情シス担当者が不在でも業務を止めないために

「情シス担当者が急に休んだら、誰がシステムトラブルに対応するのか」。この問いに明確な答えを持っている中小企業は、実はそれほど多くありません。本記事では、情シス担当者の不在時でも業務を継続するための緊急対応フローと連絡体制の整備方法を解説します。すぐに使えるテンプレートも掲載していますので、自社の体制構築にお役立てください。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2024」によると、従業員300人未満の企業では、IT部門の人員が1〜2名という「ひとり情シス」状態が約4割を占めています。こうした状況では、担当者の病気や退職が発生した際に、システム運用が完全に止まってしまうリスクがあります。事前に対応フローと連絡体制を整備しておくことで、このリスクを大幅に軽減できます。
なぜ緊急連絡体制の整備が必要なのか
情シス担当者の不在は、計画的な休暇だけではありません。急な体調不良、家族の緊急事態、あるいは突然の退職など、予測不能な事態はいつでも起こり得ます。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、緊急時の連絡体制整備は基本的な対策として位置づけられています。
特に問題となるのは、情シス担当者しか知らない情報が多いことです。サーバーの管理者パスワード、ベンダーの連絡先、システムの設定情報など、属人化した知識が業務継続を妨げる大きな要因となります。緊急連絡体制の整備は、単に連絡先リストを作ることではなく、担当者不在時に必要な情報へアクセスできる仕組みを構築することを意味します。
また、近年はサイバー攻撃の被害が中小企業でも増加しています。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2024」では、ランサムウェアによる被害が引き続き上位にランクインしています。情シス担当者が不在のタイミングでセキュリティインシデントが発生した場合、初動対応の遅れが被害を拡大させる可能性があります。緊急連絡体制は、こうした事態への備えとしても重要です。
緊急対応フローの基本設計

効果的な緊急対応フローを設計するには、まず「どのような事態を想定するか」を明確にする必要があります。情シス業務で発生しうる緊急事態は、大きく分けて3つのカテゴリに分類できます。
第一に、システム障害です。サーバーダウン、ネットワーク障害、基幹システムの停止など、業務に直接影響する技術的な問題がこれに該当します。第二に、セキュリティインシデントです。ウイルス感染、不正アクセス、情報漏洩の疑いなど、早急な対応が求められる事態です。第三に、日常的なIT支援です。パソコンの不調、アプリケーションのエラー、アカウントのロックアウトなど、個々の従業員が困っている状況です。
これらのカテゴリごとに、対応の優先度と対応者を事前に決めておくことが重要です。すべてのトラブルに同じ対応をする必要はありません。業務への影響度と緊急度に応じて、対応をエスカレーションする仕組みを作りましょう。
具体的なフロー設計では、最初の判断ポイントを明確にすることがポイントです。「誰に連絡すればよいかわからない」という状況を作らないために、第一連絡先を明確に定めます。そこから状況に応じて、外部ベンダーへの連絡、経営層への報告など、次のステップに進む判断基準を示しておきます。
緊急連絡体制テンプレートの作成方法
ここでは、実際に使える緊急連絡体制テンプレートの作成方法を解説します。テンプレートには、以下の要素を含めることをお勧めします。
まず、社内連絡先リストです。情シス担当者の代理として対応できる人物を複数名指定しておきます。必ずしもIT知識が豊富である必要はありません。外部ベンダーへの連絡や、状況の一次切り分けができる人物であれば十分です。連絡先には、氏名、部署、電話番号、メールアドレス、対応可能な曜日・時間帯を記載します。
次に、外部ベンダー連絡先リストです。システム保守ベンダー、ハードウェアメーカーのサポート窓口、インターネットプロバイダ、クラウドサービスのサポートなど、日常的に連絡する可能性のあるベンダーをすべてリストアップします。契約番号やサポートIDなど、問い合わせ時に必要な情報も併記しておくと、対応がスムーズになります。
さらに、基本的な対応手順書を用意します。よくあるトラブルについては、情シス担当者以外でも対応できるよう、手順を文書化しておきます。たとえば、パソコンの再起動手順、ネットワーク接続の確認方法、パスワードリセットの依頼方法などです。画面キャプチャを交えて、専門知識がなくても実行できるレベルで記載することが重要です。
