「あの人がいないと回らない」——物流現場でよく聞く言葉です。
属人化の問題点は前回の記事で解説しました。では、実際にどう解消すればいいのでしょうか。
「マニュアルを作ればいい」と言われても、何から手をつければいいかわからない。ベテランに聞いても「見て覚えろ」としか言われない。そんな悩みを抱える現場責任者の方は多いはずです。
この記事では、180社以上の物流現場を支援してきた経験をもとに、属人化を解消する3つの方法「マニュアル化」「多能工化」「システム化」について、具体的な進め方を解説します。
解消方法①:マニュアル化

属人化解消の第一歩は、ベテランの頭の中にある知識を「見える化」することです。
なぜマニュアル化が必要なのか
ベテラン社員は、長年の経験から「こういう場合はこうする」という判断基準を持っています。しかし、その多くは本人も言語化できていません。
ある物流センターでは、出荷検品のミスが特定の曜日に集中していました。調べてみると、ベテランの田中さん(仮名)が休みの日でした。田中さんは「荷姿を見ただけで、どの取引先か分かる」という技術を持っていましたが、それを誰にも教えていなかったのです。
マニュアル化の具体的な進め方
手順1:作業を観察して記録する
まず、ベテラン社員の作業を横で観察し、すべての動作を書き出します。本人に「いつも何を見ていますか?」と聞いても、無意識の動作は出てきません。第三者が観察することで、本人も気づいていない判断ポイントが見えてきます。
手順2:判断基準を明文化する
「なぜそうするのか」を言語化します。たとえば、フォークリフトの積み込み順序を決める際、ベテランは「重いものを下に」だけでなく、「配送ルートの逆順で積む」「崩れやすい荷物は壁側に寄せる」といった複数の判断基準を瞬時に組み合わせています。これらをすべて書き出します。
手順3:写真・動画で補足する
文章だけでは伝わらない部分は、写真や動画で補足します。特に「正しい状態」と「NGな状態」を並べて見せると効果的です。パレットの積み方、ラベルの貼り位置、荷崩れしやすい積み方など、視覚的に示すことで理解度が上がります。
マニュアル化チェックリスト
以下の項目を確認しながら進めると、抜け漏れを防げます。
チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
作業手順 | すべての工程を時系列で記載したか |
判断基準 | 「なぜそうするか」を明記したか |
例外対応 | イレギュラー時の対処法を記載したか |
視覚資料 | 写真・図解を入れたか |
更新ルール | 誰がいつ更新するか決めたか |
マニュアル化の注意点
マニュアルは「作って終わり」ではありません。現場の状況は変わるため、定期的な更新が必要です。更新担当者と更新頻度を決めておきましょう。
また、分厚いマニュアルは誰も読みません。「判断に迷ったときに見る」くらいの分量に抑え、詳細は別紙にまとめる構成がおすすめです。
解消方法②:多能工化
マニュアルができたら、次は「複数の人が同じ作業をできる状態」を作ります。
多能工化のメリット
多能工化には、属人化解消以外にもメリットがあります。
急な欠勤や退職に対応できる
繁忙期に人員を柔軟に配置できる
社員のモチベーション向上につながる
特に3つ目は見落とされがちです。「自分はこの作業しかできない」という状態は、社員にとってもストレスです。複数の業務ができるようになることで、仕事への自信や成長実感が生まれます。
多能工化の成功事例
ある物流センター(従業員30名規模)では、入荷検品がベテラン2名に集中していました。多能工化を進めた結果、以下の変化がありました。
項目 | Before | After |
|---|---|---|
入荷検品ができる人数 | 2名 | 6名 |
欠勤時の対応 | 残業で対応 | 通常シフトで対応可 |
繁忙期の残業時間 | 月40時間/人 | 月15時間/人 |
多能工化の具体的な進め方
手順1:スキルマップを作成する
