「せっかく育てたのに辞めてしまう」「また人が抜けて、現場が回らない」——物流倉庫の現場では、スタッフの離職が慢性的な課題となっています。採用コストをかけて入社させ、時間をかけて育成しても、気づけば退職届を出されている。この繰り返しに疲弊している現場責任者は少なくありません。
結論から言えば、離職を防ぐには「辞める原因」を正しく理解し、先回りして手を打つことが重要です。
最優先で取り組むべきこと:入社直後90日間の手厚いフォローと、日常的なコミュニケーションの仕組み化
中長期で整備すべきこと:キャリアパスの可視化と、公平な評価制度の構築
継続的に見直すべきこと:職場環境・待遇の改善と、退職者からのフィードバック収集
この記事でわかること
離職の本当の原因:表面的な退職理由と本音の違い、物流倉庫特有の離職要因
定着率を高める7つの施策:入社直後のオンボーディングから評価制度まで、現場で実践できる具体策
失敗しないためのチェックリスト:自社の状況を診断し、優先順位をつけるためのセルフチェック項目
本記事では、物流倉庫の現場で実際に効果が出ている定着率向上・離職率改善の施策を7つ厳選して解説します。
倉庫スタッフが辞める本当の理由

離職を防ぎ、人材定着を実現するためには、まず「なぜ辞めるのか」を正確に把握する必要があります。表面的な退職理由と、本音の理由は異なることが多いものです。
職場環境への不満
物流倉庫の現場では、夏場の暑さや冬場の寒さ、重労働による身体的な負担が大きな離職要因となります。空調設備が不十分な倉庫では、特に夏場に体調を崩すスタッフが増え、それがきっかけで退職を考え始めるケースが少なくありません。
ある物流センターでは、大型扇風機とスポットクーラーを増設し、休憩スペースにエアコン付きの部屋を設けたところ、夏場の離職率が前年比で40%減少しました。設備投資の費用は発生しますが、採用・教育コストを考えれば十分にペイする投資と言えます。
また、休憩室の環境や、トイレの清潔さといった日常的な部分も意外と重要です。「こんな環境で働きたくない」という不満は、口に出さないまま蓄積していきます。
人間関係の問題
どの職場でも人間関係は離職理由の上位に挙がりますが、物流倉庫では特に「古参スタッフとの軋轢」「派遣社員と正社員の間の壁」といった構造的な問題が発生しやすい傾向があります。
繁忙期に急遽入った新人が、ベテランスタッフから厳しく当たられて数日で辞めてしまう——このパターンは多くの現場で見られます。ベテラン側も悪気があるわけではなく、忙しさから余裕がなくなっているだけですが、新人にとっては「ここには居場所がない」と感じる原因になります。
将来への不安
「このまま倉庫作業を続けていて、自分の将来はどうなるのか」という漠然とした不安も、離職の大きな要因です。特に20代〜30代の若手スタッフは、スキルアップやキャリアアップの道筋が見えないと、早期に転職を考え始めます。
物流業界は慢性的な人手不足であり、経験を積めばリーダーや管理職への道が開けるのですが、その情報が現場スタッフに伝わっていないケースが多いのです。
待遇への不満
給与水準はもちろん、シフトの希望が通りにくい、残業が多い、有給が取りにくいといった待遇面の不満も見過ごせません。特に物流倉庫では繁忙期と閑散期の差が激しく、繁忙期に休みが取れない状況が続くと、「このままでは体がもたない」と離職につながります。
定着率を高める7つの施策

ここからは、実際に効果が出ている定着率向上の施策を7つ紹介します。すべてを一度に実施する必要はありません。自社の状況に合わせて、優先順位をつけて取り組んでください。
施策①:入社90日間の「オンボーディングプログラム」を整備する
離職が最も多いのは入社直後です。厚生労働省の調査によると、入社1年以内の離職者のうち、約3割が入社3ヶ月以内に退職しています。逆に言えば、この90日間を乗り越えれば、定着率は大きく改善します。
