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AIエージェント時代のEC/DXは「本番実装」のフェーズへ― JD Sports × commercetools × Stripeが示す「2026年の現実」と、日本企業が今備えるべきこと ―

AIエージェント時代のEC/DXは「本番実装」のフェーズへ

2026年1月、JD SportsがcommercetoolsとStripeのAgentic Commerce Suite(ACS)を活用し、AIエージェント経由の購買体験を本番導入すると発表。AIが商品検索から決済まで完結する時代が始まった。JD Sportsは18〜24歳の主要顧客層でAI利用が急速に伸びていると述べており、この若年層の行動変化に早期対応する狙いがある。日本企業が備えるべきは「API前提設計」「データ統合」「段階的AI組み込み」の3点。今すぐフルAI化は不要だが、2〜3年後の競争力を左右する分岐点に立っている。

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はじめに:「実験」ではなく「本番導入」が始まった

2026年1月、NRF 2026(全米小売業協会主催のカンファレンス、1月11日〜13日開催)の期間中、ある発表が業界の注目を集めました。1

英国発のスポーツファッション小売大手・JD Sportsが、AIエージェントを介した購買体験を本番環境で導入すると発表したのです。2

これは「AIでこんなことができるようになる」という実験の話ではありません。

「AIが商品を探し、比較し、決済まで完了する」 仕組みが、実際に動き始めるという話です。

commercetools創業者のDirk Hoerig氏は、同社のプレスリリースでこう述べています。3

「2025年はAI主導の発見可能性がどう変わるかを理解する年だった。2026年は、小売企業がその理解を行動に移す年だ」

日本企業にとって、これは対岸の火事ではありません。


何が起きているのか:JD Sportsの導入内容

JD Sportsが導入したのは、commercetoolsのAgentic Jumpstartと、StripeのAgentic Commerce Suite(ACS)を組み合わせたシステムです。3

Agentic Commerce Suite(ACS)とは

Stripeが2025年12月に発表したACSは、AIエージェントが商品を発見してから決済を完了するまでを、ひとつの統合された流れで実現する仕組みです。4

具体的には以下の機能を提供します。

  • 商品カタログの同期:AIエージェントがリアルタイムで価格・在庫・配送情報を取得できる

  • 決済処理:AIエージェント経由の購入をセキュアに確定し、決済を完了する

  • 不正対策:Radar等の仕組みを含む、AIエージェント取引に対応した詐欺検知・防止機能

  • 安全な決済認証:決済処理を支える認証の仕組み

  • トークン化:Shared Payment Tokensなど、決済情報を安全に扱うための仕組み

また、Stripe公式によると、ACSには以下の特徴もあります。4

  • ホスト型ACPエンドポイントの提供:AIエージェント向けに商品・価格・在庫情報を配信し、注文イベントを既存基幹に連携できる

  • Stripe Dashboardでエージェント/チャネルを選択可能:どのAIプラットフォームに商品を公開するかを管理画面から制御

  • 既存のコマーススタックとの連携:注文イベント(Webhook)を通じて、既存システムを置き換えずに統合可能

AI Hubとは

commercetoolsはNRF 2026の発表で、AI Hubを「AI上の購買導線に対して商品を発見可能・購入可能に保つ基盤」として位置づけています。3

複数のAIプラットフォーム(ChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilotなど)に対して、自社の商品・価格・在庫情報を一元的に配信できる仕組みです。

commercetoolsのプレスリリースによると、AI Hubの特徴は以下の通りです。3

  • 複数のLLM・AIエージェントに単一のアプローチで接続できる

  • 商品説明・価格・在庫をリアルタイムで正確に維持

  • 既存システムを置き換えるのではなく、拡張として機能する

これにより、AIプラットフォームごとに個別対応する必要がなくなり、企業は一度の連携で複数のAIチャネルに対応できます。ヘッドレスコマースの考え方を、AIエージェント時代に拡張したアーキテクチャと言えます。

JD Sportsの狙い

JD Sportsは、米国を最初の展開市場に選びました。

The GuardianやReutersの報道によると、JD Sportsは18〜24歳の主要顧客層でAI利用が急速に伸びていると述べています。5この若年層の行動変化を捉え、早期に対応する狙いがあります。

