物流倉庫の品質管理とは、誤出荷・破損・出荷遅延などのミスを防ぎ、顧客満足度と業務効率を維持するための取り組みです。本記事では、品質問題の原因分析から再発防止策の定着まで、現場で実践できる改善サイクルを4ステップで解説します。
物流倉庫でよくある品質問題
物流倉庫で発生する品質問題は、大きく4つのカテゴリに分類できます。それぞれの特徴と影響を理解することが、改善の第一歩です。
誤出荷(商品違い・数量違い)
誤出荷は、物流倉庫で最も多い品質問題のひとつです。商品違い(別の商品を出荷)と数量違い(個数の過不足)の2種類があり、どちらも顧客からのクレームに直結します。
誤出荷が発生すると、正しい商品の再発送コスト、誤出荷商品の回収コスト、顧客対応の人件費など、1件あたり数千円から数万円の損失が発生します。さらに、取引先からの信頼低下により、契約解除につながるケースもあります。
破損
商品の破損は、入荷時、保管中、出荷作業中のいずれかで発生します。特に多いのは、フォークリフトでの荷役作業中や、ピッキング時の落下によるものです。
破損が発生すると、商品原価の損失に加え、代替品の手配、顧客への謝罪対応が必要になります。食品や精密機器など、破損に敏感な商品を扱う倉庫では、特に注意が必要です。
出荷遅延
出荷遅延は、作業の遅れや在庫の欠品により、予定日時に出荷できない問題です。EC物流では「翌日届く」ことが当たり前になっており、遅延は顧客満足度に大きく影響します。
遅延の原因は、人員不足、作業効率の低下、在庫管理のミスなど多岐にわたります。繁忙期に遅延が集中する傾向があり、事前の人員計画が重要です。
入荷時のミス
入荷検品でのミスは、後工程すべてに影響を及ぼします。数量の数え間違い、ロケーションへの格納ミス、ロット番号の登録ミスなどが代表的です。
入荷時のミスは発見が遅れやすく、出荷時に初めて発覚することも少なくありません。その場合、原因特定に時間がかかり、対策も後手に回りがちです。
品質問題が発生する4つの原因

品質問題の原因を正しく理解することで、効果的な対策を立てることができます。
ヒューマンエラー
人間が作業する以上、ミスをゼロにすることはできません。しかし、ミスが起きやすい状況を放置すれば、エラー率は高くなります。
ヒューマンエラーが起きやすい状況として、以下が挙げられます。
類似商品が隣接して保管されている
作業者の疲労が蓄積している(長時間労働、休憩不足)
作業スピードを優先しすぎている
確認工程がスキップされている
マニュアル・手順書の不備
マニュアルが存在しない、または内容が古い場合、作業者ごとにやり方がバラバラになります。これが品質のばらつきにつながります。
よくある問題として、「マニュアルはあるが誰も見ていない」「例外対応の手順が書かれていない」「更新されておらず現状と合っていない」などがあります。
教育・訓練の不足
新人作業者への教育が不十分だと、基本的なミスが繰り返されます。また、ベテラン作業者でも、新しい商品や作業手順の変更に対応できていないケースがあります。
教育不足の兆候として、「同じ人が同じミスを繰り返す」「ベテランと新人で作業品質に大きな差がある」「なぜそうするのか理由を説明できない」といった状況が見られます。
作業環境の問題
照明が暗い、通路が狭い、温度管理が不十分など、作業環境の問題も品質に影響します。
環境要因による品質問題の例として、以下が挙げられます。
照明不足でラベルの読み間違いが発生
通路が狭くフォークリフトが商品に接触
夏場の高温で作業者の集中力が低下
騒音で指示が聞き取れない
品質改善の4ステップ

品質問題を根本から解決するには、場当たり的な対応ではなく、体系的な改善サイクルを回すことが重要です。以下の4ステップで進めましょう。
ステップ1:データで問題を可視化する
改善の第一歩は、品質問題を数値で把握することです。「なんとなく多い」ではなく、具体的なデータを収集します。
記録すべき項目
発生日時
問題の種類(誤出荷、破損、遅延など)
