結論から言います。SEOツールを入れても受注が増えないのは「ツール」ではなく「設計」の空白が原因です。
SEOツールを入れても受注が増えないとき、ツール選定"だけ"では埋まらない「調査→判断→実行」をつなぐための設計物(施策台帳・優先順位マップ・検証の型)が未整備なことが、詰まり所になっている場合があります。
3行まとめ
ツールは観測(順位・ボリューム)に強いが、判断と実行は組織側の設計に依存しやすい
検索ボリュームだけで優先順位を決めると、意思決定が長期化しやすい
まず整えるべきは「施策台帳」「優先順位マップ」「検証の型」の3点
順位やボリュームは見えても、次の3つが揃わないと、データは"眺めるだけ"になりやすい傾向があります。
事業に効く指標の定義(受注までの中間成果が何か)
工数と期待効果にもとづく優先順位(なぜこの順番なのか)
検証して学びを残す運用(次に活かせる型があるか)
この記事では、判断が止まる構造と、受注につなげるための最小成果物(棚卸しシート/優先順位マップ/検証の型)を整理します。
最初の一歩は、上位10〜20施策(目安)を同じフォーマット(狙い/工数/期限/期待効果/検証)で並べ、3軸スコアで上位3〜5件(目安)に絞ることです。
※30分(目安:論点整理まで)でできるのは「詰まり所の論点整理(仮説)」までで、台帳化・採点は状況により追加時間が必要です。
用語の定義
本稿の"コンバージョン"は、資料請求・問い合わせ・商談化など、受注に向かう中間成果を指します(成約=受注とは区別)。
【根拠】観測データと意思決定の間に"溝"ができる理由
ツールが出すのは観測データ、止まるのは意思決定
SEOツールは、検索順位の推移、キーワードの検索ボリューム、競合サイトの状況といった「観測データ」を提供します。これ自体は有用ですが、「観測」と「施策実行」の間には溝がある場合が想定されます。
※ツールにより提案機能やアラート機能は異なります。本稿は"運用設計"の論点に絞ります。
たとえば、あるキーワードで順位が下がったことがわかっても、次のような問いには組織として答える必要があります。
そのキーワードは本当に注力すべきか?(事業との適合)
改善にはどれくらいの工数がかかるか?(実行コスト)
他の施策と比べて優先度は高いか?(比較判断)
「データはあるのに決められない」状態の典型サイン
以下のような状態が続いていたら、観測と判断の接続が切れている可能性があります。
サイン | 想定される原因 |
|---|---|
毎月のレポートは見ているが、そこから何をするか決まらない | 判断基準が言語化されていない |
会議で「とりあえずこれやりましょう」と空気で決まる | 優先順位の軸が共有されていない |
施策の成果検証が「やりっぱなし」になっている | 検証の型がない |
担当者が変わると、方針がリセットされる | 引き継げる情報がない |
この章の要点:判断が止まる原因は、情報不足より「判断の型」不足である場合があります。
観測データを「優先順位」に変換するルールが必要
工数・期待効果・事業適合が揃わないと決めにくい
検証の型がないと学びが蓄積されない
【構造】判断が止まる3つの詰まり所
ボリューム偏重で優先順位が揺れる
「検索ボリュームが多いキーワードから対策しよう」という方針は、一見合理的に見えます。しかし、実際の現場では次のような問題が起きやすい傾向があります。
ボリュームが多いキーワードは競合も強く、成果が出るまで時間がかかりやすい(※競合強度やドメインの状況により異なります)
自社サービスとの関連性が薄いキーワードに工数を割いてしまう場合がある
短期で成果が出そうな施策が後回しになりやすい
属人化は「人」ではなく「型」の問題
「この人がいないと回らない」状態は、能力の問題だけでは説明しきれず、引き継げる"型"がないことが一因になっている場合があります。
詰まるポイント | 状況 | 結果 |
|---|---|---|
判断の暗黙知化 | 「なぜこのキーワードを選んだか」が説明できない | 担当者が変わると方針が引き継げない |
進捗の分散 | スプレッドシートや個人メモで管理 | 全体像が見えず、重複や抜け漏れが発生しやすい |
振り返り不足 | やりっぱなしで効果検証をしない | 成功パターンが蓄積されない |
データの結合点で詰まりやすい
SEOのデータ(流入、順位、ページ別PV)と、商談のデータ(問い合わせ、商談化、受注)がつながっていないと、「この施策は受注に効いたのか」が判断しにくくなります。
つながらない原因は、システムの問題(GA4とCRMの連携)だけでなく、ID設計や指標定義の問題であることも想定されます。
参考:DX白書の示唆(協働の有効性)
IPA「DX白書2023 エグゼクティブサマリー」(2023年3月16日発行)では、予算・人材・ノウハウの確保など自社単独で解決が難しい課題に対して、外部の企業・団体との協働が有効な手段になり得る旨が述べられています(p.7、出典:IPA「DX白書2023 エグゼクティブサマリー」)。