まずMicrosoft Copilotから対応を開始し、その後Google Gemini、ChatGPTへと拡大予定です。英国・欧州への展開も2026年中に計画されています。2


従来のEC/DXと何が違うのか

この動きが示す変化は、単なる「新しいチャネルの追加」ではありません。

検索UI前提 → AI対話前提へ

従来のECは、人間がサイトを訪れ、検索し、比較し、購入する前提で設計されていました。

しかしAIエージェント時代は、AIが人間に代わって商品を探し、比較し、決済する流れが現実になります。

この変化により、以下の前提が崩れます。

従来の前提

AI時代の前提

人がサイトを訪問する

AIがAPIで情報を取得する

人がUIを見て判断する

AIが構造化データで判断する

人がカートに入れて決済する

AIが決済まで完了する

つまり、AIはあなたのECサイトを「見に来ない」可能性があるのです。

フロント改善だけでは不十分

これまでのEC改善は、「LPのデザインを変える」「検索UIを改善する」といったフロント側の最適化が中心でした。

しかしAIエージェント対応には、基幹システム(ERP)・在庫管理(WMS)・決済・CRMまで含めた全体設計が必要です。

AIエージェントは、商品情報が古かったり、在庫データがリアルタイムでなかったりすると、正しく機能しません。データ基盤やマスタデータ管理(MDM)の整備が、AI対応の土台になります。


日本企業が直面する「現実的な壁」

では、日本企業がこの流れに対応しようとしたとき、何が障壁になるのでしょうか。

壁①:既存システムが「分断」されている

多くの企業では、EC、基幹(ERP)、在庫(WMS)、CRMがそれぞれ別のシステムで動いています。

AIエージェントが求める「リアルタイムで統合されたデータ」を提供するには、これらをAPI経由で連携できる状態にする必要があります。

しかし、レガシーシステムが足かせになり、そもそもAPIを出せない、というケースは珍しくありません。

壁②:AIを入れても「繋がらない」

「AIチャットボットを導入した」「AI検索を入れた」という企業は増えています。

しかし、そのAIが在庫や価格のリアルタイム情報を取得できない決済まで繋がらないという状態では、本来の価値を発揮できません。

AIの導入がPoC(概念実証)止まりになる原因の多くは、後ろ側のシステム連携が追いついていないことにあります。

壁③:海外SaaSを入れるだけでは解決しない

commercetoolsやStripeのソリューションは強力ですが、これらを自社の業務フローや既存システムにどう接続するかは、別の問題です。

グローバルSaaSをそのまま入れても、日本企業特有の業務フロー、既存の基幹システムとの連携、法対応などでカスタマイズや追加開発が必要になるのが現実です。

海外SaaS導入は「スタート地点」であり、勝負は既存業務と基幹の接続設計にあります。

壁④:実装時に詰まる「技術要件」

実際にAIエージェント対応を進めようとすると、以下のような技術要件で詰まることが多いです。

  • リアルタイム性の定義:商品・在庫・価格の更新頻度、許容遅延、整合性をどこまで担保するか

  • 注文イベント(Webhook)の設計:返品・返金・在庫引当をどう扱うか

  • 権限設計:AIエージェントがどこまで実行できるか、承認点をどこに置くか

これらはシステム導入前に整理しておかないと、後から大きな手戻りになります。


【30秒セルフ診断】AIエージェント時代への準備度チェック

以下の項目で、自社の状況をチェックしてみてください。

  • □ 商品・在庫・価格・配送日がAPIでリアルタイム取得できる

  • □ 商品マスタが一元管理されている(Excel乱立していない)

  • □ 決済と不正対策が複数チャネル追加に耐える設計になっている

  • □ EC・基幹・WMS・CRMの連携が属人化していない

  • □ AI/エージェントのツール呼び出しログ(API/パラメータ/結果)注文イベントログ(Webhook)を追跡できる

2つ以上当てはまらない場合、AIエージェント対応は「フロント改善」ではなく「裏側の再設計」が先です。


「今すぐ全部AI化」は不要だが、避けて通れないことがある

誤解のないよう強調しておきたいのは、今すぐフルAI化する必要はないということです。

しかし、以下の3点は「今のうちに手を打っておくべきこと」として避けて通れません。

① API前提の設計にする

AIエージェントが商品情報や在庫情報を取得するには、APIでデータを出せる状態が前提です。

今あるシステムを刷新する必要はありませんが、新規開発や改修のタイミングでAPI化を意識することが重要です。

② データを統合・整備する

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AIは「構造化されたデータ」を読み取ります。

商品マスタ、価格、在庫、配送情報がリアルタイムで統合されている状態を作ることが、AI対応の土台になります。マスタデータ管理(MDM)の整備も、このタイミングで検討すべきポイントです。