発生場所(どのエリア、どのロケーション)
担当者
対象商品
発見者・発見タイミング
分析のポイント
収集したデータをグラフ化し、傾向を分析します。たとえば、「月曜日の午後に誤出荷が多い」「特定のロケーションで破損が集中している」といったパターンが見えてきます。
パレート図を使えば、どの問題から優先的に対策すべきかが明確になります。全体の80%の問題が、20%の原因から発生していることも珍しくありません。
ステップ2:原因を徹底的に分析する
問題が可視化できたら、なぜその問題が起きたのか、真の原因を追求します。
なぜなぜ分析
「なぜ?」を5回繰り返すことで、表面的な原因ではなく、根本原因にたどり着く手法です。
例:誤出荷が発生した場合
なぜ誤出荷が起きた? → 商品を取り間違えた
なぜ取り間違えた? → 似た商品が隣に置いてあった
なぜ隣に置いてあった? → ロケーション設計が考慮されていなかった
なぜ考慮されていなかった? → ロケーション決定のルールがなかった
なぜルールがなかった? → ルール策定の担当者が決まっていなかった
この例では、「商品を取り間違えた」という表面的な原因ではなく、「ロケーション決定のルールとその責任者の不在」という根本原因が明らかになります。
特性要因図(フィッシュボーン図)
問題の原因を「人」「方法」「機械」「材料」「環境」などのカテゴリに分けて整理する手法です。複数の原因が絡み合っている場合に有効です。
ステップ3:再発防止策を実行する
原因が特定できたら、具体的な対策を立てて実行します。対策は「仕組みで防ぐ」ことを基本とし、個人の注意力に頼らない方法を優先します。
誤出荷対策の例
ハンディターミナルによるバーコード検品の導入
類似商品のロケーション分離
ダブルチェック体制の導入
ピッキングリストの改善(商品画像の追加など)
破損対策の例
フォークリフトの速度制限
通路幅の確保
緩衝材の使用基準の明確化
破損しやすい商品の取り扱い教育
対策実施のポイント
対策は一度にすべて実施するのではなく、優先順位をつけて段階的に進めます。効果測定ができるよう、対策前後のデータを比較することも重要です。
ステップ4:対策を定着・標準化する
効果が確認できた対策は、マニュアルに落とし込み、全員が同じ手順で作業できるようにします。
マニュアル作成のポイント
写真や図を活用し、視覚的にわかりやすくする
例外対応も明記する
定期的に見直し、更新する
作業者がすぐ確認できる場所に掲示する
教育・訓練の実施
マニュアルを作成しただけでは定着しません。以下の方法で教育を行います。
新人研修でのマニュアル説明
定期的な勉強会の開催
ミスが発生した際のフィードバック
優秀な作業者の表彰
品質管理で追うべきKPI
改善活動を継続するには、定量的な目標を設定し、進捗を管理することが大切です。以下のKPIを参考にしてください。
KPI | 計算方法 | 目標目安 |
|---|---|---|
誤出荷率 | 誤出荷件数 ÷ 総出荷件数 × 100 | 0.1%以下 |
破損率 | 破損件数 ÷ 総取扱件数 × 100 | 0.05%以下 |
クレーム件数 | 月間のクレーム総数 | 前月比減少 |
出荷遅延率 | 遅延件数 ÷ 総出荷件数 × 100 | 0.5%以下 |
KPIは現場に掲示し、全員が現状を把握できるようにします。目標を達成したらチームで共有し、モチベーション向上につなげましょう。
まとめ
物流倉庫の品質管理は、データに基づく改善サイクルが基本です。
可視化:問題を数値で把握する
原因分析:なぜなぜ分析で根本原因を特定する
対策実行:仕組みで防ぐ対策を優先する
定着:マニュアル化と教育で標準化する
この4ステップを継続的に回すことで、誤出荷やクレームを着実に減らすことができます。まずは現状のデータ収集から始めてみてください。
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