オフショア開発で「日本品質」を実現するために必要な体制とは
オフショア開発を検討する企業にとって、最も大きな懸念のひとつが「品質」です。「コストは下がったが、バグだらけで使い物にならなかった」「仕様通りに作ったはずが、日本のユーザーには使いにくいUIだった」といった声は、オフショア開発の現場では決して珍しくありません。しかし、これらの品質問題の多くは、適切な品質管理体制を構築することで防ぐことができます。
本記事では、オフショア開発で日本品質を担保するために必要なテスト体制・レビュー体制の作り方を、開発工程別の品質管理チェックポイント一覧と合わせて解説します。「オフショア開発に興味はあるが、品質面が心配で踏み出せない」という方は、ぜひ参考にしてください。
なぜオフショア開発で品質問題が起きるのか――5つの根本原因

オフショア開発の品質低下は、単に「海外のエンジニアのスキルが低い」という問題ではありません。実際には、ベトナムやインドをはじめとするオフショア先の国々には、日本と同等かそれ以上の技術力を持つエンジニアが数多く存在しています。品質問題が発生する根本的な原因は、主に5つに集約されます。
第一に「仕様の曖昧さ」です。日本国内の開発では、仕様書に明記されていない部分をエンジニアが「空気を読んで」補完してくれることがあります。しかし、文化的背景の異なる海外エンジニアにはこの前提が通用しません。仕様書に書かれていないことは実装されないか、開発者の判断で意図と異なる実装がなされるリスクがあります。
第二に「コミュニケーションのロス」です。言語の壁はもちろん、たとえブリッジSEを介してもコミュニケーションの階層が増えるほど、情報の精度は落ちていきます。日本語の仕様書が英語に翻訳され、さらに現地語に翻訳される過程で、細かなニュアンスが失われるケースは少なくありません。
第三に「品質基準の認識のずれ」です。「品質が高い」という定義は国や企業によって異なります。日本では異常系(エラー処理やイレギュラーな操作への対応)まで含めた堅牢なシステムが求められますが、海外では正常系の動作が確認できれば「完了」とみなす感覚を持つ場合もあります。
第四に「テスト体制の不備」です。開発チームと品質管理チームが別々のプロジェクトを並行して進めている場合、テストで不具合が見つかっても開発チームがすでに次の工程に着手しており、迅速な修正対応ができないという構造的な課題が生じます。
第五に「プロジェクト管理の不足」です。物理的な距離と時差により、進捗状況がリアルタイムで把握しにくくなります。進捗の遅れが発覚したときには、すでに取り返しのつかない状態になっていることも珍しくありません。
テスト体制の構築――4段階のテスト戦略
オフショア開発で日本品質を担保するためには、開発工程に応じた多段階のテスト戦略を設計することが不可欠です。
最初の段階は「単体テスト(ユニットテスト)」です。個々の機能やモジュールが仕様通りに動作するかを確認するテストであり、開発者自身が実施します。ここで重要なのは、テストケースを発注者側が事前に定義するか、少なくともテストケースの作成基準を明確にしておくことです。正常系だけでなく、異常系(入力値の境界値、不正な操作、ネットワーク切断時の挙動など)のテストケースを必ず含めるよう指示してください。
次の段階は「結合テスト」です。複数のモジュールを連携させた際に正しく動作するかを検証します。結合テストはオフショア側のQA(品質保証)チームが担当し、テスト結果をレポートとして日本側に共有する仕組みを作ります。不具合の検出数、重要度、修正状況を定量的に管理することで、品質の推移を可視化できます。
三番目は「システムテスト」です。本番環境に近い環境で、システム全体の動作を検証します。ここでは日本側の担当者が直接テストに参加することが理想的です。特に、UIやUXに関わる部分は日本のエンドユーザーの感覚で確認しなければ、リリース後にユーザビリティの問題が発覚するリスクがあります。
最終段階は「受け入れテスト(UAT)」です。発注者が成果物を正式に受け入れるかどうかを判断するためのテストであり、必ず日本側が主導します。受け入れテストの合格基準(致命的バグゼロ、重大バグの残存数上限など)をプロジェクト開始時に合意しておくことで、品質の判断基準がぶれることを防げます。
レビュー体制の構築――3つのレビューポイント
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テストと並んで重要なのが、各開発工程でのレビュー体制です。レビューを「工程の最後にまとめて実施する」のではなく、「早い段階で頻繁に実施する」ことが、手戻りコストを最小化するカギになります。
