物流倉庫の多能工化計画|5ステップで属人化を解消
「フォークリフトに乗れるのは山田さんだけ」「検品作業は佐藤さんがいないと回らない」——こうした属人化の問題を抱える物流現場は少なくありません。多能工化を進めたいと思っていても、どこから手をつければいいのか分からず、結局は後回しになってしまうことも多いのではないでしょうか。
結論から言えば、多能工化は「見える化」「優先順位」「計画」の3つを押さえれば、着実に進められます。
まずスキルマップで現状を把握する:誰がどのスキルを持っているかを一覧化し、偏りを可視化する
属人化のリスクが高い作業から着手する:全部を一度にやろうとせず、優先順位をつける
具体的な目標と期限を設定する:「いつまでに誰が何をできるようになるか」を明確にする
本記事では、物流倉庫で多能工化計画を立てる5つのステップを、現場で使える具体例とともに解説します。
多能工化を進めるための5ステップ

STEP1:スキルマップで現状を把握する
多能工化の第一歩は、現場のスキル状況を「見える化」することです。誰がどの作業をできるのか、どのレベルでできるのかを一覧にまとめたものがスキルマップです。
物流倉庫の場合、主なスキル項目としては「入荷検品」「ピッキング」「梱包」「フォークリフト操作」「在庫管理」「出荷検品」「返品処理」などが挙げられます。これらの作業ごとに、各スタッフのスキルレベルを4段階程度(未経験・補助可能・一人でできる・指導できる)で評価していきます。
スキルマップを作成すると、「この作業は山田さんしかできない」「このエリアは3人しか対応できない」といった偏りが一目で分かるようになります。Excel でも十分に作成できますが、派遣スタッフを含めて管理する場合は、クラウド型のスキル管理ツールを活用すると更新や共有がスムーズです。
STEP2:優先順位を決める
スキルマップで現状が見えたら、次はどの作業から多能工化を進めるかを決めます。すべての作業を一度に進めようとすると、教育の負担が大きくなり、中途半端に終わってしまいがちです。
優先順位の決め方は、「属人化のリスク」と「業務への影響度」の2軸で考えると整理しやすくなります。たとえば、フォークリフト操作が1人しかできない状態であれば、その人が休んだ日は入出荷が止まってしまいます。これは属人化リスクも業務影響度も高い作業なので、最優先で多能工化を進めるべきです。
一方で、発生頻度が低い特殊作業や、外注で代替できる業務は、後回しにしても問題ありません。「やらないこと」を決めることも、計画を進める上では重要です。
STEP3:具体的な目標を設定する
優先順位が決まったら、多能工化のゴールを具体的に設定します。「多能工化を進める」という曖昧な目標ではなく、「3か月後にピッキング作業を5人以上ができる状態にする」「フォークリフト操作者を現在の2人から4人に増やす」といった数値目標を立てることが大切です。
目標設定のポイントは、「最低何人いれば回るか」を基準にすることです。物流倉庫では繁閑差や欠勤を考慮して、各作業に対して最低でも3人以上の対応者を確保しておくのが安全とされています。現状で1〜2人しかいない作業は、3人体制を目指す形で目標を設定しましょう。
また、目標には期限を必ず入れます。「いつか」ではなく「いつまでに」を明確にすることで、教育計画も立てやすくなります。
STEP4:教育計画を立てて実行する
目標が決まったら、誰に・何を・いつまでに習得させるかを具体的に計画します。教育計画では、対象者の現在のスキルレベル、習得にかかる期間、指導担当者の3点を明確にしておくことが重要です。
物流現場での教育方法は、OJT(現場での実地訓練)が中心になります。ベテランスタッフの隣で作業を見ながら覚える形式ですが、教える側の負担を考慮してスケジュールを組む必要があります。繁忙期に教育を詰め込むと、通常業務に支障が出るため、閑散期や作業量が落ち着く時間帯を活用しましょう。
資格が必要な作業(フォークリフト運転など)は、外部研修の受講スケジュールも計画に組み込みます。費用対効果を考え、すぐに必要な資格から優先的に取得させるのが効率的です。
STEP5:定期的に振り返り、計画を見直す
多能工化は一度計画を立てて終わりではありません。月に1回程度、スキルマップを更新し、計画どおりに進んでいるかを確認します。
振り返りでは、「目標どおりにスキル習得が進んでいるか」「教育の進捗に遅れはないか」「新たに属人化している作業が発生していないか」の3点をチェックします。計画に遅れがある場合は、原因を特定して対策を講じます。教える側の負担が大きすぎる場合は、教育担当者を増やしたり、習得期間を見直したりする柔軟な対応が必要です。
また、派遣スタッフの入れ替わりや業務内容の変化によって、スキルの偏りは常に変動します。定期的な見直しを習慣化することで、属人化のリスクを継続的に抑えることができます。
多能工化で得られる効果:ある物流センターの事例

ある物流センターでは、上記の5ステップで多能工化を計画的に進めた結果、6か月間で大きな変化が生まれました。
スキルマップを導入する前は、主要な10作業のうち7作業が「1〜2人しかできない」状態でした。特にフォークリフト操作と検品作業の属人化が深刻で、欠勤が発生すると残業や応援依頼で対応する日々が続いていました。
多能工化計画を実行した結果、6か月後にはすべての主要作業で3人以上の対応者を確保できるようになりました。1人あたりの対応可能作業数は平均3.2作業から6.8作業へと2.1倍に増加し、急な欠員が発生した際の代替対応率も60%から95%に向上しています。
繁忙期のシフト調整も柔軟になり、残業時間は月平均で15時間から8時間に削減されました。教育に時間を投資した分、現場の安定性と効率が大きく改善したケースです。
多能工化計画でよくある失敗パターン
多能工化は正しく進めれば効果が出ますが、いくつかの落とし穴もあります。以下の5つの失敗パターンを避けることで、計画の成功率が高まります。
1. スキルマップを作っただけで満足する
現状を見える化しても、その後のアクションがなければ意味がありません。スキルマップは「使うため」に作るものです。定期的に更新し、配置やシフト作成に活用しましょう。
2. 一度にすべての作業を多能工化しようとする
教育リソースには限りがあります。優先順位をつけず、全部を同時に進めようとすると、どれも中途半端になります。リスクの高い作業から着実に進めましょう。
3. ベテランに教育を丸投げする
「教えるのはベテランの仕事」と任せきりにすると、ベテランの通常業務に支障が出ます。教育時間を業務として認め、負担を分散させる仕組みが必要です。
4. 派遣スタッフを多能工化の対象外にする
派遣スタッフも現場の戦力です。長期で勤務するスタッフには積極的にスキルを習得させ、戦力化することで、正社員の負担軽減と現場の安定につながります。
5. 振り返りをせず、計画が形骸化する
計画は立てたときがスタートです。月1回のスキルマップ更新と進捗確認を習慣にしなければ、いつの間にか元の属人化状態に戻ってしまいます。
まとめ
多能工化は「なんとなく進める」のではなく、計画的に取り組むことで確実に成果が出ます。まずはスキルマップで現状を把握し、優先順位をつけて一つずつ進めていきましょう。
ポイントを整理すると、以下のとおりです。
スキルマップで「誰が何をできるか」を見える化する
属人化リスクと業務影響度で優先順位を決める
「3人以上ができる状態」など具体的な目標を設定する
教育計画は指導者の負担も考慮してスケジュールを組む
月1回の振り返りで計画を継続的に見直す
多能工化が進めば、急な欠員にも対応できる柔軟な現場体制が実現します。属人化のリスクを減らし、スタッフ一人ひとりの成長にもつながる取り組みです。
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