具体的には、以下のような施策が効果的です。入社初日にはオリエンテーションを実施し、会社のルールや現場のルールをしっかり伝えます。最初の1週間は専属のトレーナーをつけ、マンツーマンで業務を教えます。2週目以降も週1回は面談の時間を設け、困っていることがないか確認します。1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後には節目面談を実施し、不安や課題を早期に拾い上げます。
ある物流会社では、この90日間プログラムを導入した結果、入社3ヶ月以内の離職率が28%から9%に低下しました。プログラムの運用には一定の工数がかかりますが、採用・教育コストの削減効果は絶大です。
施策②:日常的なコミュニケーションを仕組み化する
「何かあったら言ってね」だけでは、スタッフは本音を話してくれません。コミュニケーションは仕組み化することで、初めて機能します。
効果的な方法として、まず朝礼・終礼での「ひと言共有」があります。今日の目標や昨日あった良いことを一人ひと言ずつ共有するだけで、チームの一体感が生まれます。次に、月1回の「1on1ミーティング」も有効です。15分程度で構いませんので、上司と部下が1対1で話す時間を定期的に設けます。業務の話だけでなく、体調やプライベートの話も含めて、気軽に話せる関係性を作ります。さらに、匿名で提出できる「改善提案ボックス」を設置するのも一つの手です。面と向かっては言いにくいことも、匿名なら伝えやすくなります。
施策③:職場環境を物理的に改善する
前述の通り、物流倉庫の物理的な環境は離職に直結します。予算の許す範囲で、以下の改善を検討してください。
暑さ・寒さ対策として、スポットクーラーやジェットヒーターの増設、空調服の支給などがあります。休憩環境の改善としては、休憩室へのエアコン設置、給湯設備の整備、清潔なトイレの維持などです。身体負担の軽減には、パワーアシストスーツの導入、台車やハンドリフトの増設、作業台の高さ調整などが挙げられます。
「設備投資にお金をかける余裕がない」という声もあるかもしれません。しかし、1人の離職にかかるコスト(採用費、教育費、生産性低下による損失)は、少なく見積もっても50万円〜100万円と言われています。環境改善への投資は、中長期的には必ずペイします。
施策④:キャリアパスを明確に示す
「この会社で働き続けたら、どうなれるのか」を可視化することは、定着率向上に大きく寄与します。
具体的には、等級制度やスキルマップを整備し、「このスキルを身につければ次のステップに進める」という道筋を明確にします。リーダー候補には外部研修への参加機会を設け、「この会社は自分の成長に投資してくれている」と感じてもらいます。また、年に1〜2回は上長との面談でキャリアについて話し合う機会を設けます。
ある配送センターでは、スキル評価シートを導入し、習得スキルに応じて時給がアップする仕組みを作ったところ、スタッフのモチベーションが向上し、離職率が年間で15%改善しました。
施策⑤:公平で透明な評価制度を構築する
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「頑張っても報われない」「なぜあの人が昇給したのか分からない」という不満は、離職の大きな原因になります。評価制度は公平で、かつ透明であることが重要です。
評価基準を明文化し、全スタッフに周知します。評価結果はフィードバック面談で丁寧に説明し、納得感を持ってもらいます。「頑張れば報われる」という実感を持てる仕組みを作ることが、定着率向上の鍵です。
施策⑥:働き方の柔軟性を高める
ライフステージの変化に対応できる柔軟な働き方を用意することも、定着率向上に効果的です。
シフトの希望を可能な限り反映する仕組みとして、希望休の申請ルールを明確化し、公平に運用します。育児や介護との両立支援として、時短勤務や曜日固定シフトなど、個別の事情に対応できる選択肢を用意します。また、有給取得の促進として、有給が取りやすい雰囲気を作り、取得率を管理指標に入れることも重要です。
「シフトが自由に組めない」という物流現場の制約はありますが、できる範囲で柔軟性を高める努力は、スタッフに「この会社は自分のことを大切にしてくれている」というメッセージを伝えます。
施策⑦:退職者からのフィードバックを収集・活用する