③ 段階的にAIを組み込む余地を残す

いきなりフルAI化を目指すのではなく、「AIが入れる余地を残すDX」という考え方が現実的です。

たとえば、まずは社内業務の一部にAIを導入し、そこで得た知見を顧客向けサービスに活かす、といった段階的なアプローチが有効です。

【参考】最短90日ロードマップ

段階的に進める場合の目安として、以下のようなスケジュールが考えられます。

フェーズ

期間

内容

棚卸し

0〜2週

現状の業務・データ・システム・運用を可視化

設計

3〜6週

API化とデータ統合の設計、MVP定義

実装

7〜12週

1ユースケース実装(例:在庫照会→見積/決済連携の入口)

いきなり全体を作り替えるのではなく、小さく始めて成功体験を積むことが、DX成功の鍵です。


GXO株式会社が提供できる価値

私たちGXO株式会社は、DX支援・システム開発・AI活用を部分最適ではなく全体設計から支援しています。

よくあるご相談

  • 「スプレッドシートで管理している業務をシステム化したい」

  • 「既存の基幹システムを活かしながら、段階的にDXを進めたい」

  • 「AIを入れたいが、何から手をつければいいか分からない」

私たちの強み

  • 要件定義〜運用保守までワンストップで対応

  • CRM・会計・予約・広告APIなど外部連携の実績

  • スプレッドシート運用 → 段階的なシステム化が得意

  • 将来の外販や拡張を見据えたアーキテクチャ設計

海外事例を「現実解」に落とす

JD SportsやNespressoの事例は参考になりますが、日本企業がそのまま真似できるわけではありません。

私たちは、海外の先進事例を踏まえつつ、日本企業の業務フローや既存システムに合った形に落とし込む支援を行っています。


まとめ

2026年1月、JD Sports × commercetools × Stripeの発表は、AIエージェント時代のEC/DXが「実験」から「本番」に移行したことを示しています。

この流れに備えるために、日本企業が今考えるべきことは以下の3点です。

  1. API前提の設計:AIがデータを取得できる状態を作る

  2. データの統合・整備:商品・価格・在庫情報をリアルタイムで統合

  3. 段階的なAI組み込み:いきなりフルAI化ではなく、余地を残すDX

「今すぐ全部AI化」は不要です。しかし、2〜3年後に競争力を左右する分岐点に、今私たちは立っています。


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FAQ

Q1. Agentic Commerce(エージェンティック・コマース)とは何ですか?

AIエージェントが人間に代わって商品を探し、比較し、決済まで完了する購買体験のことです。ユーザーがAIに「おすすめのスーツケースを買っておいて」と指示するだけで、AIが最適な商品を選び、購入まで完了します。

Q2. 日本企業も今すぐ対応が必要ですか?

今すぐフルAI化する必要はありません。ただし、API設計やデータ統合など「AIが入れる余地を残すDX」は、今から意識しておくべきポイントです。新規開発や改修のタイミングで、API化を意識した設計を取り入れることをおすすめします。

Q3. 既存システムを全部作り直す必要がありますか?

いいえ。既存システムを活かしながら、段階的にAPI連携やデータ統合を進めるアプローチが現実的です。まずは現状の棚卸しから始め、小さなユースケースで成功体験を積むことが重要です。

Q4. ヘッドレスコマースとの違いは何ですか?

ヘッドレスコマースは「フロントエンドとバックエンドを分離する」設計思想です。AIエージェント対応は、このヘッドレスの考え方をさらに拡張し、AIをフロントエンドの一つとして扱うアーキテクチャと言えます。commercetoolsのAI Hubは、まさにこの考え方を実装したものです。


脚注


参考資料

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