DX・業務改善📖 1分で読了

DXに失敗する企業の共通点は「システム」ではなく「進め方」IPA調査「成功企業は2割」の現実——ツール先行が招く失敗と、業務→データ→システムの正しい順序

DXに失敗する企業の共通点は「システム」ではなく「進め方」

DXの失敗原因は、ツールの選定ミスではない。「業務整理→データ設計→システム導入」という正しい順序を無視し、ツールありきで進めたことにある。IPAの調査によれば、DXで本質的な成果を出している企業はわずか2割。残り8割の失敗には、共通した「進め方の誤り」がある。

「最新のSaaSを導入したのに効果が出ない」「AI導入を進めたが現場が使わない」——こうした声は、DX推進担当者の間で珍しくない。しかし問題は、導入したツールにあるのではない。

本記事では、DX失敗企業に共通する「進め方の問題」を明らかにし、成功企業との決定的な違いを解説する。


なぜDXは「失敗率8割」と言われるのか

DXの本質的成果を出せている企業は2割

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2024」によれば、DXに取り組む企業のうち、業務効率化や生産性向上では過半数が成果を感じている。しかし、DXの本質である「顧客ニーズを捉えた価値創出」「ビジネスモデルの変革」「新製品・サービスの創出」で成果を出せている企業は、わずか2割に過ぎない。

つまり、8割の企業は「デジタル化」はできても「トランスフォーメーション(変革)」には至っていないのだ。

失敗企業に共通する7つの問題

キャド研の調査では、DXが失敗する理由として以下の7つが挙げられている。

第一に、経営層による理解不足。第二に、企業ビジョンとゴールが曖昧。第三に、DX人材の不足と外部依存によるベンダーロックイン。第四に、レガシーシステムからの脱却遅れ。第五に、データに基づいた市場・顧客ニーズの理解欠如。第六に、短期成果の追究。第七に、部門・現場と経営層の連携不足。

これらを俯瞰すると、共通点が見えてくる。それは「ツールの問題」ではなく「進め方の問題」だということだ。


ツール先行の典型的失敗パターン

「とりあえずRPA」「まずはAI」の落とし穴

DX推進の現場で最も多い失敗パターンは、ツール先行型のアプローチだ。

「競合がRPAを導入したから、うちも」「AIが話題だから、まず導入してみよう」——こうした動機でプロジェクトが始まると、高確率で失敗する。なぜなら、「何を解決するか」が不明確なまま、「何を使うか」だけが決まっているからだ。

ある製造業では、在庫管理の効率化を目的にAIを導入した。しかし、そもそも在庫データがExcelと紙の台帳に分散しており、AI以前にデータの一元化すらできていなかった。結果、高額な投資をしたAIシステムは「データがないから動かない」状態のまま放置されることになった。

「ベンダーに丸投げ」の代償

ツール先行の失敗は、ベンダー依存とセットで起きやすい。

DX人材が社内にいない企業は、外部ベンダーに頼らざるを得ない。しかし、ベンダーが提案するソリューションが自社の課題に本当に適しているかを判断できる人材がいなければ、「ベンダーが売りたいもの」を導入することになりかねない。

さらに深刻なのは、ベンダーに丸投げした結果、社内にデジタル技術に関するナレッジが蓄積されないことだ。特定のベンダーに依存せざるを得ない「ベンダーロックイン」状態に陥り、追加開発のたびに高額な費用を請求される——こうした悪循環に陥る企業は少なくない。

現場が使わないシステムの末路

ツール先行で導入されたシステムは、往々にして現場に定着しない。

なぜなら、現場の業務フローや課題を無視して導入されたシステムは、「使いにくい」「今までのやり方の方が早い」と感じられるからだ。現場からの反発を押し切って導入しても、形式的な入力だけが行われ、本来の目的であるデータ活用や業務効率化には繋がらない。

JTBのバーチャル観光事業の失敗は、この典型例といえる。技術ありきで進めた結果、顧客が本当に求める体験とは乖離したサービスとなり、厳しい評価を受けることになった。


成功企業の共通点——「経営課題」からの逆算

経営層のコミットメントが成否を分ける

IPAの調査では、DXで成果を出している企業の共通点として「経営層のデジタル・ITに関する知見」「経営層による積極的な推進」が挙げられている。

成功企業では、DXは「IT部門の仕事」ではなく「経営課題」として位置づけられている。経営層自らがDXの必要性を理解し、全社に向けて明確なビジョンを示し、必要なリソースを確保する。この「トップダウン」の姿勢があるかないかで、プロジェクトの成否は大きく変わる。

「何を変えるか」が明確

成功企業は、ツールを選ぶ前に「何を変えるか」を徹底的に議論している。

「どの業務プロセスに課題があるのか」「その課題を解決することで、どのような経営効果が得られるのか」「顧客にとっての価値はどう変わるのか」——こうした問いに対する明確な答えがあって初めて、適切なツール選定が可能になる。

逆に言えば、この問いに答えられないままツールを導入しても、「何をもって成功とするか」が定義できないため、効果測定すらできない。「なんとなくデジタル化した」で終わってしまうのだ。

