「システムを新しくする」と一口に言っても、手法は3つある
レガシーシステムの刷新を検討する際に混同されがちなのが、モダナイゼーション・マイグレーション・リプレースの3つの手法です。いずれも「古いシステムを新しくする」取り組みですが、対象範囲、コスト、業務への影響がまったく異なります。本記事では、この3つの違いを整理し、自社の状況に合った手法を選ぶための判断基準を解説します。
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、レガシーシステムの刷新が進まなければ2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる「2025年の崖」が指摘されました。2025年を過ぎた現在もレガシーシステムを抱えたまま運用を続けている企業は多く、基幹システムの導入から20年以上が経過しているケースも珍しくありません。ブラックボックス化したシステムを放置し続けるリスクは年々高まっており、「とにかくシステムを新しくしなければ」という焦りだけで手法を選ぶと、コストや期間が想定を大幅に超えてしまう恐れがあります。まずは3つの手法の違いを正確に理解することが、失敗しないシステム刷新の第一歩です。
モダナイゼーション——「今あるものを活かしながら、構造から変える」

モダナイゼーション(Modernization)は「近代化」を意味し、老朽化した既存システムの構造そのものを最新の技術に合わせて作り変える取り組みです。単にハードウェアやソフトウェアを入れ替えるのではなく、システムのアーキテクチャ、開発言語、運用基盤を含めて刷新します。たとえば、オンプレミスのモノリシックなシステムをマイクロサービス化してクラウドネイティブな構成に移行したり、COBOLで書かれた業務ロジックをJavaやPythonで書き直したりするケースが該当します。
モダナイゼーションの最大のメリットは、既存の業務データやビジネスロジックを活かしながら、拡張性・保守性・セキュリティを抜本的に向上できる点です。将来的な機能追加や外部サービスとの連携にも柔軟に対応できるため、中長期的な視点で見ればコスト効率も高くなります。一方で、初期費用と作業負担が大きく、プロジェクト期間も長期にわたるのが課題です。既存システムの全容を正確に把握するための現状分析に時間がかかり、専門的な技術力を持つ人材の確保も必要になります。
モダナイゼーションの具体的な手法としては、リホスト(環境を変えてそのまま移す)、リライト(新しい言語でコードを書き直す)、リファクター(機能を変えずにコード構造を整理する)、リビルド(ゼロから設計し直す)などがあります。どの手法を選ぶかは、現行システムの複雑さ、残すべき業務ロジックの量、予算と期間の制約によって決まります。
マイグレーション——「構造はそのまま、環境を移す」
マイグレーション(Migration)は「移行」を意味し、既存システムの機能や構造を基本的に変えずに、別の環境へ移す作業です。オンプレミスのサーバーからクラウドへの移行、古いOSから新しいOSへの移行、旧バージョンのデータベースから新バージョンへの移行などが代表的な例です。
マイグレーションの最大のメリットは、業務フローや操作感をほとんど変えずにシステム基盤を更新できる点にあります。ユーザーへの影響が最小限で済むため、現場の混乱を避けやすく、移行にかかるコストと期間もモダナイゼーションに比べて抑えられます。保守切れのハードウェアやソフトウェアのリスクを解消する目的であれば、最も手堅い選択肢です。
ただし、マイグレーションはあくまで「環境を移す」作業であるため、既存システムが抱えている構造的な問題——肥大化したコード、複雑すぎるカスタマイズ、非効率な業務フロー——は解消されません。移行先の環境が新しくなっても「技術的負債」はそのまま引き継がれるため、根本的な改善を求めるのであれば不十分です。また、データ移行時の変換ルール設計や整合性検証に手間がかかり、誤変換やデータ欠損のリスクも伴います。
リプレース——「既存システムを捨てて、まるごと置き換える」
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リプレース(Replace)は、既存のシステムを廃止し、新しいシステムに全面的に置き換える手法です。業務パッケージ(ERPなど)を新規導入するケースや、スクラッチ開発で完全に新しいシステムを構築するケースが該当します。
リプレースのメリットは、業務プロセスそのものを抜本的に見直せる点にあります。現行システムに引きずられることなく、最新の技術とベストプラクティスに基づいたシステムを構築できるため、長年にわたって蓄積された技術的負債を一掃できます。パッケージ製品を採用する場合は、業界標準の業務フローに合わせることで属人化の解消にもつながります。
反面、コストと期間は3つの手法の中で最も大きくなりがちです。既存のデータ移行に加え、業務フローの再設計、ユーザー教育、並行稼働期間の確保など、プロジェクト全体の負荷が非常に高くなります。また、現行システムで実現していたカスタマイズが新システムでは再現できないケースもあり、業務部門との調整が長期化する要因になります。
自社に合った手法を選ぶための3つの判断基準

3つの手法のうちどれが最適かは、自社の状況によって異なります。判断する際に重要なのは、以下の3つの基準です。
1つ目は「現行システムの状態」です。システムのブラックボックス化が深刻で、内部構造を把握できる人材がすでにいない場合は、既存システムを前提としたマイグレーションでは問題が温存されます。この場合、リプレースによる全面刷新か、段階的なモダナイゼーションが選択肢になります。逆に、システムの構造は比較的整理されているがハードウェアやOSの保守切れが迫っている場合は、マイグレーションで迅速に対応するのが現実的です。
2つ目は「業務プロセスの見直しの要否」です。現在の業務フロー自体に問題があり、システム刷新と合わせて業務改革を進めたい場合は、リプレースが有力な選択肢になります。一方、業務フローには大きな不満がなく、システム基盤の老朽化だけが課題であれば、マイグレーションやモダナイゼーションで対応できます。
3つ目は「予算と期間の制約」です。リプレースは最も効果が大きい反面、数千万円〜数億円規模の投資と1年以上のプロジェクト期間を要するケースが一般的です。マイグレーションは比較的短期間・低コストで実施できますが、将来的な拡張性は限定されます。モダナイゼーションはその中間に位置し、段階的に投資を分散できる柔軟性があります。自社の予算感とスピード感に合わせて、無理のない手法を選ぶことが重要です。
なお、実際のプロジェクトでは「いずれか一つだけを選ぶ」のではなく、複数の手法を組み合わせるケースが一般的です。基幹系システムにはモダナイゼーション、情報系システムにはマイグレーション、特定の老朽化した業務アプリにはリプレースというように、システムごとに最適な手法を使い分けることで、コストとリスクのバランスを取ることができます。
まとめ
モダナイゼーション・マイグレーション・リプレースは、いずれも「システムを新しくする」ための手法ですが、対象範囲とアプローチがまったく異なります。モダナイゼーションは構造から変える取り組み、マイグレーションは環境を移す作業、リプレースはまるごと置き換える手法です。自社の現行システムの状態、業務改革の要否、予算と期間の制約を軸に判断し、必要に応じて複数の手法を組み合わせるのが実務的なアプローチです。
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