ひとつ目のレビューポイントは「要件定義・設計段階の合同レビュー」です。開発着手前に、日本側とオフショア側のチームが合同でレビューを実施し、仕様の解釈に齟齬がないかを確認します。このとき、単に仕様書を読み合わせるだけでなく、具体的な画面遷移やユーザー操作のシナリオを共有し、「この操作をしたらどう動くか」を一つひとつ確認していくことが有効です。ここでの認識合わせの精度が、プロジェクト全体の品質を大きく左右します。
ふたつ目は「コードレビュー」です。開発中のソースコードを第三者の視点でチェックすることで、設計思想からの逸脱やコーディング規約の違反、パフォーマンスの問題を早期に発見できます。コードレビューの実施頻度は、少なくとも機能単位で実施することを推奨します。自動化ツール(静的解析ツール、リンターなど)を併用することで、レビューの効率と網羅性を高めることも可能です。
みっつ目は「中間レビュー(デモレビュー)」です。開発が一定程度進んだ段階で、実際に動作する画面を日本側に見せ、フィードバックを得るプロセスです。特にUI/UXが重要なプロジェクトでは、テキストベースの仕様書だけでは伝えきれない「使い勝手」の感覚を共有するために、中間デモは非常に効果的です。段階的に方向性をすり合わせることで、最終段階での大幅な手戻りを防ぐことができます。
品質管理チェックポイント一覧
以下は、オフショア開発の各工程で確認すべき品質管理チェックポイントです。プロジェクトの規模や特性に応じて取捨選択してご活用ください。
「プロジェクト開始前」のチェックポイントとしては、品質基準の定義と合意(バグの重要度分類、受け入れ基準の設定)、テスト計画の策定(各工程のテスト範囲、担当、合格基準の明確化)、コーディング規約の策定と共有、コミュニケーションルールの確定(定例会議の頻度、報告フォーマット、エスカレーションルール)、ツール環境の統一(バグ管理ツール、バージョン管理、チャットツール)の5つが挙げられます。
「要件定義・設計段階」では、仕様書の合同レビュー実施、異常系・例外ケースの定義漏れがないか確認、UIモックアップまたはワイヤーフレームの共有と承認、非機能要件(性能、セキュリティ、可用性)の明文化の4つを確認してください。
「開発段階」では、コードレビューの実施(機能単位)、単体テストの実行と結果報告、静的解析ツールによる自動チェック、中間デモの実施とフィードバック反映の4つがポイントです。
「テスト段階」では、結合テストの実施とバグ管理、システムテストにおける日本側の参加確認、テスト消化率・バグ検出率・修正率のモニタリング、本番環境に近い環境でのテスト実施の4つを確認します。
「納品・リリース前」では、受け入れテスト(UAT)の実施と合否判定、リリース判定会議の実施(致命的バグゼロの確認)、運用・保守体制の引き継ぎ確認の3つが必須です。
これらのチェックポイントをプロジェクト管理表に組み込み、各工程の完了条件として運用することで、品質管理を仕組み化できます。
品質管理を成功させるための3つの心得

チェックポイントやテスト体制を整えたうえで、最後に実務上の心得を3つお伝えします。
まず「丸投げしない」ことです。オフショア開発で品質を確保するためには、発注者が品質管理に主体的に関与する姿勢が欠かせません。「お金を払っているのだから品質は任せた」というスタンスでは、期待する成果は得られません。自社チームの一部として捉え、密にコミュニケーションを取り続けることが重要です。
次に「曖昧さを徹底的に排除する」ことです。仕様書に書かれていないことは実装されないと考え、要件を可能な限り具体的に文書化してください。「わかるだろう」「常識的に考えれば」という発想は、オフショア開発では通用しません。画面イメージ、操作手順、エラー時の挙動まで明文化することが、品質を守る最大の防御策です。
最後に「定量的にモニタリングする」ことです。品質を感覚的に判断するのではなく、バグの検出数、修正完了率、テスト消化率といった定量データに基づいて品質の推移をモニタリングしてください。データに基づく品質管理は、問題の早期発見と的確な判断を可能にし、プロジェクト全体のリスクを大幅に低減します。
まとめ
オフショア開発で日本品質を確保するためには、「テスト体制の4段階設計」「3つのレビューポイントの設置」「工程別チェックポイントの運用」が柱となります。品質問題の根本原因は、エンジニアのスキルではなく、仕様の曖昧さやコミュニケーション体制の不備にあることがほとんどです。適切な品質管理体制を構築すれば、オフショア開発でもコスト削減と高品質を両立することは十分に可能です。
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