テンプレートの保管場所も検討が必要です。情シス担当者のパソコン内にだけ保存していては、その担当者が不在のときにアクセスできません。社内の共有フォルダ、クラウドストレージ、あるいは紙での印刷配布など、複数の手段で関係者がアクセスできるようにしておきましょう。
属人化を防ぐナレッジ管理のポイント
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緊急連絡体制を整備しても、必要な情報が情シス担当者の頭の中にしかなければ、実際の対応は困難です。属人化を防ぐためのナレッジ管理は、緊急時対応の基盤となります。
最も重要なのは、パスワードや認証情報の管理です。管理者アカウントのパスワード、ライセンスキー、サービスのログイン情報などは、担当者個人が記憶しているだけでは危険です。パスワード管理ツールを導入するか、厳重に管理された金庫にリストを保管するなど、組織として情報を管理する仕組みが必要です。
システム構成の文書化も欠かせません。どのサーバーがどのような役割を担っているのか、ネットワークはどのように構成されているのか、各システム間の連携はどうなっているのか。これらの情報を図解を交えて文書化しておくことで、担当者以外でも全体像を把握できるようになります。
日常業務の記録も有効です。情シス担当者が日々どのような対応をしているかを簡単に記録しておくと、代理対応者が過去の事例を参照できます。トラブルチケット管理ツールを導入すれば、対応履歴が自然と蓄積されていきます。
定期的な情報更新も忘れてはなりません。ベンダーの連絡先が変わった、システムがリプレースされた、担当者が異動したなど、情報は常に変化します。半年に一度程度は、テンプレートや文書の内容を見直す機会を設けましょう。
今すぐできる5つのアクション
ここまでの内容を踏まえて、自社で今すぐ着手できる具体的なアクションを5つ挙げます。
第一に、代理対応者を指名することです。情シス担当者が不在のときに、最初の連絡を受ける人物を決めます。経営層やマネージャー層から選ぶと、判断権限の面でスムーズです。本人に役割を伝え、了承を得ておきましょう。
第二に、外部ベンダーの連絡先を一覧化することです。現在契約している保守ベンダーやサポート窓口を洗い出し、リスト化します。情シス担当者に確認しながら作成し、共有フォルダに保存します。
第三に、管理者パスワードの棚卸しをすることです。現在、情シス担当者のみが把握しているパスワードを洗い出し、安全な方法で組織として管理できる体制を整えます。パスワード管理ツールの導入を検討するのもよいでしょう。
第四に、よくあるトラブルの対応手順を3つだけ文書化することです。すべてを一度に文書化するのは大変ですから、まずは発生頻度の高いトラブル3つについて、対応手順を作成します。情シス担当者に確認してもらいながら進めましょう。
第五に、緊急連絡フローを紙で配布することです。デジタルデータだけでなく、紙でも配布しておくことで、システムトラブル時にもアクセスできます。各部署の責任者の机上に置いておくと安心です。
体制構築に専門家の支援を活用する
ここまで解説してきた内容を自社だけで実施するのが難しいと感じる企業も少なくありません。特に「ひとり情シス」状態の企業では、現任担当者が日常業務に追われており、体制整備に時間を割けないことが多いです。
このような場合、外部の専門家を活用することで、効率的に体制を構築できます。客観的な視点から現状を評価し、自社に適した緊急対応フローを設計してもらうことで、抜け漏れのない体制が整います。
GXOでは、180社以上のIT支援実績をもとに、中小企業のIT体制構築を伴走型で支援しています。緊急連絡体制の設計から、ナレッジ管理の仕組みづくり、さらには情シス業務のアウトソーシングまで、各企業の状況に応じた解決策をご提案しています。
まとめ
情シス担当者の不在は、いつ発生するかわかりません。事前に緊急対応フローと連絡体制を整備しておくことで、万が一の際も業務を継続できます。本記事で紹介したテンプレートを参考に、自社の体制を見直してみてください。属人化の解消とナレッジ管理を進めることで、組織としてのIT対応力が向上します。
体制構築について専門家への相談をご希望の場合は、GXOまでお気軽にお問い合わせください。
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