上の長期運用では、オンプレミスのほうがコストメリットが出るケースもあります。初期費用だけでなく、TCO全体で比較することが重要です。
Q. ハイブリッド運用のデメリットは何ですか? A. 複数環境を管理する運用負荷が増えること、SaaSとオンプレミス間のデータ連携に追加開発が必要になること、セキュリティポリシーの一貫性を保つことが難しくなることが挙げられます。これらを解決するには、全体最適の視点でシステム構成を設計できる専門的な知見が求められます。
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