GXO株式会社、代表の藤吉です。
前回の記事では、Nested Learningの基本的な仕組みと、従来技術との違いを解説しました。今回は、Nested Learningによって実現できる6つの具体的な機能を、実際の活用シーンとともにご紹介します。
📌 本連載の過去回はこちら
- 第1回:【育つAI入門】なぜ多くの企業でAI活用が失敗するのか?
https://gxo.co.jp/column/growing-ai-01-failure-walls
- 第2回:【育つAI入門】LLM・RAG・CAGとは?AI技術の基礎を解説
https://gxo.co.jp/column/growing-ai-02-llm-rag-cag
- 第3回:Nested Learningとは? RAGの限界を超える“育つ設計” を解説
https://gxo.co.jp/column/ai3nested-learning-rag
機能1:予兆検知 ― 問題が起きる前に警告
ある日の朝、AIから自動メッセージが届きます。
AI「おはようございます。本日の予測をお知らせします。【注意】A製品の不良率上昇の予兆を検知しました。【根拠】現在の湿度:62%(上昇傾向)、過去データ:65%超で不良率上昇、天気予報:本日は更に湿度上昇の予測。【推奨】午前中に除湿器を1台追加してください。これにより、不良発生を未然に防げます。」
担当者「問題が起きる前に対策できた!不良ゼロの日が続いてる!」
従来のRAGは、問題が発生してから過去の資料を検索して対処法を探します。一方、Nested Learningは過去のパターンを学習しているため、「この条件が揃うと問題が起きやすい」という予兆を捉え、事前に警告できるのです。
機能2:パターン発見 ― 人間が気づかない関連性
AIからの報告が届きます。
AI「興味深いパターンを発見しました。A製品の不良率は、月曜日2.5%、火曜日1.8%、水曜日1.5%、木曜日1.2%、金曜日2.3%。【分析結果】週の初めと終わりに不良が多い傾向があります。【推定原因】月曜:休み明けで作業ペースが安定しない。金曜:週末前で集中力が低下している可能性。【提案】月曜と金曜に品質チェックの頻度を上げることを推奨します。」
担当者「そんなパターンがあったのか!気づかなかった!」
日々の業務データを蓄積・分析することで、人間では気づきにくい相関関係を発見できます。

機能3:個人最適化 ― 人に合わせた対応
同じ質問でも、相手によって回答の仕方を変えます。
山田さんの場合:AI「詳細な技術的説明を含めて回答します」(山田さんは詳しい説明を好むと学習済み)
佐藤さんの場合:AI「結論から簡潔に:湿度チェックしてください」(佐藤さんは結論だけ欲しいと学習済み)
新人の田中さんの場合:AI「初めてのケースですね。手順を丁寧に説明します。1. まず湿度計を…」(田中さんには教育的に対応)
Nested Learningは、ユーザーごとの好みや理解度を学習し、一人ひとりに最適化された回答を提供します。使い込むほど、「自分専用のアシスタント」になっていきます。
機能4:業務フロー最適化 ― ベストな手順を提案
AIが過去6ヶ月のデータを分析した結果を報告します。
AI「【現在の業務フロー】1. 不良発見 → 2. 原因調査(2時間)→ 3. 対策検討(1時間)→ 4. 実施(2時間) 合計:5時間。【最適化されたフロー(提案)】1. 不良発見 → 即座にAIが原因予測 → 2. 確認作業(10分)→ 3. AI推奨の対策実施(30分) 合計:40分。削減効果:92%。実装しますか?」
5時間かかっていた作業が40分に短縮。過去の対応履歴を学習しているからこそ、原因の予測と最適な対策の提案が即座にできるのです。
機能5:新人教育 ― ベテランのノウハウを継承
新入社員の田中さん(入社1週間)が「A製品の不良が出ました…どうすれば…」と相談します。
AI「大丈夫です。教えますね。このケースは、ベテランの山田さんが過去20回対応した事例と同じパターンです。山田さんの対応方法:1. まず湿度を確認 → 2. 65%以上なら除湿器追加 → 3. 3日間様子を見る。具体的な手順を一緒に進めましょう。まず、湿度計の場所は分かりますか?」
田中さん「すごい…ベテランさんが隣にいるみたい…」
Nested Learningは、ベテラン社員の判断基準や対応パターンを学習しています。これにより、従来5〜6年かかっていた新人の育成期間を2〜3年に短縮できます。

機能6:多言語・多様な表現への対応
ベテラン職人(60歳)が「あー、またあの『ビーって音』がしてるわ。あかんやつや」と報告します。
AI「了解しました。『ビーって音』とは、モーターの異常振動音ですね。過去5回、同様の報告がありました。すべてベアリングの摩耗が原因でした。交換部品を発注しますか?」
職人「おお、分かってくれるんか!」
現場特有の言い回しや、その会社でしか使われない表現も、Nested Learningは学習して理解できるようになります。マニュアルに載っていない「現場の言葉」を認識できることで、誰でもスムーズにAIを活用できます。
おまけ:コスト削減効果も劇的
Nested Learningは機能面だけでなく、コスト面でも大きなメリットがあります。
RAGシステム(従来)の場合 1回の質問ごとに、検索結果の文書(5,000トークン)、会話履歴(1,000トークン)、AI回答(500トークン)で合計6,500トークンを消費。月間10,000回の質問で6,500万トークン、コストは約20万円/月。
Nested Learning(GXO)の場合 学習済みのため検索不要(0トークン)、最小限のコンテキスト(500トークン)、AI回答(500トークン)で合計1,000トークン。月間10,000回の質問で1,000万トークン、コストは約3万円/月。
年間削減額は約200万円、3年間で約600万円の削減になります。
なぜ「育つ」のか:データ蓄積と精度向上
Nested Learningは、使い続けることで精度が向上していきます。
導入直後 回答精度65%。「一般的には…」という汎用的な回答が多く、ユーザー満足度は60点程度。
3ヶ月後 回答精度78%(+13ポイント)。企業固有のパターンを50個学習し、「御社の過去事例では…」という具体的な回答が増加。ユーザー満足度75点。
6ヶ月後 回答精度87%(+22ポイント)。パターン150個、ナレッジグラフ500ノードを構築。部署ごとの業務特性も理解。ユーザー満足度88点。
1年後 回答精度94%(+29ポイント)。もはや汎用AIではなく「あなたの会社専用AI」に成長。業務によっては新入社員より詳しい場合も。ユーザー満足度95点。
導入直後は「本当に使えるのか?」と感じることもあるかもしれません。しかし、データが蓄積されるほど、御社の業務に最適化された、かけがえのないAIへと成長していきます。
まとめ
今回の記事では、Nested Learningで実現できる6つの機能を紹介しました。
予兆検知:問題が起きる前に警告
パターン発見:人間が気づかない関連性を発見
個人最適化:ユーザーに合わせた対応
業務フロー最適化:ベストな手順を提案
新人教育:ベテランのノウハウを継承
多様な表現への対応:会社独自の言い回しを理解
次回は「最新AI技術を『使える形』にする難しさと、中堅企業に必要なもの」と題して、なぜ大手ベンダーでは対応できないのか、中堅企業が本当に必要としているものは何かを解説します。
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