※上記は出典の要旨です。SEO運用への当てはめは本稿の整理であり、当てはまり方は個社状況により異なります。
この章の要点:判断が止まる原因は「ボリューム偏重」「属人化(型の不在)」「データ結合点の不備」の3つに集約されやすい傾向があります。
いずれも"仕組み"の課題であり、担当者の努力だけでは解きにくい場合がある
引き継ぎで消える情報は「施策」ではなく「判断理由」であることが多い
GA4→CRM/MAの接続で、ID/定義/紐付けの"どこがズレていそうか"を洗い出すと、次の打ち手が決まりやすくなります
【対策】調査→判断→実行をつなぐ最小成果物3点
観測だけの状態 vs 運用設計がある状態
ここでいう「運用設計」は特定のツール名ではなく、意思決定に必要な情報(目的・優先度・工数・担当・期限・検証)を、チームで同じ形で扱える"業務×データ×管理の型"を指します。
観点 | 観測だけの状態 | 運用設計がある状態 |
|---|---|---|
見えるもの | 順位、ボリューム、競合状況 | +優先度、工数、担当、期限、期待効果 |
優先順位 | 毎回議論、または空気で決まりやすい | 基準に基づいて整理されている |
進捗管理 | 個人のメモやシートに分散しやすい | 一元化されている |
引き継ぎ | 担当者の頭の中に依存しやすい | 型として残っている |
検証 | やりっぱなしになりやすい | 振り返りと学びが蓄積される |
※仕組みは作っただけでは回りません。責任者・会議体・更新ルールが必要です。
成果物① 施策台帳(10〜20件から)
現在進行中・検討中の施策を一覧化します。
項目 | 内容 |
|---|---|
施策名/対象KW | 何をやるか |
狙い(意図) | なぜこの施策か、受注との距離 |
工数見積り | どれくらいかかるか(仮置きでもOK) |
担当/期限 | 誰がいつまでに |
期待効果 | 何がどう変わるか |
現在のステータス | 未着手/進行中/完了/保留 |
まずは上位10〜20施策からで構いません。重要なのは数ではなく、同じフォーマットで"判断に必要な情報"を揃えることです。
成果物② 優先順位マップ(スコアリング)
施策ごとに、以下の3軸で点数化(例:各5点満点)し、合計点で並べ替えます。
軸 | 問い |
|---|---|
期待効果 | 受注にどれだけ近い成果が見込めるか |
実現容易性 | 工数、難易度、リソース |
事業適合 | 自社の強み、戦略との整合 |
(採点の目安例)
期待効果:5=商談/問い合わせに直結、3=検討層の獲得、1=認知寄り
実現容易性:5=1〜2日で対応、3=1〜2週、1=1か月以上/他部署調整が多い
事業適合:5=主力商材・強みと直結、3=関連、1=周辺テーマ
(同点時ルール)
同点なら「実現容易性が高い施策」→「検証しやすい施策」を優先。
まずは上位3〜5件に絞って着手できる状態を目指します(体制・工数により調整)。
※業種・商材・営業プロセスにより最適解は変わります。
成果物③ 検証の型
項目 | 内容 |
|---|---|
KPI定義 | 何をもって成功/失敗とするか(例:流入数、CVR、商談化率) |
レビュー頻度 | 例:週次/月次、誰が確認するか |
学びの残し方 | うまくいった/いかなかった理由をどこに記録するか |
会議体・更新ルール
運用設計を作っても、「誰が」「いつ」「何を見て」「どう判断するか」が決まっていないと形骸化しやすくなります。最低限、以下の3点を決めておくと回りやすくなります。
責任者:施策の優先順位を最終決定する人
会議体:例:週次/月次で進捗と成果をレビューする場
更新ルール:台帳やマップをいつ誰が更新するか
この章の要点:最初に作るべきは記事ではなく、上位3〜5施策が決まる「台帳」「優先順位マップ」「検証の型」です。
台帳は10〜20件から始め、同じフォーマットで情報を揃える
スコアリングは「期待効果×実現容易性×事業適合」の3軸で
会議体・更新ルールがないと形骸化しやすい
【失敗パターン】形骸化する3つの理由
成果物を作っても、運用が続かないケースがあります。よくある失敗パターンを3つ整理します。
採点基準がない/曖昧
「期待効果5点って何?」が定義されていないと、結局"感覚"で点数をつけることになり、スコアリングの意味が薄れやすくなります。
対策:採点の目安例(前章参照)を"仮でもいい"ので言語化し、チームで共有する。
更新されない
台帳を作っても、誰も更新しなければ古い情報のまま放置されます。「作って終わり」が形骸化の典型パターンです。
対策:更新担当と頻度(例:週1で担当者が記入、月1で全体確認)を明文化する。
会議体がない/機能しない
台帳やマップがあっても、それを見て判断する"場"がないと、結局は会議の空気で決まりやすくなります。
対策:最低限、例:月1回の「優先順位レビュー会」を設定し、台帳を見ながら判断する習慣をつける。
