「人時生産性を上げろ」と言われても、何から手をつければいいか分からない。数字の出し方も、改善の進め方も曖昧なまま、現場だけが疲弊していく。そんな悩みを抱えている現場責任者は少なくありません。
結論から言えば、人時生産性の改善は「測定」から始めて「ムダの排除」で成果を出します。
まず測る:現状の人時生産性を正確に把握することが改善の第一歩
ムダを見つける:移動・待ち・手戻りなど、成果につながらない時間を特定する
仕組みで解決する:属人的な努力ではなく、レイアウトや配置の最適化で改善を定着させる
この記事では、人時生産性の基本的な考え方から計算方法、そして現場で実践できる5つの改善施策まで、具体例を交えて解説します。
人時生産性とは
人時生産性とは、「1人が1時間で、どれだけの成果を出したか」を測る指標です。物流倉庫では、出荷件数やピッキング行数、梱包個数などを成果として計算することが一般的です。
計算式は非常にシンプルで、「成果(出荷件数など)÷ 総人時」で求められます。たとえば、1日に1,000件を出荷し、その作業に50人時(10人×5時間)を要した場合、人時生産性は20件/人時となります。
この指標が重要な理由は、単純な「出荷件数」や「作業人数」だけでは見えない効率性を可視化できるからです。繁忙期に出荷件数が増えても、それ以上に人員を投入していれば生産性は下がっています。逆に、少ない人数で同じ成果を出せていれば、生産性は向上しています。人時生産性を定点観測することで、現場の改善効果を客観的に評価できるようになります。
現クラでは、入退場データと作業実績を連携させることで、人時生産性をリアルタイムに可視化できます。誰が何時から何時まで現場にいたかという入退場記録と、その時間帯の出荷件数を自動で紐づけるため、日次・週次・月次での推移を手間なく把握できる仕組みです。
人時生産性が上がらない3つの原因

180社以上の物流現場を支援してきた中で、人時生産性の改善に成功している企業には共通点があります。成功率92%を実現している企業に共通するのは、まず「なぜ上がらないのか」を正しく把握していることです。多くの物流倉庫で共通して見られる原因は、大きく3つに分類できます。
1つ目は「見えないムダ」の存在です。作業者が忙しく動き回っているように見えても、実際には商品を探す時間や、次の指示を待つ時間、同じ場所を何度も往復する移動時間など、成果に直結しない時間が多く含まれています。こうしたムダは現場にいると気づきにくく、改善の対象として認識されないまま放置されがちです。
2つ目は「属人化」の問題です。ベテランスタッフだけが知っている保管場所、特定の人しかできない作業、口頭でしか伝わらないノウハウ。こうした属人化が進むと、人員配置の柔軟性が失われ、特定のスタッフに負荷が集中します。結果として、チーム全体の生産性が頭打ちになります。
3つ目は「測定していない」ことです。人時生産性を定期的に計測していなければ、改善の効果も悪化の兆候も把握できません。感覚的に「今日は忙しかった」「人が足りなかった」と判断するだけでは、根本的な改善にはつながりません。
人時生産性を上げる5つの施策

施策①:ムダな作業の削減
人時生産性を改善する最も効果的な方法は、成果につながらない作業を減らすことです。物流倉庫で発生しやすいムダには、移動のムダ、待ちのムダ、手戻りのムダの3種類があります。
移動のムダとは、商品を取りに行く距離が長い、同じエリアを何度も往復するといった非効率な動線のことです。待ちのムダは、フォークリフトの順番待ち、検品の指示待ち、システムの処理待ちなど、作業が止まっている時間を指します。手戻りのムダは、ピッキングミスによる再作業、伝票の記載ミスによる確認作業など、一度完了した作業をやり直す時間です。
これらのムダを削減するには、まず現場を観察して「何に時間がかかっているか」を把握することが重要です。作業者にヒアリングするだけでなく、実際に作業の様子を観察し、ストップウォッチで時間を計測することで、改善すべきポイントが明確になります。
施策②:レイアウトの最適化
倉庫内のレイアウトは、人時生産性に大きな影響を与えます。よく出る商品(出荷頻度の高い商品)を取りやすい場所に配置するだけで、ピッキングの移動距離を大幅に短縮できます。
具体的には、ABC分析を活用します。出荷データをもとに商品を出荷頻度順に並べ、上位20%の商品(A商品)を最も取りやすいゴールデンゾーンに配置します。中位の商品(B商品)はその周辺に、出荷頻度の低い商品(C商品)は奥や高い棚に配置します。
レイアウト変更は一度で完璧を目指す必要はありません。まずは最も出荷頻度の高い商品10品目だけでも配置を見直すことで、効果を実感できます。その効果を確認しながら、段階的に最適化を進めていくのが現実的なアプローチです。
施策③:適材適所の配置
