「クラウド=DX」という誤解
クラウド移行がDXと混同される背景には、「目に見える変化」として報告しやすいこと、ベンダーのマーケティングがDXの概念を単純化したことがある。
Prosci社のDXトレンドレポートでは、クラウドネイティブ戦略を重要トレンドとして挙げつつ、移行には「リスキリング」「チーム間コラボレーション」「リーダーシップの整合」といった文化的シフトが不可欠だと指摘している。
クラウドという「箱」を用意しても、人がどう働き、どう意思決定するかが変わらなければDXにはならない。
移行だけで終わる失敗パターン
業務をそのまま載せ替える——最も多い失敗は、既存業務を見直さずクラウドに移行するケースだ。ある製造業では基幹システムをAWSに移行したが、承認フローは紙からメール添付に変わっただけ。クラウド利用料が発生しただけで生産性は変わらなかった。
現場が使わないツール——Prosci社は「従業員が理解し日常業務に取り入れなければ意味がない」と強調している。技術導入と人の行動変容は別の話である。
サイロ化が解消されない——各部門が別のクラウドサービスを使っていても、データが連携していなければ全社横断的な分析は不可能だ。クラウド移行は統合を「可能にする」だけで、実現するのは組織設計と業務再構築である。
再設計すべきは「業務」と「意思決定」
業務プロセスをデジタル前提で考える——既存業務をそのままデジタル化するのではなく、「そもそもこの業務は必要か」という視点で見直す。Prosci社が指摘する「ハイパーオートメーション」は、RPA・AI・機械学習を組み合わせて業務全体を最適化する方向性だ。
意思決定をデータドリブンに——Prosci社は「セルフサービス分析ツールでデータを民主化し、あらゆるレベルの従業員がデータに基づいた意思決定を行えるようにすることが重要」と述べている。
「人」を中心に据える——Prosci社は2025年以降のDXトレンドに「Human-centric transformation(人中心の変革)」を挙げ、従業員エンゲージメントを高める文化の醸成が不可欠だと指摘している。
成功企業の共通点
成功企業では、経営層がクラウド移行を「手段」として正しく位置づけ、「なぜ移行するのか」「どのようなビジネス価値を生むのか」に明確に答えられる。また、現場を「一緒に作る側」として参画させることで定着率を高めている。
Prosci社は「パイロットプログラムは、デジタル変革トレンドが自社環境でどう機能するかをテストする低リスクな方法」と指摘している。小さく始めて学びながら拡大するアプローチが有効だ。
小さく始める整理の重要性
クラウド移行の前に行うべきは、現状の業務とシステムの棚卸しだ。どの業務がどのシステムで行われているか、データはどこに存在するか。これらを可視化せずに移行を進めると、既存の非効率をそのまま持ち込むことになる。
クラウド移行の成否は、技術選定の前に決まる。「どの業務プロセスを変革するのか」——この問いに答えを出してから、クラウド環境を設計する。この順序を守ることで、クラウド移行は初めてDXの実現手段として機能する。
自社だけで現状を客観的に評価するのは難しい。外部の視点を活用し、「この業務は本当に必要か」といった問いを立てることが、真の変革への第一歩となる。
まとめ
クラウド移行は、DXの必要条件ではあっても十分条件ではない。システムの「場所」を変えるだけでなく、業務プロセスと意思決定を変え、組織文化を変革することが真のDXだ。まず現状整理から始め、何を変えるべきかを明確にしてほしい。
参考資料
Prosci "Digital Transformation Trends in 2025 and Beyond" https://www.prosci.com/blog/digital-transformation-trends-in-2025-and-beyond
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