まず、現場で必要なスキルを洗い出し、誰が何をできるかを一覧にします。縦軸に社員名、横軸にスキル項目を並べ、習熟度を3〜4段階で評価します。
これにより、「この作業は田中さんしかできない」「この業務は3人ができるから大丈夫」といった状況が一目で分かります。
手順2:育成計画を立てる
スキルマップを見ながら、誰にどのスキルを習得させるか計画を立てます。優先度は「できる人が1人しかいないスキル」から着手します。
計画を立てる際は、本人の希望も聞きましょう。「入荷検品をやってみたい」という声があれば、モチベーション高く取り組んでもらえます。
手順3:配置転換で経験を積ませる
計画に沿って、実際に業務を経験させます。いきなり一人で任せるのではなく、最初はベテランの横について作業し、徐々に一人でできる範囲を広げていきます。
実務を通じた指導(OJT)では、「なぜそうするのか」を必ず説明してもらいましょう。手順だけ教えても、イレギュラーな場面で判断できません。
多能工化の注意点
「全員がすべてをできる」を目指す必要はありません。各業務について「2〜3人ができる状態」を目標にすれば十分です。
また、多能工化を進めると「自分の仕事を取られる」と感じるベテランが出てきます。「あなたの技術を後輩に伝えてほしい」という伝え方で、育成者としての役割を与えると協力を得やすくなります。
解消方法③:システム化

マニュアル化・多能工化で解消できない属人化は、システムで置き換えます。
システム化が有効なケース
以下のような業務は、システム化の効果が高いです。
判断基準が明確でルール化できる業務
繰り返し発生する定型業務
ミスが許されない重要業務
たとえば、「この取引先は午前中に出荷」「この商品は同梱不可」といった判断は、人が覚えるよりシステムでチェックした方が確実です。
システム化の具体的な進め方
手順1:判断ルールを整理する
まず、ベテランが頭の中で行っている判断を、システムに組み込めるルールに変換します。「経験と勘」で判断している部分も、よく聞くと「Aの場合はX、Bの場合はY」というルールに分解できることがほとんどです。
手順2:チェックリスト化する
いきなりシステムを導入するのではなく、まずは紙のチェックリストで運用してみます。これにより、ルールの抜け漏れや現場に合わない部分が見えてきます。
手順3:システムに組み込む
チェックリストで運用が安定したら、システム化を検討します。すべてを自動化する必要はありません。「システムが警告を出し、人が最終判断する」という形でも、ミスは大幅に減ります。
システム化の注意点
「システムを入れれば解決」と考えると失敗します。システムは「ルール化できた業務」しか処理できません。まずマニュアル化でルールを明確にし、それをシステムに組み込むという順序が大切です。
💡 「どんなシステムが自社に合うか分からない」という方は、現クラの無料相談をご活用ください。現場の状況をヒアリングし、最適な進め方をご提案します。 ▶ 15分で相談する(無料)
まとめ:どこから手をつけるべきか
属人化の解消は、マニュアル化→多能工化→システム化の順で進めるのが基本です。
ただし、すべてを同時に進める必要はありません。まずは「最もリスクが高い属人化」から着手しましょう。
優先度の判断基準
その人が休んだとき、業務が止まるか?
その業務でミスが起きたとき、影響は大きいか?
その人が退職する可能性はあるか?
これらに該当する業務から、マニュアル化と多能工化を進めてください。
属人化解消にお悩みの方へ
「どこから手をつければいいか分からない」「マニュアル化を進める時間がない」——そんなお悩みがあれば、現クラにご相談ください。
180社以上の物流現場を支援してきた現クラでは、スキルマップの作成から人員配置の最適化まで、属人化解消を仕組みで支援しています。
この記事についてもっと詳しく知りたい方へ
GXOでは、現場課題に関する詳しい資料を無料で提供しています。導入事例や成功事例、具体的な導入手順を詳しく解説しています。