現場を巻き込んだ推進体制

成功企業のもう一つの共通点は、現場を巻き込んだ推進体制だ。

経営層がビジョンを示し、DX推進チームが計画を立て、現場がフィードバックを返す——この三者の連携がなければ、DXは机上の空論に終わる。特に重要なのは、現場の課題や不満を吸い上げ、プロジェクトに反映させる仕組みだ。

「現場が使わないシステム」を作らないためには、現場を「導入される側」ではなく「一緒に作る側」として巻き込む必要がある。


正しい順序は「業務→データ→システム」

ステップ1:業務プロセスの可視化と課題特定

DXの第一歩は、ツール選定ではない。自社の業務プロセスを可視化し、どこに課題があるのかを特定することだ。

各部署にヒアリングを行い、現状の業務フローを「見える化」する。どこで時間がかかっているのか、どこでミスが発生しやすいのか、どこがボトルネックになっているのか。この作業を飛ばして「とりあえずツール導入」に進むと、見当違いの解決策に投資することになる。

業務可視化の過程では、「本当に必要な業務か」という視点も重要だ。デジタル化する前に、不要な業務を廃止し、業務プロセスそのものをシンプルにする。これだけで、大きな効率化が実現できることも多い。

ステップ2:データの整理と設計

業務課題が特定できたら、次はデータの整理だ。

課題解決に必要なデータは何か。そのデータは現在どこにあるのか。形式は統一されているか。リアルタイムで取得できるか。——これらを整理せずにシステムを導入しても、「データがないから動かない」「データ形式がバラバラで連携できない」といった問題に直面する。

約40%の企業がIT予算の90%以上を既存システムの保守に費やしているという現実は、このステップを軽視した結果ともいえる。レガシーシステムに閉じ込められたデータを解放し、活用可能な形に整えることが、DX成功の土台となる。

ステップ3:適切なシステムの選定と導入

業務課題が明確になり、データ基盤が整って初めて、システム選定のフェーズに入る。

この順序を守れば、「何を解決するためのシステムか」「どのデータを使って、どのような価値を生むか」が明確な状態でツールを選べる。ベンダーの提案を鵜呑みにせず、自社の課題に本当に適しているかを判断できるようになる。

また、導入後の効果測定も容易になる。「この業務プロセスの所要時間を30%削減する」「このデータをリアルタイムで可視化し、意思決定スピードを上げる」といった具体的な目標があれば、成功か失敗かを客観的に評価できる。


「相談・整理」から始める重要性

自社だけで課題を特定する難しさ

ここまで読んで、「まず業務を可視化しよう」と思った方もいるだろう。しかし、自社だけで客観的な課題特定を行うのは、実は非常に難しい。

長年同じやり方で業務を行ってきた社員にとって、現状の非効率は「当たり前」になっている。「なぜこの作業が必要なのか」と問われても、「昔からそうしているから」としか答えられないケースは珍しくない。

また、部門間の壁も障害になる。営業部門から見えている課題と、製造部門から見えている課題は異なる。全社横断的な視点で業務プロセスを俯瞰し、本当のボトルネックを見つけるには、社内政治から距離を置いた客観的な視点が必要だ。

「大規模プロジェクト」の前に「現状整理」を

DXというと、数億円規模のシステム刷新プロジェクトをイメージしがちだ。しかし、いきなり大規模投資に踏み切るのはリスクが高い。

まずは現状を整理し、優先すべき課題を特定することから始める。この段階で外部の専門家に相談することで、「本当に解決すべき課題は何か」「どの順序で取り組むべきか」「投資対効果の高い領域はどこか」が明らかになる。

セブン&アイ・ホールディングスの失敗事例が示すように、大規模投資は失敗したときのダメージも大きい。まずは小さく始め、成功体験を積み重ねながら全社展開していく——この「スモールスタート」の考え方が、DX成功の鍵となる。

第三者の視点がもたらす価値

自社の業務に精通しているからこそ見えない課題がある。第三者の視点を入れることで、「当たり前」と思っていたことが実は非効率だったと気づくケースは多い。

また、他社の成功事例・失敗事例を知る専門家であれば、「この進め方は過去に失敗した企業と同じパターンだ」「この課題なら、こういうアプローチが有効だ」といった知見を提供できる。

DXの失敗は、ほとんどの場合「進め方」の問題だ。正しい順序で、正しいアプローチで進めれば、成功確率は大きく上がる。その第一歩として、まずは現状を客観的に整理することから始めてみてはいかがだろうか。


まとめ:DX成功は「順序」で決まる

DXに失敗する企業の共通点は、ツールの選定ミスではない。「業務整理→データ設計→システム導入」という正しい順序を守らず、ツールありきで進めたことにある。

成功企業は、経営層がコミットし、解決すべき課題を明確にし、現場を巻き込んで推進している。彼らは「何を導入するか」ではなく「何を変えるか」から考えている。

8割の企業がDXの本質的成果を出せていない現実は、裏を返せば「正しい進め方」を知れば成功できる可能性があるということだ。大規模なシステム投資の前に、まずは自社の業務とデータの現状を整理することから始めてほしい。


参考資料

この記事についてもっと詳しく知りたい方へ

GXOでは、DX・業務改善に関する詳しい資料を無料で提供しています。導入事例や成功事例、具体的な導入手順を詳しく解説しています。