すでに辞めてしまった人から学ぶことも重要です。退職者へのインタビューや簡易アンケートを実施し、本音の退職理由を収集します。
在職中は言いにくかった本音も、退職が決まった後なら話してくれることがあります。そこから得られた情報を分析し、同じ理由での離職を防ぐ施策を講じます。
定着率改善のためのセルフチェックリスト
自社の状況を確認するために、以下のチェックリストをご活用ください。
コミュニケーション面
入社90日間のフォロー体制が整備されているか
定期的な1on1ミーティングが実施されているか
スタッフが気軽に相談できる雰囲気があるか
環境・待遇面
作業環境(暑さ・寒さ・清潔さ)に問題はないか
休憩室やトイレの環境は適切か
シフト希望は可能な限り反映されているか
有給休暇は取得しやすい雰囲気があるか
キャリア・評価面
キャリアパスが明確に示されているか
評価基準が明文化され、周知されているか
評価結果のフィードバック面談を実施しているか
頑張りが報われる仕組みがあるか
改善サイクル
退職者へのインタビューを実施しているか
離職率のデータを定期的に分析しているか
分析結果を施策に反映しているか
チェック後の次のアクション例 チェックが3つ以下の項目があれば、その領域から優先的に改善に着手してください。まずは「入社90日間のフォロー体制」と「定期的な1on1」の2つから始めることをおすすめします。
よくある失敗パターンと対策
定着率向上に取り組む際に陥りがちな失敗パターンを紹介します。
NG例①:「とりあえず時給を上げれば解決する」という考え
待遇改善は重要ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。時給を上げても、人間関係や職場環境の問題が解消されなければ、いずれ離職は発生します。給与は「衛生要因」であり、それだけでは「動機づけ要因」にはならないのです。
NG例②:施策を導入するだけで満足してしまう
「1on1を始めました」「評価制度を作りました」と言いながら、形骸化しているケースは少なくありません。施策は導入して終わりではなく、継続的に運用し、効果を検証し、改善し続けることが重要です。
NG例③:現場の声を聞かずにトップダウンで進める
本社や管理部門が机上で考えた施策が、現場の実態と乖離しているケースもよくあります。施策を検討する際は、必ず現場スタッフの声を聞き、実態に即した内容にすることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 定着率向上の施策は、どれくらいで効果が出ますか?
A. 施策によって異なりますが、入社90日間のオンボーディングプログラムは3〜6ヶ月で効果が見え始めます。職場環境の改善は即効性がありますが、評価制度やキャリアパスの整備は1年以上かけて浸透させる必要があります。
Q. 予算が限られている場合、何から始めるべきですか?
A. コストをかけずに始められる「1on1ミーティング」と「入社直後のフォロー強化」から着手することをおすすめします。これだけでも早期離職率は大きく改善します。
Q. 派遣スタッフの定着率向上にも効果がありますか?
A. はい、効果があります。特にコミュニケーション面の施策(1on1、声かけ、改善提案ボックス)は、雇用形態に関わらず有効です。派遣会社とも連携し、情報共有を密にすることで、さらに効果が高まります。
まとめ
離職防止は、一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、日々のコミュニケーションと環境改善の積み重ねが、確実に定着率を高めていきます。
本記事で紹介した7つの施策を参考に、まずは自社でできることから始めてみてください。最初から完璧を目指す必要はありません。小さな改善を積み重ねることで、「辞めたくない職場」は必ず作れます。
倉庫の人材定着・離職率改善は、現場の生産性向上と直結しています。ぜひ本記事のチェックリストを活用し、自社の課題を可視化するところから始めてください。
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