この章の要点:形骸化の原因は「採点基準の不在」「更新されない」「会議体がない」の3つに集約されやすい傾向があります。
仕組みは"作る"より"回す"が難しい
更新担当・頻度・会議体を明文化することで継続しやすくなる
完璧を目指さず、まず"仮置き"で始めることが重要
【進め方】10→3〜5→1の絞り方
「どこから手をつければいいかわからない」という場合は、以下の3ステップで絞ると進めやすくなります。
ステップ1:10〜20施策を書き出す
まずは「いま動いている施策」「検討中の施策」を、細かく分類せずに書き出します。精度より"出すこと"が優先です。
ステップ2:3軸スコアで上位3〜5件に絞る
「期待効果×実現容易性×事業適合」で点数をつけ、合計点の上位3〜5件を"今月の注力施策"として選びます。
※全施策を完璧に採点する必要はありません。上位3〜5件が"なぜこの順番か"を説明できれば十分です。
ステップ3:今月は1件だけ"完了"を目指す
上位3〜5件のうち、最も実現容易性が高い1件を「今月中に完了させる」と決めます。1件でも"回せた"という実績が、次の施策への推進力になります。
この章の要点:進め方は「10〜20→3〜5→1」の3ステップで絞ると動きやすくなります。
まずは書き出す(精度より量)
スコアで絞る(上位3〜5件)
今月は1件だけ完了を目指す(小さく回す)
【チェックリスト】セルフ診断(12項目)
現状整理チェック(5項目)
上位10〜20施策を一覧化できている
各施策の「狙い(意図)」が説明できる
各施策の「工数見積り」が入っている(仮置きでもOK)
各施策の「担当/期限」が明確になっている
施策のステータス(未着手/進行中/完了/保留)が可視化されている
優先順位チェック(4項目)
優先順位の判断基準が言語化されている
「期待効果×実現容易性×事業適合」で点数化している
上位3〜5施策が「なぜこの順番か」を説明できる
検索ボリューム以外の軸を使っている
検証・引き継ぎチェック(3項目)
KPI定義(何をもって成功/失敗とするか)が決まっている
レビュー頻度と担当者が決まっている
学びの残し方(どこに記録するか)が決まっている
セルフ診断:「いま注力している上位3〜5施策は何か?」「なぜその順番なのか?」を1分で説明できますか?説明できない場合は、判断基準が言語化されていない可能性があります。
【FAQ】よくある質問
Q1. SEOツールのデータを、受注(商談)につなげるには何が足りない?
A. 「判断の型」が不足している場合が多いと考えられます。ツールが出す観測データ(順位、ボリューム)を、優先順位(何から着手するか)に変換する基準が言語化されていないと、データは眺めるだけで終わりやすくなります。まずは「期待効果×実現容易性×事業適合」の3軸で施策を並べ替えてみてください。
Q2. SEO施策の優先順位は、検索ボリューム以外に何で決めるべき?
A. 「意図(受注までの距離)」「勝ち筋(自社の強み)」「工数(実行コスト)」「再現性(横展開できるか)」を加えると、判断しやすくなる傾向があります。検索ボリュームは参考値にとどめ、自社の事業目標との整合で判断するのがポイントです。
Q3. SEO運用の属人化を解消する"最小の仕組み"は何?
A. 「施策台帳」を1枚作ることです。施策ごとの狙い・工数・担当・期限・期待効果・検証方法を同じフォーマットに揃えるだけで、引き継ぎと改善速度が上がりやすくなります。担当者が変わっても、台帳を見れば「何をなぜやっているか」がわかる状態を目指してください。
Q4. 社内だけで整理が難しい場合、どうすればいい?
A. 第三者に「現状の棚卸し」と「優先順位の型づくり」だけ依頼するのも有効です。詰まりやすいのは「指標定義が部署でズレる」「工数見積りができない」「データ連携が設計されていない」の3点です。何が未整理かを論点と仮説として洗い出すだけでも、次の一手が決まりやすくなります。
次の一歩(無料でできること)
データを見ているのに次の打ち手が決まらない——その状態は、困って当然です。 多くの場合、担当者の努力だけでは解きにくい「仕組み(判断の型)」の課題が絡みます。
無料の壁打ちで「どこが未整理か」を可視化し、次に着手すべき優先順位の叩き台を作ります。 持ち帰り用メモ(例:詰まり所×仮説×次の一手の3点整理)を共有します。
現状整理(30分):詰まりやすいポイントを論点と仮説として整理(持ち帰りメモ共有)
簡易レビュー:公開情報(サイト構造/主要導線)から論点を洗い出し
テンプレ提供:施策台帳・優先順位マップの雛形(自社入力は貴社にて)
参考資料
IPA(情報処理推進機構)「DX白書2023 エグゼクティブサマリー」(2023年3月16日発行) https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108048.pdf
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