作業者のスキルや経験に合った作業を割り当てることで、チーム全体の生産性が向上します。ベテランスタッフには判断が必要な検品や出荷確認を、新人スタッフには単純作業から始めてもらうといった配置の最適化です。
ただし、適材適所の配置を実現するには、各スタッフのスキルを把握している必要があります。誰がどの作業をできるのか、習熟度はどの程度かを一覧化したスキルマップを作成することで、配置の最適化がしやすくなります。また、スキルマップがあれば、多能工化(複数の作業ができる人材の育成)の計画も立てやすくなります。
施策④:ツール・機器の活用
ハンディターミナルや音声ピッキングシステムなどのツールを活用することで、作業効率を大幅に向上できます。紙のリストを見ながらピッキングするよりも、ハンディターミナルで次の商品の場所を表示する方が、迷いなく作業を進められます。
ただし、ツール導入だけで生産性が上がるわけではありません。ツールを効果的に使うための作業手順の見直しや、スタッフへの教育も同時に行う必要があります。また、導入前後で人時生産性を比較し、投資対効果を検証することも重要です。
施策⑤:標準作業の徹底
最も効率的な作業方法を標準化し、全員に徹底することで、作業者による品質や速度のばらつきを減らせます。ベテランスタッフの作業を観察し、なぜ速いのか、どんな工夫をしているのかを言語化して、標準作業手順書としてまとめます。
標準作業を定着させるためには、定期的な教育と、標準通りに作業しているかの確認が必要です。また、より良い方法が見つかった場合は、標準作業自体を更新していく仕組みも整えておきましょう。
これらの施策は単独でも効果がありますが、組み合わせることで相乗効果を発揮します。次に紹介する事例では、複数の施策を段階的に実施することで、大幅な生産性向上を実現しました。
改善事例:人時生産性+33%を達成した物流センター
ある物流センターでは、上記の施策を組み合わせて実施した結果、人時生産性が18件/人時から24件/人時へと向上しました(+33%)。
具体的に取り組んだ内容は、まずABC分析によるレイアウト変更です。出荷頻度上位50品目の配置を見直し、ピッキング動線を短縮しました。次に、スキルマップを作成して適材適所の配置を実現。さらに、ベテランスタッフの作業を分析して標準作業手順書を整備し、新人の立ち上がり期間を短縮しました。
この改善が定着した背景には、データの継続的な可視化があります。従来のExcel管理では、入退場時刻の手入力や集計作業に時間がかかり、週次での振り返りが精一杯でした。クラウドで入退場と作業実績を自動集計する仕組みに切り替えたことで、日次で人時生産性を確認できるようになり、改善のPDCAサイクルが加速しました。
改善にかかった期間は約3か月。大きな設備投資なしで、現場の工夫と仕組みづくりで成果を出した事例です。
人時生産性の目標設定
改善を進めるにあたって、具体的な目標を設定することが重要です。まずは2週間ほど現状の人時生産性を毎日測定し、平均値を把握しましょう。
目標設定の目安として、現状から10〜20%向上を最初の目標にするのが現実的です。いきなり50%向上を目指すと、現場に無理が生じて長続きしません。小さな改善を積み重ねて、着実に成果を出していくアプローチが効果的です。
人時生産性改善のセルフチェックリスト
自社の現場で改善余地があるかどうか、以下の10項目でチェックしてみてください。
人時生産性を定期的に測定しているか
出荷頻度の高い商品が取りやすい場所に配置されているか
作業者のスキルマップが作成されているか
標準作業手順書が整備されているか
新人教育のカリキュラムがあるか
作業者が次の指示を待つ時間が発生していないか
同じ場所を何度も往復するピッキング動線になっていないか
ピッキングミスや検品ミスの発生率を把握しているか
繁忙期と閑散期で人員配置を調整しているか
改善提案を出しやすい雰囲気があるか
3つ以上「いいえ」がある場合は、改善の余地が大きいと考えられます。特に1〜4に該当する場合は、まず作業実績の記録と可視化から始めることをおすすめします。
▶ 関連記事:倉庫の作業実績管理とは?記録方法と活用のポイント
まとめ
人時生産性は、物流倉庫の現場改善において最も基本的な指標です。まずは現状を正確に測定することから始めて、ムダの削減、レイアウトの最適化、適材適所の配置、ツールの活用、標準作業の徹底という5つの施策を組み合わせて改善を進めていきましょう。
大切なのは、一度に大きな変革を目指すのではなく、小さな改善を積み重ねることです。測定→分析→改善→効果検証のサイクルを回し続けることで、着実に成果を出すことができます。
人時生産性の改善にお悩みの方へ
現クラでは、180社以上の支援実績をもとに、生産性の見える化と改善を支援しています。人員管理のデジタル化を通じて、人時生産性の継続的な改善を実現する基盤づくりをお手伝いします。
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