「時間あたり100個」に隠された落とし穴
製造業のDX投資額は年々増加していますが、「期待した効果が出ない」という声が後を絶ちません。経済産業省の調査でも、DX推進企業の約7割が「成果を実感できていない」と回答しています。その最大の原因は、IoTセンサーやAI導入そのものではなく、KPI定義のズレにあります。MONOistの連載記事では、この「数字の定義ズレ」問題をIE(インダストリアルエンジニアリング=生産工学)の視点から解説しています。
実績値に含まれる「隠れたロス」の正体

「このラインは時間あたり100個です」という回答は一見明快ですが、その「100個」が何を基準にした数字なのか、明確に答えられる現場は多くありません。過去の実績平均なのか、設備スペックからの算出なのか、定義があいまいなまま運用されているのです。
実績値には作業者の手待ち、設備の瞬間的な停止、材料供給の遅延など、さまざまなロスがすでに含まれています。このロス込みの数字を「標準能力」と捉えてしまうと、本来のポテンシャルより低い目標で満足することになります。高機能なデジタルツールを導入しても、単なる「高機能な日報作成機」になりかねません。
IE視点で見る「標準時間」と「余裕率」
こうした課題の解決策として注目されているのがIE(インダストリアルエンジニアリング)です。IEとは、人・モノ・設備の動きを科学的に分析する手法の総称で、製造業の改善活動の原点とも言える考え方です。
IEでは「標準時間」と「余裕率」を明確に分離することで、改善の出発点を明らかにします。多くの現場では、この2つが混同されたまま「うちの実力はこれくらい」と思い込んでいるのが実態です。標準時間とは、適切なスキルを持つ作業者が定められた条件下で必要とする時間のことです。一方、余裕率には休憩や水分補給などの「個人余裕」、機械調整や工具交換などの「作業余裕」が含まれます。これらを分離して可視化することで、どこにロスがあり、どこに改善余地があるのかが明確になります。
経営判断を誤らせる「見せかけの生産性」
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KPIの定義ズレは現場だけの問題ではありません。経営層がDX投資の効果を判断する際、現場から上がってくる数字がロス込みの実績値であれば、投資対効果を正しく評価できません。「生産性が10%向上した」という報告が、実際には改善余地の半分も活かせていない状態かもしれないのです。DX投資の成否を分けるのは、ツールの性能ではなく、数字の定義を経営と現場で統一できているかどうかです。定義が統一されていなければ、いくら精緻なダッシュボードを作っても、そこに表示される数字の意味が部門ごとに異なり、正しい意思決定ができません。
今すぐ取り組むべき3つのアクション

DX投資を成功させるために、まず「数字の定義統一」から始めましょう。第一に、KPIの定義を棚卸しし、「稼働率」「良品率」が各部門で同じ定義か確認します。同じ名称でも計算方法が異なっているケースは珍しくありません。第二に、計測方法を標準化し、手作業での集計とシステム自動取得のどちらを正とするか明確にします。IoTセンサー導入時も、何をどのタイミングで計測するかを事前に統一しておくことが重要です。第三に、現場との合意形成です。「監視」ではなく「改善のための現状把握」であることを丁寧に説明し、現場を巻き込んで進めることが成功の鍵です。
まとめ
DX成果を最大化するには、ツール導入前に「正しい基準」を作ることが不可欠です。御社は大丈夫でしょうか。「KPIの定義が部門ごとに異なる」「実績値と理論値の区別がついていない」「DX投資の効果測定基準が曖昧」——この3つは要注意企業の典型パターンです。1つでも当てはまるなら、DX投資が空回りするリスクが高い状態といえます。GXOでは、180社以上の支援実績をもとに、数字の定義ズレ解消からIoT・AI活用まで一気通貫でサポートしています。製造DXの投資効果にお悩みの経営者・DX推進担当の方は、ぜひGXOにご相談ください。
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